暖房機器の原理と仕組み、メリットやデメリット(その1):温風・対流を使うファンヒーター・ストーブ・エアコン

確かに0℃の外の空気をそのまま取り入れたら寒いのですが、冷媒をギュッと圧縮・凝固させて-5℃くらいまで下げて液体にした状態だとどうでしょう?そうすると、不思議なことに冷媒からすると外の空気は暖かいので、その状態で気化させると冷媒は一気に外の空気の熱を奪います。そして、部屋に戻ってきた冷媒はまた無理やり熱を放出させられながら液体にさせられて-5℃になってしまいます。この差分のエネルギーが熱として室内に放出されます。

とは言え、吸熱(気化)反応には限界があります。極端な話、絶対零度(-273℃)では物体は気体にはなりません。そのため、どんどん温度が下がれば下がるほど液体は気化させにくくなり、気化させるために余計なエネルギーが必要になってきます。一方で、放熱(液化・固化)反応には限界が無いので、外気による影響は最小限で済みます。

イメージ的には、貧しい土地(冬の室外)で必死に作物(熱)を収穫してきた農民(冷媒)が、豊かな土地(室内)の富豪(エアコン)に作物(熱)を奪われ、仕方なくまた貧しい土地で作物を収穫しに行っているようなものでしょう。ちなみに、奪われた作物によって、豊かな土地はどんどん豊か(暖かく)になっていきます。冷媒に意志があったら確実にブチ切れているはずです。


シャープ プラズマクラスターエアコン

原理はさておき、エアコンを暖房として使う場合・・・そうです。外気温と室温の差が非常に重要になります。

エアコンは外の熱を奪うので、前述の通り外が寒ければ寒いほど熱を奪うために必要なエネルギー(冷媒の状態変化)が多くなってくるのです。外が寒ければ寒いほど、冷媒は沢山の労力を必要とします。先ほどの農民の例で言えば、豊かな土地が豊かであればあるほど(少しの作物(熱)では足りない)、貧しい土地が貧しければ貧しいほど(作物(熱)が取れない)、農民の仕事量は増えるということです。

具体的にはどれくらい消費電力が違うのかは、結構簡単にわかります。
エアコンをよく見ると、暖房時消費電力の記載が「標準」と「低温」で二種類あったりしませんか?標準が「外気温7℃/室内20℃」の時の消費電力で、低温が「外気温2℃/室温20℃」の時の消費電力です。5℃でも結構違うので、室温と外気の差が広がれば広がるほど消費電力は増えます。

つまり、外気温と室温の差があまりにも大きい時はエアコン以外の暖房機器を使ったほうが良いと言うことですね。エアコンで暫く部屋を温めたら、別の暖房機器に切り替えるというのも効率が良いでしょう。

このように暖房機器の動作原理を知ることで、暖房機器の賢い使い方も分かるのですね。

ここで、エアコンのメリットとデメリット。

温度差によっては非常に暖房効率が良い上に多機能

電気代が高く、室温差が大きいと予期せぬ電力消費もある

 

 ストーブ(石油・ガス)

さて、こちらはちょっと趣が異なります。

コロナ石油ストーブ

大部分の電気ストーブは輻射方式(光・電磁波)がメインですが、石油やガスを使ったストーブは輻射方式だけではなく、ある程度の対流暖房効果を生みます。ファンがついていないので、そこまですぐに部屋が暖まる事はありませんが、生み出す熱量がすさまじいのですごい勢いで暖かい空気の上昇気流を生みます。

ストーブの上にやかんを置いて熱湯を作ったりしますが、その熱が部屋をかき回す対流を作り、徐々に部屋全体を暖めていくのです。当然、こちらも石油・ガス系の暖房機器同様に換気や乾燥の問題は存在していますが、ストーブのメリットは輻射熱にあります。

ファンヒーターはあくまでガスや石油が生む「熱だけ」をファンで作った風に乗せているのに対し、ストーブはガスや石油が作った「光や電磁波も」金属板に反射させて拡散しています。これによって、光や電磁波を受けた体を直接的に暖める事(輻射熱)が可能になるのです。

つまり、ストーブは発生させた熱が生む上昇気流で対流を作り出しながら部屋を暖め、輻射を効果的に拡散することで付近にいる人や物を直接暖める事が出来るのです。一石二鳥の優秀な暖房?とおもいきや、熱以外にも光や電磁波(物に当たって熱になる)まで出しているので石油やガスの消費量は石油ファンヒーターより高く、光を拡散するために大きめに作られているため邪魔臭いと言うデメリットも。

ただ、構造が簡素で本体が安く、壊れにくいというのもある種のメリットといえます。

対流効果と輻射効果で部屋と人を同時に暖められる、意外に丈夫

大型で燃料コストが高い、換気・燃料交換は必須

 

このように、対流・温風効果を持つ暖房機器だけでもたくさんあり、それぞれメリットとデメリットがあるんです。暖房効果が非常に高いので、冬場の暖房機器の主力になる機器であり、どれをどのタイミングで使うか・・・というのが省エネをしつつ暖を取るには重要なのですね。

(その2):輻射熱を使った暖房機器 へ続く