日本人の死亡原因で最も多いものががんです。実に、日本人の4人に1人はがんが原因で亡くなります。しかし、一言でがんと言っても部位毎に種類が沢山あり、それぞれ治療法が異なります。有効な治療法があるものもあれば、有効な治療法が無いものもあるのです。
例えば、「がんは早期発見すれば簡単に治療できる」と言っても、それはがんの種類によりますし、「末期がんでは助からない」と思われてますが、それもがんの種類によります。この記事では、「早期発見でも危険ながん」と「末期がんでも治療できるがん」についてご説明します。
がんの部位別生存率
(がんの部位別5年相対生存率_全国がんセンター協議会)
※赤・橙色は早期(ステージ1)でも生存率が低めのがん。
※青・水色は末期(ステージ4)でも生存率が高めのがん。
上の図はがんの部位別5年相対生存率です。「相対生存率」というのはがんによる死亡だけを考慮した死亡率のことで、がんと無関係な老衰や事故による死亡などは含まれていません。また、「5年生存率」というのはがんが発見されてから5年後に生きているかどうかを意味しています。
参考にしたデータは全国がんセンター協議会から提供されている「全がん協部位別臨床病期別5年相対生存率」及び、がん研究振興財団の「がんの統計‘15」です。
統計によると、がん全体の5年生存率は早期発見時でおよそ9割、末期の場合は2割となっているため、この数値より大きく離れたがんをピックアップしました。
早期発見時でも危険ながんは「膵臓がん」「肝臓がん」「胆嚢胆管がん」「小細胞肺がん」で、末期でも生存率が高めながんは「甲状腺がん」「前立腺がん」「喉頭がん」となっています。
詳しくは後述しますが、基本的に早期発見でも危険ながんは末期だとさらに死亡リスクが高まります。また、末期の5年生存率が高くても「進行が遅いだけで治療できない」ことも多く、必ず治療できるという意味ではありません。
それでは、中でも特徴的な「膵臓がん」「肝臓がん」「甲状腺がん」「前立腺がん」について見ていきます。
あらゆるステージで危険な「膵臓がん」
「膵臓がん」はがんの王様とも呼ばれる非常に恐ろしいがんです。早期発見でも5年生存率が40%程度で、末期だと1.6%となっています。さらに、症例数を見るとその大半が末期のステージ4となっており、「早期発見が極めて難しい」上に「発見されても末期で助からない」という極めて凶悪ながんです。
膵臓は体の奥深くに位置するため、検査機器で状況を確かめにくく、目立った初期症状もありません。小さな臓器なので手術で摘出するのも難しく、抗がん剤でも効果のあるものも見つかっていません。手術もできない状態であることが多いですが、手術ができた(ステージ1-3)としても5年生存率は20%程度です。
がんが進行すると消化液である膵液の分泌に影響が出て食事が難しくなり、血糖値をコントロールするホルモンが分泌されなくなることで血糖値も変動します。治療法がない上に症状も辛く、苦しみを和らげるための治療しかできません。
スティーブ・ジョブズの死因としても知られているがんで、米国の最新医療を駆使しても治療は難しく、膵臓移植をする他ありませんでした。移植に成功しても非常に転移しやすいがんなので予断を許しません。
早期発見が可能でも再発の多い「肝臓がん」
肝臓がんは症状こそ出ないものの、がん検診によって比較的早期に発見が可能ながんです。しかし、問題は再発率が極めて高い点にあります。手術してもすぐに再発することが多く、治療が遅れればすぐに進行します。再発率が高いことから、手術以外の治療法を選択するケースも多いです。早期発見時の5年生存率は57%で、末期だと4%です。がん全体の平均生存率と比較してもかなり低い数値であることが分かるでしょう。
また、肝臓がんの原因として「肝炎」や「肝硬変」が挙げられており、肝臓がんの治療と同時にこれらの治療も重要になって来るでしょう。ただ、膵臓がんとは違い、早期発見が可能で原因も分かっているため、比較的対策の立てやすいがんと言えます。再発していないか定期的にチェックし、医師の指示に従うことで治療できる見込みのあるがんです。
手術で治る「甲状腺がん」と「前立腺がん」
「甲状腺がん」は喉の付近にある甲状腺と呼ばれるがんで、女性に多いがんです。一方の「前立腺がん」は膀胱の下で精液を作る臓器にできるがんで男性にしか発生しません。5年平均生存率は早期発見時ではどちらも100%で、末期でも甲状腺がんなら71%、前立腺がんなら62%となっています。膵臓がんや肝臓がんの早期発見時よりも、甲状腺がんや前立腺がんの末期の方が生存率は高いというのは驚きです。
どちらもがんも比較的早期に発見することができ、手術による治療が有効です。末期でも全摘出が行えるため、末期がんだからといって絶望する必要は無いでしょう。しかし、転移の危険性があるため放って置いても良いというわけではありません。医師の指示に従い、適切な治療を受けることが大切です。
まとめ
このようにがんの種類ごとに生存率を比較すると、同じがんでも危険性が全く異なることが分かります。がんが発見され、「早期発見だから大丈夫」「末期だからもう死ぬ」ということは全くなく、全てはがんの部位によりけりです。
また、今回ご紹介したがんの他にも、末期の生存率が20%前後あるものは少なくありません。20%というのは高い数字ではないものの、絶望するには早い数字です。膵臓がんの末期と言われたらさすがに覚悟を決めたくなりますが、甲状腺がんの末期なら希望はあります。医師と相談して最適な治療法を模索しましょう。
参考サイト
http://ganjoho.jp/public/index.html
http://www.gunma-cc.jp/sarukihan/seizonritu/seizonritu2007.html