暖房機器の原理と仕組み、メリットやデメリット(その2):輻射熱を活用する各種ヒーター類

パネルヒーター

山善 ミニパネルヒーター

さて、ストーブ類とは打って変わって全く光らない暖房機器です。

パネルの中に電熱線が入っていて、パネル自体を電気で暖めて暖を取る暖房機器。輻射式に分類させて頂きましたが、光を放たないということで輻射熱の効果はストーブ類ほどではありません。ただし、パネル自体がかなりの熱量を貯めこむので、その熱が空気に伝わって緩やかな上昇気流を生み、僅かな対流効果もあります。

火傷や火災に繋がるほど本体が熱くなることもないですし、ストーブ類とは違って体の近くに置いてもそれほど熱く感じません。その分電気代がかからないですし、構造もシンプルなので安価で軽量で薄いので持ち運びが簡単です。

トイレなどの狭いスペースや、足元などに置いて局所を緩やかに暖めると言う使い方が多く、部屋はもちろん人そのものを暖めるのには向きません。

安価で持ち運びが容易、どこにでも置けて気軽に使える

暖房効果が低く、部屋や体全体を暖める事ができない

こたつ [12/18 追記]

メトロ 一人用こたつ

忘れてはいけない(初稿で忘れていました)のが、日本人が愛するこたつ。

テーブルの下に電熱線を入れ、輻射を発生させて 一番冷えやすい足元を暖めます

今は電気式が主流ですが、昔は囲炉裏の上にテーブルを置いて使っていたようですね。実際に火を使うので危険な上に、石油系製品と同様に空気を汚して一酸化炭素中毒になる可能性もあるので、今では殆ど見られません。リビングの机と一体化出来るので、スペース的に邪魔になることが少ないのも特徴ですね。

基本的には脚を直接輻射熱で暖めますが、布団に覆われてこたつ内部が密閉されているおかげで、暖められた足や床が熱を持ち、それが空気に伝搬することで電気を消しても暫くは熱を持ちます。実際に火を使う方式に比べると、こたつ内部の空気の熱は大した事ありませんが、他の輻射方式に比べると圧倒的に発生させるエネルギーに無駄がありません

ストーブ類の場合、発生させた熱は壁などを通して比較的早い段階で逃げていきます。しかしこたつの場合、体に当たった電磁波以外は、床と布団に熱が吸収され空気に伝搬し、それらの熱の多くは人の体を暖める事に再利用されます。そのため、比較的省エネな暖房器具と言えるでしょう。

ただし、見た目に電気が付いているか分からないので消し忘れが多く、結果的に電気を無駄に使っていることも多いのがこたつです。さらに、こたつがあるからと他の暖房機器を使わずにいると、空気が冷え過ぎてこたつの外に出られなくなるのも欠点?かもしれませんね。

省エネで無駄なく下半身を暖められる。テーブルと一体化で省スペース

暖房範囲が非常に狭い。布団との間に大きな温度差が生まれる

流体を加熱循環させる機器

次に少し独特な暖房原理を使った機器を紹介します。

というのも、独特と言ってもヨーロッパでは主流ですし、最近の新しい家には標準装備されていることも多くなっている水やオイルを使った暖房機器です。別にお風呂や給湯器の事ではなく、熱を持った物質が電磁波を発生させるということを利用し、水やオイルを熱して家屋の周囲を循環させたり、暖房器具内部に熱を保持したりします。

ストーブ類とは大きく趣の異なる暖房機器であり、その特徴としては、水やオイルと言った熱を溜め込みやすい物質に熱を移すことで、長時間に渡って輻射と対流を使って緩やかに熱を広げていくことが可能な事です。自然な暖かさを生むことが出来るため、ストーブなどで体を直接温めたくない場合やファンヒーターで空気を乾燥させたくない場合には丁度良いです。

ただし、輻射の効果はストーブ類に比べればはるかに弱く、はっきり言って輻射の効果を体感する事は無いでしょう。人が気づかないレベルでジワジワ人や物を暖めるような形になります。その場合、部屋が暖まっているのか輻射熱によって暖まっているのか判別がつかず、輻射熱の効果だとは思わないかも知れません。さらに、部屋の断熱性が低いと、暖めるそばから冷えていくので、暖房効果が不十分であることも多いです。

対流式に入れた機器に比べると対流効果が極めて低いため、輻射式に分類していますが、対流式に分類されることも多い暖房機器です。

オイルヒーター

DeLonghi オイルヒーター

上記の製品は電気を使っていますが、ヨーロッパでは屋舎全体に管を通して、ガスや石油でオイルを暖めて循環させているパターンもあります。

オイルは水などよりも熱を溜め込みやすく、高温になります。高温のオイルをヒーター内部に保持していると、オイルの輻射が人や建物に伝わり、且つ直接ヒーターに触れている空気に徐々に熱が伝わっていきます。熱せられた空気が対流を生んで部屋を循環し始め、輻射熱が壁面などを緩やかに暖める事で、徐々に部屋や人が温まっていくようになります。

高温のオイルと言っても、ヒーター自体は火傷や火災に繋がるほどの熱は持ちません。緩やかに全体を暖めて行くので、急激に空気が乾燥することも無いのです。そして、一度温まったオイルはなかなか冷えないので、電気代も他の機器と比べると安く済む傾向にあります。

欠点としては、暖まるのが極めて遅いということ。30分以上稼働させなければ暖かくなったと言う感覚を得る事はできないので、すぐに暖まりたいときには使えません。さらに、大量のオイルを内蔵しているため、重くて動かしにくいというの使いにくさの一つです。

緩やかに部屋と人を暖め、電気代も安い

暖まるのが遅い、本体が重くて動かしにくい

床暖房

流体を暖めると言いましたが、電熱線を入れる床暖房もあります。しかし、電気代はお湯やオイルを使う床暖房の方が安いので、最近では温めた液体を床下に流すタイプが主流です。

効果としてはオイルヒーターと似ています。ただ、床暖房は人が接する床を暖めるので、「伝導式」「輻射式」「対流式」全ての原理を利用しているといえます。

床暖房は、暖かいお湯を床下に流し、お湯の輻射(床を透過する)で人や物を徐々に暖めながら、床そのものを温めます。そうすると、床が温められた事によって対流がうまれ、部屋全体が暖まる用になります。最も冷たくなりやすい足が暖かい床に触れることで、暖かさを実感することも出来るため、非常に効率的に自然な暖かさを生むことが出来る機器です。

欠点としては、常に部屋全体を暖めようとする機器であり、設置に大規模な工事が必要で温水を作る燃料費も馬鹿になりません。自然に暖かい環境を作れるものの、極めて制約の多い暖房機器といえるでしょう。

極めて自然に、且つ効果的に部屋全体を暖める事が出来る

後から設置することが難しく、燃料費が掛かる

 

カーボンヒーターや電気ストーブ以外は、輻射式以外に対流効果なども期待して設計されているので輻射式と厳密には言い切れないかも知れません。しかし、対流式や伝導式に比べれば極めて輻射効果の高い機器になっています。

基本的には対流式の補助として使われる事が多いですが、オイルヒーターなどは高い対流効果もあるため、単独で暖房機器として完結している機器でもありますね。

 

【その3: 直接体を暖める暖房機器 へ続く】