最近、最も身近で使われている充電池は、リチウムイオンバッテリーではないでしょうか?
携帯、スマホ、パソコン、タブレットなど、小型で大量の電力を消費するような端末には必ずと言って良いほどリチウムイオンバッテリーが使われています。しかし、その原理についてはあまり知られておらず、かつては充電池といえば「ニカド」や「ニッケル水素」だったため、その頃の名残で沢山の誤解が生まれているのが現状です。
今回は、そんなリチウムイオンバッテリーの原理や特徴についてご説明していきます。
関連記事
・ニッケル水素充電池とは?欠点を克服したエネループ
・アルカリマンガン乾電池とニカド充電池はどう違う?
・化学・物理・生物(バイオ)を利用した多彩な原理
大きなエネルギーを持ったリチウム
(リチウムイオンバッテリー_Wikipedia)
「リチウムイオン」と言う名前が付いているだけあって、電子の移動にはリチウムイオンが使われています。そして、電池の内部はリチウムイオンを貯蔵する陰極とリチウムと反応して電子の受け渡しをする陽極に分かれており、充放電の際にリチウムイオンがせわしなく動きまわるのがリチウムイオンバッテリーです。
リチウムの最大の特徴は、「イオン化傾向」が非常に高いこと。つまり、化学反応が非常に発生し易い物質だということです。電池は化学反応によって電気を発生させているため、化学反応の起き易さはそのまま電気的エネルギーの高さに繋がります。
言ってみれば、リチウムと言うのは大きなエネルギーを持った物質だということです。特に、酸素との燃焼反応の起こり易さは驚くほどで、水につければ水に含まれる酸素原子と反応を起こし、空気中でも空気に含まれる水分を使って反応が始まります。ちなみに、リチウムイオンバッテリーが爆発するのは、実はこのリチウムの特性が原因だったりするのですが、それについては別の機会にご説明しましょう。
リチウムイオンは高エネルギーで化学反応が起こりやすい意外にも重要な特性があります。それは、非常に小さくて軽い物質だということです。何と原子番号3番で、理屈の上では空気に浮きます。ただ、実際には金属元素なので常温で気体としては存在せず、水素やヘリウムのように風船に入れて浮かせる事はできません。
しかし、軽くて小さくて高出力というのは携帯する電池を考える上では非常に重要な要素です。携帯の電池パックを取り出してみるとわかりますが、普通の乾電池より沢山の電力を発生させられるにもかからず、小さくて軽いです。
また、リチウムを反応させるために陽極で使っているのがニッケルではないため、使いきる前に充電すると容量が少なくなるメモリー効果などの発生が少なく、放置しているだけで容量が減る自然放電も少ないというのも特徴の一つです。そのため、継ぎ足し充電を繰り返しても気にならず、頻繁に充電する機器にはぴったりです。
リチウムイオンバッテリーの原理
リチウムイオンの陽極や陰極にあるリチウム貯蔵物質には様々な物質が使われていますが、基本的な原理は皆同じです。
陽極:二酸化コバルト(CoO2) など
陰極:リチウムイオン(Li – 貯蔵にカーボンなどを利用)
電解液:炭酸エチレン(C3H4O3) など
<陽極>
放電時: CoO2 + Li+ + e– → LiCoO2
充電時: LiCoO2 → CoO2 + Li+ + e–
<陰極>
放電時: Li → Li++e–
充電時: Li++e– → Li
化学反応式を見ると、リチウムが単体で存在している様に見えますが、これはニッケル水素電池の時と同じように貯蔵物質であるカーボンなどにリチウムが貯蔵されており、通電するとリチウムがイオン化して陽極へ移動するのです。充電の際には、リチウムイオンがコバルトから外れて陰極へと移動していきます。
一方、電解液を見ると今までに見たことのないような物質が使われています。実は、リチウムは水と反応してしまうため、水溶液の類が使えません。一般に、エチレン系などの有機溶媒が使われます。
電解液に有機溶媒を使う副次的なメリットとして、液漏れなどが起こる心配が無く、ある程度の低温状態きちんと動作する点があります。ただ、それが発火の原因の一つにもなっているので、メリットばかりではありません。
このように、電解液に水は使えませんでしたし、リチウムを貯蔵する陰極の物質やリチウムと安定的に反応してくれる陽極の物質がなかなか発見されなかったため、実用化された時期は他の充電池と比べるとかなり遅いです。
一見するとシンプルな反応に見えますが、リチウムイオンバッテリーを理解する上では化学式を見るだけでは不十分です。
というのも、普通の充電池には、陰極・陽極・電解液・絶縁体程度しか含まれていませんが、リチウムイオンバッテリーにはそれ以外にも多数の機構が組み込まれています。