日本武士と西洋騎士の強さを徹底比較(6):一騎打ちを極めた騎士と死ぬまで戦い続ける武士

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前回の記事で武士が強いだろうという話になりましたが、なんとなく納得いかないということも多いでしょう。騎士は鎧が強力ですし、ランスに盾を備えた重騎士を止めるのは何をもってしても不可能ではないのかと思えるほどです。

確かに重騎士は接近戦においては最強と言っても過言ではありません。機動力に防御力を備え、高い攻撃力を持っています。いかに強者の武士が槍騎兵となって突撃しても、間違いなく負けてしまうでしょう。また、互いに刀と剣を持って斬り合っても、重騎士が勝つはずです。その騎士が、何故総合的に見ると武士よりも弱いのでしょうか?

一騎打ちを極めた騎士

騎士の防具と武器はどちらも一騎打ちのために進化していった武器でした。騎士の全てが貴族ではないものの上流階級の騎士は貴族であることが多く、その命は非常に貴重なものとされていました。

特に、騎士が生まれた当初は武器にお金を掛けられる人間は少なく、戦闘は上流階級の役割で一騎打ちが中心でした。戦場においては貴族の騎士を殺すよりも捕まえて家族から身代金を貰った方が利益が大きく、「戦って負けても命がある」ケースは珍しくなかったのです。

そのため、相手を倒すことより身を守ることが重視され、強化されていく防具に対抗するために武器も進化していきました。その結果がランスやハルバードであり、ハンマーやフレイルだったのです。ここまで多彩な特性を持つ武器が広く使われている文明は珍しく、多くの文明が日本と同じく「剣」「槍」「弓」系の武器に投擲武器が加わるぐらいです。

貴族が騎士以外の下級兵士を雇用するようになって一騎打ちは少なくなったものの、生活に余裕がなく雑務に追われる下級兵士は技量も低く、装備の差も相まって「騎士を倒せるのは騎士だけ」という風潮が広がっていきます。裏を返せば、騎士以外の兵士に倒されるのは騎士にとって不名誉な事であり、騎士を簡単に倒せるパイクやクロスボウの登場は騎士を戦慄させました。

にも関わらず、戦果も分かりにくく捕縛もできない飛び道具は卑怯者の武器とされ、敬遠されるようになってしまいます。その結果、騎士の装備は相手の騎士を倒して捕縛出来る近接装備が中心となったままで進歩せず、下級兵士の装備ばかりが近代化していくことになり、銃の登場を迎えます。

彼らを兵士として考えてみると、「接近戦に特化した高価な兵士」に過ぎず、パイク兵やクロスボウ兵のような高い経済性と生産性を持ち、集団運用によって飛躍的に価値を高める兵士にはなれなかったのです。

死ぬまで戦い続ける武士

平和な江戸時代になると武士のあり方も変わりましたが、戦国時代までの武士は「戦争請負人」でした。

武士も騎士と同じように一騎打ちの風習はありましたが、長射程高威力の和弓の性能も相まってか、「弓の腕」が武士の価値と捉えられる時代もありました。そのため、初期の武士では一騎打ちではなく強者の弓の撃ち合いで勝負を決めることもあり、遠距離戦も武芸として考えられていました。

また、「負けて生き残るのは恥」という考えが古くからあり、「生き残るより敵を倒すこと」が優先されたため防具の防御力は割いて限度のものでした。刀や槍以外の特殊な武器は生まれませんでしたが、武器を扱う技量が重視されることになった結果、武器や防具は使い手の能力を最大限に引き出すために進化します。

鎧は「動きやすさ」と「壊れても良い生産性」が重視され、どんな環境でも戦える「当世具足」が生まれます。そして武器では、斬撃と刺突において高い能力を誇り、十分な堅牢性を持つ「日本刀」が生まれることになりました。

日本刀は戦場で扱う武器としてはリーチの長い槍や弓には及ばず、圧倒的な強さを誇るわけでもありません。しかし、「戦場で死ぬまで戦うための最後一振り」としては極めて完成度が高いのです。どんな相手でも、刀が一振りあれば武士の技次第で倒すチャンスがあります。武士の魂とも呼ばれることになりますが、槍がなくとも、弓がなくとも、文字通り武士は刀さえあれば武士でいられたのです。

精神性で語られることの多い刀ですが、完成度の高い武器は兵士の近接戦闘能力の底上げにもなりました。弓兵の矢が尽きても、槍兵の槍が折れても、最後は刀で戦える。それこそ死ぬ直前まで戦える兵士が生まれたのです。

相手の武士を倒すことでもなく、生き残ることでもなく、戦場で死ぬまで戦うことに価値を見出していたのが武士と言えるでしょう。

武士は刀だけではない

武士といえば日本刀。そう思っているのであれば、武士は騎士には勝てません。

武士の武芸は刀だけではなく弓もあります。そして、騎射も武士の武芸においては重要な能力です。驚くべきことに、和弓は世界最大の弓と言われており、騎馬民族が操る複合弓には及ばないものの射程と威力は世界的に見てもトップクラス。

英国のロングボウとも比較されますが、弓の扱いに大きな違いがあり、弓の下側を持って射る和弓は中央を持って射るロングボウと違って馬上で扱う事も容易です。つまり、ロングボウ並の威力と射程を騎馬で実現出来るのです。

これは武士にあって騎士にはない大きな利点であり、騎士と戦うのであれば騎射で翻弄できるのは大きな強みになるでしょう。また、川の中でも森の中でも畑の中でも、どんな場所でも戦える適応力も強みでしょう。

一騎打ちを極めた騎士に武士が一騎打ちで勝つ事は難しくとも、戦場で死ぬまで戦うことに長けた武士が戦場においては有利に戦いを運ぶことが出来るでしょう。

まとめ

そうは言っても、本物の戦場では勝敗は時の運。騎士が勝つこともあれば、武士が勝つこともあるでしょう。

わざわざ6本の記事を書いて「武士が強い」と考察しましたが、私自身も書き終わるまでどっちが強いか分からないままでした。比較を進めるにつれ両者の違いがはっきりとしてきて、「戦場においては」という条件付きで武士が強いと判定するに至りました。

まだまだ納得が行かない人もいるでしょうが、今回の徹底比較を経て、何らかの発見を得る手助けが出来れば幸いです。