ここまでの方式は、やかんを沸騰させたり、タオルを干したりするやり方の応用で昔からあったやり方ですが、ここからは新しいやり方になってきます。
「超音波式」:省エネで蒸気が綺麗
超音波式の加湿機と聞いてピンとくる人は少ないかと思います。
水の気化にはエネルギーが必要で、今までそれを熱と言う形で電気で生み出したり、空気中の熱を使って気化をおこしてきました。しかし、これは音、つまり振動からエネルギーを得る形で水を気化させます。
超音波の周波数は水固有のものに決まっているので、超音波を使いこなすクジラやイルカが海中で水を気化させたりは出来ません。ただし、超音波式の場合、厳密には「気化」では無く、「霧化」と言う事があります。
というのも、発生させた超音波は水中を何事も無く通過した後に、水面の表面張力でまとまっている水分子に働きかけ、水分子をバラバラにしてエネルギー過剰の状態を作り出し、無理やり水分子同士を引き離して空気中へ押し出します。
沸騰のように水全体にエネルギーを伝えるやり方とは違い、このやり方だと空気中へ飛び出した後も水分は十分に気体になりません。中途半端に液体の状態で、後ろから押し出されるようにして空気中へ飛び出すので、水が空気に混ざる事無くゆらゆらと部屋の中に拡散していきます。
実はこの状態、加湿機としては非常に良くない状態です。言ってみれば、霧吹きを撒いて加湿と言っているようなもので、かなりの水分が空気に混ざらないまま、床や壁に付着し、カビや雑菌が繁殖しやすい環境を作り出します。
スチーム方式とは違い、水が沸騰によって殺菌されない上に、蒸気自体が気体として活動できるだけのエネルギーを持っていないので、空気を攪拌してもちゃんと空気と水分が混ざりきってくれるとは限りません。貯水槽にも雑菌がたまりやすいので、定期的な清掃や殺菌消毒が必要になるでしょう。
マイナス面ばかり話しましたが、電気代も安く、霧上に目に見える形で煙が出て行くので、視覚的な効果は高いです。アロマなどのオプション機能がつくことも多く、インテリアとして使う分には非常に使い勝手が良いかもしれません。
「ハイブリッド式」:気化式とスチーム式の良いとこ取り
そして、最近では最も人気が高いのがハイブリッド方式。
原理的には通常の気化式の機構に熱を加えたものだと言っていいでしょう。気化式の様に繊維に水を含ませ風を当てるというところまでは同じですが、水を含ませた繊維(フィルター)を加熱して、水分の気化を更に促進しています。
気化式が「空気」によって気化させていたのに対し、スチーム式は「熱」を使っていました。ハイブリッド方式は、「空気+熱」を使って加湿を行っているのです。この方式だと、比較的自然に加湿出来るだけではなく、高い加湿効果も得られます。水を過熱することで殺菌も行えるため、衛生的に使用できます。
欠点のなさそうなハイブリッド型ですが、実は水分のミネラル分が通常の気化式やスチーム式以上に内部に溜まりやすい傾向にあります。というのも、水を含ませる繊維にミネラルを綺麗に残しながら、水分だけを蒸発させるので、ミネラル分が繊維にたっぷり残ります。さらに、面積辺りの気化量も気化式よりもはるかに多いため、どんどん繊維にミネラル分が溜まって繊維を硬化させます。
放っておくと加湿効果が落ちて、気化させるフィルターの買い替えが必要になります。衛生面とは別に、定期的な清掃が必要なのが不便なところでしょう。スチーム式ほどではありませんが、電気代もやや高めなのも悩みどころですね。
まとめ
結局、何を買えば良いのか分からないと言う人のために、簡単に用途別に解説してみたいと思います。
「スチーム式」は、
衛生面でもそこまで大きな心配がなく、加湿能力が高いので、暖房やサーキュレーターなどと一緒に使って、電気代を気にせず、広い部屋を素早く加湿したい人に最適です。
「気化式」は、
衛生面が気になる人や精密機器などが多くて結露が怖い人にお勧めです。加湿効果は低いですが、より自然な加湿を行い、湿度を急激に上昇させる事がないので、結露も起こりにくくなります。筐体が大きい機種が多いですが、部屋が狭い場合には加湿効果も十分でしょう。
「超音波式」は、
主にインテリアとして活用するタイプの加湿機になります。霧の見た目が美しく、アロマを混ぜて香りのよい霧を発生させる事が出来ます。衛生面に不安が残りますが、普段から部屋を衛生的に保っている人や適切に換気・清掃している人であれば問題はないでしょう。
「ハイブリッド式」は、
万能タイプです。衛生面も気になるし、加湿効果も欲しい、電気代だって掛けたくない・・・そんな人にお勧めです。スチーム式の高い加湿能力と、気化式の省エネで自然な加湿能力で、どんな場面でも使い易い製品と言うことが出来ます。
以上になりますが、皆さん自分にあった加湿機は見つかりましたでしょうか?すでに持っている人も、今の自分の加湿機がどんな特徴を持っているのか改めて理解できたと思います。
各製品ごとの欠点に関しては、各社技術の粋を尽くして欠点を克服しようと様々な製品を作っています。
「そんな欠点があるのか・・・買うのを辞めようと・・・」
と思う前に、メーカーの製品紹介をよく見て、「衛生面はどうか?」「清掃の簡便さはどうか?」などをチェックしてから買うのが良いでしょう。