水素の発電と燃焼は何が違う? 燃料電池と水素爆発のしくみとそのエネルギー

酸素の電子を使いまわして発電(SOFC方式)

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(SOFC発電のしくみ_大阪ガス

ちなみに、水素ではなく酸素側の電子を移動させる方法でも発電は可能です。

「そんなに簡単に水素や酸素をイオン化出来るの?」という疑問も浮かびますが、実はイオンと言うのは熱や光で分離した原子や分子(ラジカル)と比べると若干安定した状態なので、条件さえ整えられれば発生させること自体はそこまで難しくありません。

この方法では、最初にバッテリーなどを使って酸素に電子を与えて酸素イオンを作ります。イオン化した酸素は電気的にマイナスの性質を持ちますので、プラス側に引き寄せられて水素と反応します。この際、余分に蓄えられた高エネルギーの電子が放出されるため、発電が可能になります。

PEFCとSOFCの違いは、移動するのが電子の足りない水素イオンか、電子の多い酸素イオンかの違いだけなのですが、稼働温度が大幅に異なっており、PEFCは80℃前後、SOFCは1000℃前後となっていて、運用方法が大きく異なります。両者の違いについては別の機会にお話しましょう。

水素による発電と燃焼の違い

結局、水素による発電と燃焼の間にはどのような違いがあったのでしょうか?

ポイントは二つ。

1.水素や酸素をイオン化させて電気的な性質を持たせるか
2.電子の通り道を作って電気的エネルギーを取り出すシステムがあるか

燃焼反応では、光や熱や電気といった水素や酸素を分離(ラジカル化)させるためのエネルギーをきっかけにして連鎖的に反応を起こしていました。電子は原子や分子同士で直接やりとりされ、電子のエネルギーは全て熱や電磁波として放出されています。

一方、燃料電池の様なシステムでは、水素や酸素は触媒などを用いてイオン化され電気的な性質を得た後、電子を電極に流して電子のエネルギーを電気的なエネルギーとして回収し、既にエネルギーを搾り取られた電子を使って酸素と水素を反応させることで無駄に放出される熱を最小限におさえています。

どちらのケースでも、高いエネルギーを持った水素や酸素を利用してエネルギーを作っているという点では変わりませんが、そのエネルギーをどこでどのように取り出すかに大きな違いがあったのです。