人は火の性質を理解し、使いこなすことで文明を進化させてきました。しかし、人が火の正体を真に理解するのは19世紀になってからです。つまり、最近まで人は火についてよく理解しないまま使ってきたということになります。
では、今日の人々が火の性質についてよく理解できているのかというと、実際にはそうでもないのではないでしょうか?
特にメラメラと赤く燃える炎が何で出来ているのかなんて考えた事も無かった人もいるでしょう。本記事では、そんな炎の正体について迫っていきたいと思います。
火と炎、燃やすと生まれる現象
火や炎と言うのは普段から使っている単語ですが、それが厳密に言って何を指しているのかは意外に難しかったりします。
例えば、火は「ろうそくや木が燃えた時に発生する現象」を指すこともあれば、「物を燃やした時に出る赤く光るモヤモヤとした物体」を指すこともあります。比較的広い範囲の意味を持つ「火」に対して、火の一部として炎は「火の中の勢い良く赤く光るモヤモヤしたモノ」辺りを指します。
かなりアバウトな表現にしましたので、却って分かりにくい人もいるかもしれません。要は、火は光を伴う急激な燃焼反応全般を指す広い言葉で、炎はその中でも強い光を伴う現象部分を指すという理解で良いでしょう。
しかし、この時に疑問になるのが、「火や炎と言うのは物質として存在するのか?」と言う疑問です。物体なのか、現象なのか、火や炎とは何なのか?
普通に考えてみると、炎と言うのは虹や霧のような現象のように思われます。炎に触れる事はできませんし、炎を切り取って保管しておく事もできません。すると、炎と言うのは実体のない何かだと感じるでしょう。
確かに火や炎には現象という側面があるのですが、虹や霧が水蒸気に当たる光の加減で生まれる現象であり、そこにあるのが水分子である以上、炎にもなにか物質的な側面があるのではないかと考えたくなります。
そこで、「現象としての炎」と「物質としての炎」の二つの側面から、炎の正体に迫っていきます。
現象としての炎と物質としての炎
現象と側面から炎を見てみると、炎というのは化学反応の副産物だということが出来るでしょう。
化学反応と言うのはこの場合「燃焼反応」のことを指しますが、燃焼反応では「光」と「熱」が発生します。現象という側面から見てみると、この光と熱が炎の正体です。
つまり、燃焼反応の過程を考えながら見てみると、可燃物に「強い熱」が与えられ、可燃物が酸素と結びついて化学反応が起こり、その際に熱とともに赤や黄色の光を放つ。この赤や黄色の光が炎であり、炎と言うのは実際に存在する何かではないということが出来る様に思えます。
しかし、その化学反応で生まれる熱や光だけでは、あの独特にゆらゆらと光を放つ炎の説明は出来ません。
ここで、火が生まれる燃焼反応の過程を簡単におさらいしてみると、<「熱」→「燃料+酸素」→「燃焼反応」→「熱」→「燃料+酸素」→「燃焼反応」→(連鎖反応が続く)>という連続的な反応でひたすら熱を生み出しているのに気づきます。
実はこの「熱」がキーワードです。
強い熱が加わった物質に起こる現象は果たして本当に「燃焼反応」だけでしょうか?
実は他にも、燃料を気化させる現象や固形燃料を細かく分解する現象も同時に起こしているのです。
水に火をかければ燃えますし、ガソリンをゆっくりと(火を使わずに)温めれば気化します。さらに、紙や木に火を付けて燃やすと最終的にはバラバラになってしまいます。強い熱は固形物の組成を化学反応で変化させ、バラバラにしてしまうのです。
こうして気化した燃料やバラバラになった固形燃料は微粒子となって空気中に放出されます。そして、熱を持った気体は重力下では上昇していく性質があるため、これらは勢い良く上昇していきます。
そして、これら酸素が豊富な空気中を上昇する微粒子は、当然のように「燃焼しながら」上昇していきます。
これが炎の正体です。
炎が総じて上に向かって伸びていくのは、この正体が気化した燃料や熱を得た微粒子が熱で上昇ながら燃えていたからで、燃焼反応が上手いことあの炎の形になっているわけではありません。
炎と言うのは確かに現象である一方で、「燃えている微粒子」ということも出来るかもしれませんね。