先日、暖房機器の仕組みについてご紹介させて頂きましたが、冬の暖房機器とセットになりやすいのが加湿器。
外に出ると唇がひび割れ、部屋で暖房をつければ喉がガラガラする。
これは全て、肌や喉の水分が不足して起こる現象です。それを予防するには、肌や空気の水分量を増やして保持する必要があります。そこで登場するのがクリームや加湿機。クリームは揮発しにくい油分で肌を覆うことによって肌の水分を保持しますが、加湿機はどうなっているのでしょう?
一口に加湿機と言っても千差万別。冬に苦しむ乾燥の仕組みや加湿機の仕組みと合わせて、ご説明していきます。
※本記事では、主に乾燥の仕組みについての解説が中心になるので、加湿機について詳しく知りたい方は、後編をお読み下さい。
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乾燥と湿度と水分量の関係、温度で変わる湿度
冬は乾燥しやすいですね。そんな季節に、空気を暖める暖房機器を使うと当然の様に乾燥します。一件同じに見える二つの乾燥。しかし、実はこの二つは似ているようで少し別の理由で乾燥しています。
というのも、人が乾燥していると感じる過程が違うからなのです。
それを理解するには、まず乾燥の原理について理解しなければいけません。
まず、一般的に乾燥といえば、空気が乾燥していることを言いますが・・・では、何を持って空気が乾燥しているというのでしょう?
多くの場合、乾燥や湿気のバロメータには湿度が用いられています。湿度というのは、「空気中に含まれる水分量の割合」を表していますが、これは温度によっては変化します。
温度が高ければ空気は沢山の水分を保持できますが、一方で温度が低ければ空気は少量の水分しか含むことが出来ません。
具体的にいうと、温度と湿度の関係はこのようになっています。
(例1) 温度10℃ 湿度50% 水分量4.7g/m3
(例2) 温度20℃ 湿度50% 水分量8.7g /m3
(例3) 温度30℃ 湿度50% 水分量15.2g /m3
同じ湿度50%でも、温度が10℃違うだけで、空気中に含まれる水分量が大きく異なり、殆ど倍近い差がついています。
(例4) 温度10℃ 湿度50% 水分量4.7g/m3
(例5) 温度20℃ 湿度40% 水分量6.9g /m3
(例6) 温度30℃ 湿度30% 水分量9.1g /m3
当然、湿度が低くても温度が高ければ、含まれる水分量にはこのような差がでます。
つまり、「温度」が低い時、「湿度」が高いから水分が多いと言う意味にはなりません。
では、湿度を乾燥のバロメーターにするのが間違いかと言うとそうではありません。湿度が低いという事は、まだ空気中に水分が溶けこむ余裕があるということであり、水分が空気中に逃げやすくなっているので、その状態は乾燥しやすいと言うことが出来ます。
「乾燥する」とは?エアコンを付けると乾燥するワケ
次に、人が乾燥していると感じるのはどんな場面なのかを考えてみます。
人が乾燥していると感じるのは、肌や喉などの水分が失われた時。
では、いつ水分が失われるのでしょうか?
肌や喉の水分と言うのは肌や喉(粘膜)が蓄えている水分子の集まりですが、これらの水分子は常に動き回っており、時折勢いがつきすぎて空気中へ飛び出していきます。これを揮発(気化)と呼びますが、「この勢いがつく」という状態とは水分子が熱(エネルギー)を持っている時です。そして、肌や喉の水分と言うのは体温から常に一定の熱を与えられていますので、夏でも冬でも常に肌や喉の水分はガンガン大気中に飛び出そうとします。
そんな時に水分の飛び出し易さ(逃げ易さ)に影響するのが湿度で、湿度が低いと空気はまだまだ水分を含めるということになり、水分の逃げ場が沢山あるということになります。そのため、湿度が低いと肌や喉の水分が失われ、乾燥していると感じます。
先ほどの温度と湿度の関係の例を、今度は水分量だけを揃えて挙げてみます。
(例7) 温度10℃ 湿度50% 水分量4.7g/m3
(例8) 温度20℃ 湿度27% 水分量4.7g /m3
(例9) 温度30℃ 湿度15.5% 水分量4.7g /m3
驚くべきことに、10℃で湿度50%の部屋を20℃に温めると湿度が27%にまで下がる事がわかります。つまり、エアコンで暖房をつけると急激に湿度が下がり、空気に水が溶けやすくなり、水分が喉や肌から一気に水分が揮発し、肌や喉が乾燥してしまうのです。
人は体重の6割が水分というほどの水分の塊であり、部屋に水分が少なくなれば、これでもかと人から水分を奪っていこうとするのですね。
余談ですが、石油を燃やすと水分は発生します。そのため、石油ファンヒーターや石油ストーブは若干の加湿効果が存在しています。しかし、加湿効果より温度の上昇の方が早いため乾燥していると感じるようになるのです。とはいえ、エアコンよりはマシですね。
さて、部屋で暖房を付けると乾燥するのは分かりましたが、大きな気温の変化のない冬の外気で何故人は乾燥していると感じるのでしょうか?
冬の外気、適度な湿度でも乾燥するワケ
冬の外気の湿度は50-70%程度で、湿度だけ見ると快適です。
しかも、冬の洗濯物は乾きにくいと言われるように、本当に乾燥しているのか怪しい気がすることもあります。
この外気の湿度は、雨などで上がる事はあっても大きく下がる事はありません。最も乾燥するのは日の当たる昼間ですが、おそらくそれに関係なく乾燥していると感じるはずです。
実は、冬の外気で乾燥する最大の原因は体温です。
「体温によって外気が温められて、体の周りだけ湿度が下がる?」
そう。エアコンで乾燥する原理と同じですが、大きな要因になっています。特に、口内の粘膜付近の温度は外気に触れる肌に比べて保たれやすいため、呼吸の度に水分が空気中に逃げていきます。
息を吐くと白い水蒸気が見えるのは、息の中の水分が暖かい息の空気に溶け込もうと一気に広がったものの、外の冷たい空気が保持できる水分量が少なくてすぐに満杯になってしまい、溶け込めなかった水分が空気中で固まり、光を反射するから白く見えるのです。
さらに、肌の乾燥させるのが人が体温を保とうとするあまり発汗を抑制するからです。
先ほどご説明した通り、肌の水分は常にある程度は揮発してしまう環境にあります。しかし、人は常に体の中で熱を作っていて、その熱を逃がすために常に多かれ少なかれ発汗しています。そのため、夏はもちろん春や冬、寝ている時に布団の中の手足が乾燥する事はありません。
ところが、冬は逆に体の中の熱がこれでもかと外に逃げていってしまいます。熱を逃がすまいと発汗を抑制しているのに、体温で温められた空気が乾燥し、普段より多く水分が肌からどんどん揮発していきます。
冬の外気は体温で、室内の空気は暖房で温められる事によって空気が乾燥し、体が水分を失いやすくなっています。それに加えて、汗も掻きにくくなるため、乾燥しやすくなるのですね。
加湿機の仕組みと題しながら、殆ど乾燥の話になってしまいましたが、加湿機の仕組みについては次の記事でご説明します。