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有機物の炎の成分:炭素と水素が生み出す強い熱と鮮やかな光 -火のしくみ(2)

炎と言うのは光と熱が見せる現象と言うだけではなく、その光と熱を生み出す微粒子によって生まれているということは前回の記事でご説明しました。

しかし、その微粒子とは具体的に何を示しているのでしょうか? 
また、光と熱と言うのは一体何を意味しているのでしょう?

私達が普段目にしている炎を、「微粒子」「熱」「光」「生成物」の観点から細かく考えてみます。

炎の成分は燃料によって大きく異なる

「炎の成分」と言う表現に違和感を覚える方もいるかもしれません。炎は気化した燃料が燃焼する事で目に見える現象であり、手に触れて分解できる物ではないからです。

しかし、炎と一言に言っても、それは燃える燃料によって全く異なった現象です。
ロウソクの炎、炭火の炎、木片の炎、ガソリンの炎、金属の炎・・・などなど、数えだしたらキリが無いでしょう。

見た目からして全く違った燃え方をする燃料もあれば、見た目は同じなのに全く違う燃え方をする燃料もあります。その逆も然りで、大元の材料は殆ど同じなのに見た目が違う燃え方をするものもあるのです。

知れば知るほど炎と言うのは不思議な現象ですが、これらは全て燃えている燃料の違いから生まれています。さらに細かく見ていくと、熱を得た燃料から生まれた微粒子の動き、燃焼反応の際に生まれる熱や光、そして生成物に違いがあります。

そこで、炎の成分をこの4つの側面から見ていくことにします。

また、燃料となる物質が無機物か有機物かでその形が大きく異なりますので、本記事ではまず有機物の炎からご説明しましょう。

※ここで言っている有機物の燃料と言うのは、「バイオ燃料」や「有機燃料」とは別物です。

有機物の燃料ではどんな微粒子が燃えているのか?

有機物とは炭素を含む物質のことで、炭素に水素や酸素が加わると石油の主成分である炭化水素(CnHn)、さらに酸素が加わると木材の主成分となる炭水化物(CnH2nOn)と呼ばれるようになります。

燃料に使われている素材は、ロウソクなら「パラフィン」、ガスなら「メタン」、木片なら「セルロース」、ガソリンなら「炭化水素」、金属なら「金属元素」と多岐に渡っています。

しかし実際に燃焼している元素は、金属元素を除くと大半が「炭素」と「水素」の化合物です。パラフィンもセルロースもメタンも炭化水素も、全て炭素と水素の化合物であり、全て植物や生き物などの起源が似たような有機物から由来する燃料なのです。

おさらいになりますが、燃料に火をつけると、見た目は燃料がいきなり燃えている様に見えますが、実はそう単純ではありません。燃焼反応(酸化反応)が起こる直前に燃料が気化したり、熱を得た燃料が熱で別の化合物に変化して微粒子状になって舞い上がったり、様々な現象が起こります。

その結果として、拡散した微粒子(気体含む)が、空中で酸化反応が起こるだけの熱エネルギーを得て燃焼するのです。すると不思議な事に、燃料というのは燃料があった一点でズブズブと燃えるのではなく、まるで湯気や風に揺れる草木のようにゆらゆらと揺れる炎を生み出します

この際に燃焼する微粒子が燃料によって異なるわけですが、酸化反応は1つの化合物あたり1回などではなく、燃料の化合物によって何度も何度も反応を繰り返します。有機物が持つエネルギーは膨大で、野菜を一口大に切るためには何度も何度も半分に切らなければいけないように、これ以上燃えなくなるまで燃やすには何度も何度も繰り返し化学反応を起こす必要があるのです。

また、天然ガスの主成分である炭化水素のメタンなどは炭化と水素で作られる燃料で最も単純な物質ですが、ろうそくやガソリンなどにも含まれており、殆どあらゆる有機化合物の燃料の燃焼時に「一瞬だけ」生まれて燃えています。

こうして有機化合物の燃料で燃焼反応が進んでいくと、最終的には単体の炭素や水素が酸素と結びつく反応に行き着くのです。多くの有機物の燃焼反応で「二酸化炭素」と「水」が最終的に作られるのはそのためでしょう。

色々複雑な反応が起こっている用に思えますが、実はこれでも(専門家に怒られるほど)単純化しています。
燃料毎に燃焼サイクルは微妙に異なり、その全てが解明されているわけではありません。炎の成分を完全に理解すると言うのは科学者ですら困難です。

