リチウムイオン電池の爆発事故が話題に上ることが多くなりましたが、実はニカド電池やニッケル水素電池も爆発する危険性があります。充電池ではないアルカリ電池やマンガン電池も、爆発こそしないものの有害性の高い液体が漏れ出す危険性があり、電池と言うのは決して「安全なエネルギー」ではないということを思い知らされます。
電子機器には厳しい基準を設けている日本で高い危険性のある電池は販売されていませんが、誤った使い方をしたり、正しい安全対策の取られていない電池を使えば爆発する事はあります。
本記事では、電池が何故爆発し、危険な物質を含有しているのかについてご説明していきましょう。
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爆発って何? 高いエネルギーを短時間で開放する現象
爆発、爆発と何度も言っていますが、爆発と言うのは短時間に狭い場所でエネルギーが開放されると起こる現象です。
分かりやすいのは爆弾や花火あたりですが、実は爆発と言うのは案外どこにでも起こりえる現象です。圧力鍋の蒸気栓を完全に塞いで加熱し続ければ爆発しますし、ガスや気化したガソリンに火を付けると爆発しますよね。
ポイントとなるのは「膨張」と「エネルギー」です。
爆弾や花火に使われている「火薬」は、火をつけると化学反応を起こして気体を生成し、急激に膨張していく性質を持っています。急激に発生した気体が一気に広がり、爆発となります。
一方、圧力鍋に水が入った状態で加熱すると大量の水蒸気が鍋の中に溜まり始め、圧力鍋が耐え切れなくなった瞬間に水蒸気が開放され、急激に水蒸気が膨張する形で爆発がおこります。この場合は「火」が関わっていないため、爆発とは呼ばない人もいるようです。また、ガスやガソリンも一度火がつくと、化学反応によって発生したエネルギーで連鎖的に新たなエネルギーの発生がおこり、新しい気体を発生させつつ周囲の気体を膨張させるので、大きな爆発に繋がります。
つまり、爆発と言うのは、「化学反応」や「気体の膨張」を発生させるだけのエネルギーを持っていればどんな状況でも起こりえるということです。
リチウムイオン電池の危険性
リチウムイオン電池の危険な所は、リチウムが非常に化学反応を起こしやすい物質であり、高いエネルギーを溜め込める性質があるという点にあります。
さらに、リチウムは水に含まれる酸素と反応して燃えるため、電解質に水が使えず、可燃性の有機溶媒を使う必要がありました。少しおかしな話に聞こえるかも知れませんが、言ってみればマッチとガソリンを同じ所に入れているようなものなのです。
もちろん、ガソリンの中にマッチを入れただけでは燃えませんし、マッチもガソリンも酸素が無いと燃えません。これはリチウムイオン電池にも言えることで、有機溶媒もリチウムも酸素がなければ燃えないのです。
そのため、酸素が入り込まないように完全に密閉されているリチウムイオン電池は、普通に使っている分にはどうあがいても爆発なんておこりません。
しかし、過充電をすると別です。充電というのは、電気的なエネルギーを電池に送り込む作業であり、熱エネルギーで言えば温めているようなものです。可燃物を暖めすぎると発火するように、電池も充電し過ぎると予期せぬ化学反応が起こります。
実は、陽極に使われている金属に酸素が含まれており、その酸素が電気エネルギーで分離してしまうのです。つまり、過充電を行うと「内部に酸素が発生する」ということです。
多少反応するぐらいではなんとも無いですが、大量に発生すると爆発や発火は待ったなし。膨張したバッテリーには酸素が溜まっている事があるため、過剰なエネルギーを与えるとあっさり爆発します。
また、部品が加熱して溶け出してしまうことでショートするリスクも高まります。ショートして過剰なエネルギーを受け取ったリチウムは、有り余ったエネルギーを使って内部の酸素と強引に反応を起こし、簡単に爆発します。
「そんなバカな」と思うかも知れませんが、携帯電話のバッテリーに穴を開けて「ショートさせ」さらに、穴から「酸素を与える」とこうなります。
完全に放電しておけばここまで激しい燃焼反応は起こりませんが、満充電だとこれくらいの反応が起こってしまうのです。
なんだかリチウムイオンバッテリーを使うのが怖くなってしまいますが、膨張し始めても火種(過充電・ショート)を与えなければ爆発しませんし、過充電は内部の制御機構で完全に防がれる仕組みになっています。
安全対策はきちんと取られていますが、故意に安全機構を壊したり電池そのものをショートさせたりすれば安全は保証できません。また、安全機構に不具合があれば爆発や発火する恐れがあります。既存のリチウムイオンバッテリーにおける事故の殆どが、この「安全機構における不具合」です。
信頼できるメーカーの商品を選ぶ必要がありますね。
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