未成年の猟奇殺人、佐世保事件と過去の未成年殺人を比較する(後編)

山口母親殺害事件

当時16歳の少年が、自身の母親を金属バットで複数回に渡って殴り殺害した。きっかけは母親との言い争いであり、衝動的に殺害したようにも思える。しかし、逮捕後の精神鑑定や出所後に起こした「大阪姉妹殺害事件」から、少年のモラルがこの時点で完全に崩壊していた事、暴力行為に対して性的な興奮を抱いていたことが明らかになっている。

少年の精神・嗜好に問題があったにも関わらず、裁判では、「母親の行動や家庭環境にも問題があり、情状酌量の余地もある衝動的な犯罪」と判断し、少年法の関係も僅か3年2ヶ月で出所している。結果、出所して一年足らずで、さらに凶悪な「大阪姉妹殺害事件」を起こすことになった。その事件では既に成人していたこともあり、死刑判決が下され、既に刑は執行されている。

情状酌量の余地があるとされた家庭環境とは、犯行の5年前に亡くなった父親が少年に暴力を振るっており、さらに母子家庭となってからも非常に貧しい暮らしが続き学校でもいじめられるようになっていたと言う環境だ。確かに酌量の余地があり、精神的な歪みは本人の責任ではない事は明らかだ。しかし、そう言う環境に置かれた子供が正常に発育することは難しく、間に合ったかどうかは置いておいても、正しい教育・指導を受け直させる必要があったことは間違いない。

長崎男児誘拐殺人事件

中学1年生の12歳の少年が、4歳の男児を騙してビルの屋上に連れて行き、男児を裸にした上で暴力を加え、ビルから突き落とし殺害した事件。特筆すべき点は、男児の性器をハサミ等で複数回に渡って傷つけたという点で、少年の性器に対する強い執着が伺える。防犯カメラの映像から犯人が推定され、逮捕に至った。

殺意があったかどうかは明確にはなっておらず、監視カメラの存在に気付き、泣きだした男児をどうすることも出来ずパニックになって、突き落としたとしている事から、強い殺意があった事件とは言えない。殺害に興奮していたと言う事実もなく、猟奇殺人に分類される事件ではない。しかしながら、少年は以前から男児を連れ出して裸にするという行為を繰り返しており、少年が持っていた異常性癖や性器に対する異常な執着が事件に繋がったとして比較事件に追加した。

家庭環境としては、母親の過剰なまでの過保護な指導、過激な教育は近所でも評判となっており、後の精神鑑定でも母親に対する強い恐怖が存在していたことが明らかになっている。犯行後のコメントでも、子供の事件に自分は関係無かったと言う態度をとっている。この母親の存在が年の精神面に強い影響を与え、精神のバランスを崩す原因になったのは言うまでもない。

<共通点>

これらの事件と、佐世保の事件で共通している点は2つ。
一つは、前述の「殺人」「暴力」「強い執着・興味」が猟奇事件へ発展したと言う点。
二つは、教育環境が異常、もしくは片親であったこと。

豊川市の事件では「殺人への興味」。バスジャックでは「暴力衝動やストレスの発散」。山口の事件では「暴力衝動・性癖」。長崎の事件では「性器への執着」。それぞれが事件の直接の原因となっている。
佐世保の事件でも「殺人への興味・強い執着」があったことが分かっており、こう言った精神・嗜好の異常性が、これらの事件に大きく関わっていることが分かる。

忘れてはいけないのが、精神・嗜好の異常成長に繋がる原因。
多くの事件で少年少女の異常行動に関する原因が取りざたされてはいるものの、必ずと言って良いほど関わってくるのが教育環境の問題だ。
豊川市の事件では「両親が幼い頃に離婚」。バスジャックでは「学校でのいじめ、両親の諦観」。山口の事件では「父親の暴力、母子家庭」。長崎の事件では「身勝手で過保護な母親」
同様に、佐世保の事件でも「母親の死」が精神の不安定さを生む重要なファクターとして取り上げられており、決して無関係とはいえないだろう。

女生徒による犯行

次に、今回の事件で注目されているが、少女による犯行という点。

佐世保女子高生殺人事件は、僅か15歳の少女によって引き起こされた。
これは、佐世保小6女児同級生殺害事件」と、京田辺警察官殺害事件」で共通している。

注目すべきは、本事件も含め、これら3つの女子生徒が起こした事件全てに、父親の影響が強く見られることである。

佐世保小6女児同級生殺害事件

これは、同じく佐世保で起こった事件だ。
小学6年生の女生徒が、被害者となる同級生の女子児童の言動・ネットでの書き込みなどに腹を立て、学校に呼び出し、首や手をカッターナイフで斬り付けて殺害した。

驚くことに、首筋のカッターによる傷口は最大10センチに達し、手の甲に付けられた傷は骨が見えるほどだったという。これが意味することは、小学生の女生徒が、全く躊躇いなく、全ての力を込めて、まだ普通に言葉を交わせた友人を斬りつけたと言うこと。
しかも、犯人の女生徒はその後、遺体を踏みつけるなどして遺体に暴力を加えていたと言う。

怨恨による殺人とも分類できる事件だが、傷口の深さや加害女生徒のサディスティックな嗜好があったことが明らかになっているため、猟奇殺人ともいうことが出来る。

そして、加害女生徒の父親が、自身のストレス発散のために女生徒に虐待を加えていたと言う事実があり、女児と両親とのコミュニケーションが上手く行っていなかったと言うことが、女児の精神のバランスが崩れた原因として指摘されている。