(次ページ:有機物の炎が持つ熱と光の正体)

有機物の炎が持つ熱と光の働き

燃焼と言うのは酸化反応ですが、酸化反応では熱や光の形で大量のエネルギーを作ります。

熱は分子の運動量であり、分子が直接別の分子にぶつからなければ(熱伝導)伝わりませんが、熱で一度に伝わるエネルギーは膨大です。一方、光は電磁波として伝搬するので一瞬にして周囲に伝わりますが、光で一度に伝わるエネルギーは少量です。

とは言え、光はモノにぶつかると熱に変わりますし、モノに熱が貯まると光を発するのでそこまで大きな違いではないかもしれません。しかし、この二つの違いが炎の性質を大きく左右することになります。

燃焼反応が一気に「熱」に変わった場合、熱が素早く隣の物質に伝わっていくので燃焼反応も急激で周囲の気体も一気に膨張し、温度も高く、一種の爆発に変わっていきます。逆に「光」に変わった場合、広く穏やかに熱が伝わっていき、燃焼もゆっくりで目に見えるような炎となります。

有機物の燃焼反応は主に、「炭素系」の燃焼と「水素系」の燃焼に分けられますが、水素系は熱が多くて光が少ない炭素系は熱が少なくて光が多いと言う特徴があります。これがバラバラに起こることは稀ですが、木炭のように水素系化合物を意図的に減らした燃料を使うと穏やかに周囲を過熱する燃料が出来上がります。

木炭は暖房器具の燃料にも調理器具の燃料にも使われますが、熱は急激に伝わると意図しない形で失われてしまう事が多く、光を中心に穏やかに熱を伝える木炭の様な燃料は非常に効率的に熱を別のモノに伝えます。熱よりも光を発する燃料の方が、熱を効率よく別のモノに伝えると言うのは皮肉な話ですね。

関連記事:輻射熱とは?光(電磁波)で伝わる見えない熱とエネルギー

そして、水素の燃焼では光が殆ど出ない(無色)の炎を作るのに対して、炭素系の燃焼で発する光は低温では所謂「オレンジ」系の色であり、炎の色と言うのは炭素の燃焼で生まれている光だといえるのです。

ちなみに、木炭があまり光らないのは燃焼自体が極めてゆっくりと進んでいるからで、空気を送って燃焼を進めればそれに合わせてオレンジの光を発します。また、ガスのような水素を多く含む高エネルギーの燃料では、水素の燃焼による熱を貰った炭素がオレンジではなくエネルギー量の多い青い光を出すようになるので温度によって色が変わるのですね。

有機物の炎が炭素の光であり、水素や炭素の配分次第でその熱や光の性質が大きく異なってくると言うのは注目に値します。

有機物の炎が生み出す物質

前述の通りではありますが、炭素と水素を中心に燃焼が行われる有機物の燃料は、主に「二酸化炭素」や「水」を燃焼の際に生成します。しかし、考えるべきはそれ以外に作られる物質です。

二酸化炭素(CO2)は炭素に酸素が二つ結びついた物質ですが、火の熱量変化や他の混合物などによっては、完全な燃料が行われず(不完全燃焼)、一酸化炭素(CO)などが作られる事があります。

また、ガソリンのような不純物が多い混合燃料などではその傾向が強く、生成物ではありませんが炎で燃えきらなかった炭化水素がそのまま出てきてしまったり、燃焼環境によっては窒素まで混ざって燃えるので窒素酸化物などが生み出される事があります。場合によっては、燃料の中に硫黄が混じっており、硫黄酸化物などが炎から生成されることになります。

硫黄や窒素の酸化物は有機物の燃焼によって生み出されるものではありませんが、有機物の燃料にはそれ以外にも多くの物質が混ざっている事が多く、石油系燃料の燃焼に注意が必要です。

まとめ

有機物の炎と言うのは炭素が作り出す炎の色であり、低温ではオレンジ、高温では青い光です。水素の含有量によって生み出す熱量が変わり、素早く熱したい時と穏やかに効率よく温めたい時で別々の性質をもった燃料を使います。

ロウソク、ガス、石油、木炭。これらの燃料は全て有機物の燃料であり、人が扱う炎の中では最も扱いやすく身近な炎と言えますね。

 

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