トミー・ジョン手術(側副靱帯再建手術)とは? 骨に穴を開けて靭帯を通す、驚きの内容

トミー・ジョン手術というのをご存知でしょうか?

最近では、藤川球児投手や松坂大輔投手が施術を受けて有名になりました。一時期は田中将大投手も手術を受けるのではないかと噂されたが、PRP療法という自己治癒力を強化する療法によっては回復したようです。

手術後、球速が早くなると言われており、既にアメリカではかなり頻繁に行われるようになりました。ダルビッシュ投手曰く、「虫歯治すみたいな感じ」と言うほど軽い感覚で行われるようになっていますが、手術自体は虫歯を治すほど簡単なものではありません。

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選手生命の終わりと言われた肘の故障

トミー・ジョン手術と言うのは側副靱帯再建手術のことですが、既にトミー・ジョン手術と言う名前が一般的になっています。名前の由来はトミー・ジョンというMLBの投手が肘の靭帯を断裂し、選手生命どころか日常生活も危ういとして、その際に考案された手術だったからなのですが、話はこれで終わりません。

手術は無事に成功し、選手としても復帰。さらに驚くべきは、術後に術前以上の好成績を残し、球界に残る名投手になった事がこの手術がトミー・ジョン手術と呼ばれる所以でしょう。ある意味、この手術が今日MLBで知られるトミー・ジョンを作ったと言っても過言ではありません。

靭帯というのは、骨と骨を結ぶ紐状の組織のことで、靭帯がなければ腕の骨が正常に繋がりません。複数ある靭帯の内の一つが断裂したからと言って腕がポロッとなることはないのですが、骨と骨の距離が上手く調節できなくなり、筋肉の力がスムーズに伝わらなくなります。選手としては致命的ですし、腕が思うように動かなくなるので、日常生活にも問題が出ることもあります。

からくり人形の関節を繋ぐ紐が一本切れると言うイメージかもしれませんね。

野球選手の場合、肘を高速で動かすため肘の靭帯がボロボロになりやすいのです。昔は治療法が無く、肘に違和感が出た状態をガラスの肘とも読んでいました。ところが、トミー・ジョン手術のお陰で状況は一変します。

トミー・ジョン手術の方法

トミー・ジョン手術と言うのは、ボロボロに成った肘の靭帯を切除し、体の別の部分にある靭帯を移植すると言う手術です。言うのは簡単ですが、靭帯は臓器の様に血管を結びつければ良いというわけではなく、体の別の部分から取ってきた靭帯を「骨にくっつけなければなら無い」のです。

考えて見ると分かるのですが、腱や靭帯は骨に簡単にはくっつきません。先ほど、からくり人形を例に上げましたが、木製の手足に紐をくっつけるために接着剤などを使おうとしても、強度不足ですぐに剥がれてしまいます。というのも、靭帯と骨は組織としてはかなり性質の異なる組織です。一方は柔らかく柔軟性のある紐状の組織で、もう一方は人体の中で最も強固な組織。

これをくっつけるために、考案されたのが骨に穴を開けてそこに靭帯を通すと言う方法です。

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上図が手術を簡単に説明した図になります。

上から順番に、「靭帯の切除」→「骨に穴を開ける」→「穴に靭帯を通す」と言う形になっています。

靭帯移植の肝は、どうやって骨と靭帯を繋ぐかにあり、それを骨に穴を開けて靭帯を通すというのは非常に画期的なやり方だったと言えるでしょう。

考案されたのが、1970年代ということもあり、かなりアクロバティックな手術であることが分かります。からくり人形の紐そのまんまです。見た目の通り、この手術は非常に難易度が高く、これが考案された直後は成功率が10%程度でした。

しかし、骨に穴を開けて靭帯を通すというコンセプトはそのままに、穴の開け方や靭帯の通し方が工夫されるようになり、簡単にそして確実に靭帯をつなげることが可能になりました。

今では成功率は90%と言われていて、この確率も実は手術の失敗云々ではなく、リハビリの失敗によるもので、手術自体は確実な物になっています。

球速が上がるってホント?

球速があるとか、成績が良くなるという噂があり、故障したらすぐに手術に踏み切るような風潮になってきています。しかし、この噂は本当なのでしょうか?

結論から言えば、必ず上がるということでありませんが、上がることも多いようです。

理由としては色々言われていますが、もともとあった靭帯よりも強固な接続になるというのが一因にあるようで、接続部分が確実に治癒し、適切にリハビリを行って筋肉の動きを完熟させれば球速が上がる可能性は高いでしょう。

とは言え、施術にも色々な種類があり、上がりやすいものやそうでもないものもあるようなので、一概には言えません。

手術自体は万全の体制で行われるとは言え、故障を抱えていない人が受けるにはリスクが大きいです。リハビリは辛いですし、1年から2年は試合に出られません。

パワプロのダイジョーブ博士ではありませんが、上手く行ったら能力がアップするからと言って、せっかく育てた自分の体をリスクに晒す必要はありませんよね。