合成ダイヤは何に使う? 2つの製造法とその用途

合成ダイヤの用途

このようにして大量生産される合成ダイヤモンド。ここからは具体的な用途を見ていきましょう。

ダイヤは硬度が高いことで有名です。硬度が高いとは、叩かれても砕けにくいということではなく、別の物質とこすり合わせた時に削れにくいということ。そのため、摩擦を受ける機械部品にダイヤの粒子を混ぜることで耐久性を上げることができます。

ドリル

身近なものに、ガラスやタイル加工用のドリルがあります。ドリルの先端はドリルビットと呼ばれますが、回転してガラスやセラミックに押し当てられるドリルビットは使うごとに多大な摩擦にさらされます。硬度の高いダイヤはガラスもセラミックも削り取ることができるため、効率よく加工しつつ部品の寿命を延ばすことにもつながるのです。

シャープナー

このほか、包丁や刃物を研ぐシャープナーにもダイヤが使われます。ダイヤの硬度が10であるのに対し、一般的なナイフの硬度は5程度なので、両者を擦り合わせてもダイヤには傷がつかず、ナイフの刃の方が削れていきます。シャープナーは鈍くなった刃先を削り取って鋭くすることで切れ味を戻すための道具。摩耗に強いダイヤの性質を活かした用途です。

ヒートシンク

ヒートシンクとはあまり聞き慣れない名称ですが、要は熱を逃がすため使われる放熱板のこと。

ヒートシンクの素材としては銅やアルミニウムなどの金属やセラミックが主に使われます。実はダイヤモンドは熱を通しやすい素材であり、炭素原子の純度が99.9%の合成ダイヤモンドは銅の5倍もの熱伝導率を誇るのです

PCやスマートフォンのCPUは動作中に高い熱を発しますが、熱をうまく逃がすことができないと周辺の部品も加熱されてしまい、機器の寿命を縮めたり故障の原因になったりします。各種デバイスの安定した動作を保つヒートシンクは、今日のデジタル生活の命綱と言えるでしょう

磁気センサー

また最近の研究では、周辺の磁場を検出する磁気センサーとしての応用が期待されています。

ダイヤを使ってどのように磁気を検知できるのでしょう?

ダイヤは炭素原子が集まってできた結晶ですが、ダイヤ内の一部の炭素原子が窒素原子と結合した場合、その近くには小さな隙間ができます。この隙間に緑の光を当てると赤い光が出るのですが、この赤い光の強さは周辺の磁場によって変化します。

その光の強さを分析することで磁場の状態を検出することができるのです。ダイヤを使うことで従来のものより検出精度の高いセンサーの製造が可能になり、MRI機器などへの応用が期待されています

ダイヤを十分に機能するセンサーとして活用するためには、ダイヤ内部の炭素原子をピンポイントで取り除くことが必須です。2017年11月、イェルサレムにあるヘブライ大学の研究チームが電子ビームを使ったシンプルな方法で、ダイヤ内部の炭素原子を取り除く方法を実演。ダイヤ内に自由に空間を作り出すことが可能だと示されたことで、センサーとしての実用化に向けて大きく前進したのです。

まとめ

ダイヤが単なる高級装飾品として活用されていたのも今は昔。日々の生活とエレクトロニクスが切っても切り離せなくなり、かつ工業用ダイヤを大量生産できるようになった現在では、ダイヤは多くの人々の暮らしを支える重要な素材になっているのです。