合成ダイヤは何に使う? 2つの製造法とその用途

装飾品として人気の高いダイヤモンド。しかし実は、工業用にも広く使われるものなのです。摩耗に強い、熱伝導率が高い、透明度が高いなどの性質から様々な用途があります。

しかし天然ダイヤを使うだけでは工業用途の需要を満たすことができません。そこで現在では、ダイヤモンドを人工的に作る技術が確立され、天然ダイヤを採掘するよりもはるかに低コストで工業用ダイヤを製造できるようになっています。

そうした合成ダイヤはどのように作られるのか、そうして作られたダイヤはどんな用途に使われるのか、本記事ではそれを見ていきましょう。

合成ダイヤの主な製造方法

合成ダイヤの主な製造法には、高温高圧合成と化学気相蒸着があります。

高温高圧合成

高温高圧合成は、自然界でダイヤが生成される環境を再現することでダイヤを作り出す方法です。

天然ダイヤは地下深くのマグマの中で、長年にわたり高温高圧を受けることでできあがります。高温は炭素を含む物質を溶かして原子だけを分離するため、高圧はダイヤモンドの結晶を安定させ、黒鉛など別の物体にならないために必要です。

高温高圧合成のイメージは、お湯に多量の塩を溶かしたものを思い浮かべるとわかりやすくなります

水の温度が高いと塩はよく溶けますが、水が冷えてくるとやがて塩の結晶が沈殿します。高温高圧合成法は水の代わりに高温で溶けた金属を、塩の代わりに炭素原子をこれに当てはめるもので、溶けた炭素原子をダイヤモンドとして結晶化させるようなものです。ただ、塩の結晶は高圧でなくとも作れますが、ダイアモンドには高い圧力が必須になります。

まずは、鉄やコバルト、ニッケルなどの金属を熱して液体にします。これがちょうどお湯にあたるもので、この中に炭素原子を入れると、ちょうど塩が水に溶けるように液化した金属に溶けて混ざります。

この溶けた金属を入れた容器は高い圧力を保てるだけではなく、上の方の温度が高く、下の方の温度が低くなっています。お湯が冷えると溶けた塩が沈殿することを思い出してみましょう。高熱の上層で溶けた炭素原子は下へと向かい、やがて温度の低い箇所に到達します。そこでは炭素原子が溶けきれずに結晶化して固まります。そして、高い圧力がかかっていることで結晶は安定し、ダイヤモンドとなります

化学気相蒸着

ダイヤの構造を異なるアプローチから再現するための方法として、化学気相蒸着という方法が現在では注目を集めています。

これは、水素とメタンガスを混合させた気体を密封し、ダイヤが積み重なると基板なる物体を配置した装置を使う方法。このガスにアーク放電やマイクロ波などでエネルギーを加えると、原子から電子が分離して振る舞うプラズマという状態に転移します。

プラズマ化した水素原子は非常に反応性が高く、すぐさまメタンガスと反応して別の物質に変化します。その過程で個別の炭素原子が分離され、それが基板に積み重なっていくことで、地層が堆積するようにダイヤモンドが積み重なってできていきます。

化学気相蒸着は高温高圧合成に比べていくつかの利点があります。

まず、金属が溶けるほどの高温とダイヤが安定して生成されるほどの高圧を再現しなくてもいいので、エネルギーの消費が少なくて済みます

さらに水素とメタンだけを封入した密封チャンバー内でダイヤを製造するという性質上、ダイヤの内部に不純物が混ざりにくくなります。用途によっては不純物のないダイヤを使うことが重要になるので、品質の調整がしやすいことは大きな利点です。

また、こちらの方法では高温高圧合成法よりも大型のダイヤを作ることができます。