潜水艦乗りの過酷な戦い(1):楽しみは食事だけ?蒸し暑くて臭い!毎日が極限状態の海中の密室

なぜなら電気が使い放題なので、真水も作り放題、酸素も水から電気分解で作り放題、二酸化炭素も除去し放題、トイレの換気も電気をふんだんに使って完璧にこなせてしまいます。水から酸素を作りながら、二酸化炭素を除去し、空気を常に清浄し続けている原子力潜水艦は世界で一番空気が綺麗な場所だというジョークも存在するほど。

とは言え、原子力潜水艦は普通の潜水艦より遥かに長い時間(数ヶ月)潜りっぱなしなので、それくらい快適じゃないとキツいのでしょうね。

ちなみに、現代の潜水艦は衛星やレーダーの監視から逃れるために潜ったら潜りっぱなしになることが殆どですが、レーダーや衛星が発達してなかった昔は、飛行機も飛べず視界も利かない夜には浮上してのんびり外の空気を吸えたみたいですね。実際のところ、昔の潜水艦は潜水艦と言うよりは「可潜艦」と言う扱いで、殆どは水上を航行していたらしいです。

潜水艦での一番の楽しみは食事・・・なんだけど

原子力潜水艦はともかく、大部分の潜水艦はかなり過酷な環境での生活を強いられます。そんな中、唯一の楽しみは食事。

昔から世界中の海軍において、潜水艦乗りの過酷な環境には気を遣っていたらしく、陸海空どの部隊よりも優先して食料が配給されています。食料不足が嘆かれた大戦中の日独でも、野菜やフルーツはもちろんのこと、肉類もふんだんに支給されていたようです。

とは言え、生鮮食品は潜水艦内の高温多湿で過酷な環境では傷みやすく、冷蔵庫や密閉された保管庫だって電気消費の関係で大した量は保管できません。そもそも艦内スペースが狭いため、食料庫以外にもありとあらゆる余剰空間を使って食料や物資を保管していたのです。暫くは、生鮮食品を使って美味しい料理が食べられますが、ある程度時間が経つと保存食ばかりにならざるを得ません。

それでも艦内の専属調理兵が工夫を凝らし、ドライフルーツなどを使って時折美味しい食事を作っていたみたいですね。

そうは言っても、世界大戦中の汚物もろくに処理できない潜水艦では、もはやカビと汚物と体臭の匂いが混じりあって、食事の味など殆ど分からなかったそうです。まあ、それこそ船の任務や性能、環境によるのでしょうが・・・味が分からなくても、それが以外に楽しみは無かったかもしれません。

でもやっぱり原子力潜水艦は例外で、巨大な冷凍庫を平気で使える上に、電気を使う調理装置も惜しげも無く使えるので食事も美味しいみたいです。

そうりゅう級の様な最新型は?

こう言った潜水艦の過酷な環境も技術が進歩すると共に随分とマシになっていますが、それでも過酷な環境は潜水艦の宿命とも言えます。

原子力潜水艦はともかく(しつこいようですが・・・)、そうりゅう級のような通常動力潜水艦では電気消費は最小限にしなければなりません。空気清浄装置(炭酸ガス除去装置)や空調も省エネになっているとは言え、多少の事は我慢しろと言うことで無意味にガンガン使ったりはしていません。そもそも、私達は普段汚れた空気を全部外に放出していますが、本来汚れた空気を綺麗にするにはかなりのエネルギーを必要とします。換気扇を回すのも、窓を開けるのも、単に匂いの元を外に追い出しているだけで空気を綺麗にしているわけではありませんからね。

ちなみに、体臭に関しては、わざわざ真水を使わずとも最近ではウェットタオルなどで一定の効果が得られるようです。加えて、戦時でもないので真水の使用もそこまで控えません。とは言え、原子力潜水艦のように無制限に使えるわけではないので、シャワーもトイレも控えめです。あと、驚くべきことに居住エリアは禁煙ではないので、タバコの匂いも酷いみたいですね。

そんなこんなで、現代の潜水艦乗りもやはり臭いようですよ。

どうやら最新鋭の潜水艦も匂いには勝てません。さらに、そうりゅう級はディーゼル機関を搭載している上に、AIP推進に燃料を使うスターリングエンジンを使っています。浮上中はもちろん、潜行中にもスターリングエンジンの排気が若干漏れ出して匂いがしてしまうこともあるようです。元々排気の少ない方式なので、大きな害は無いようですが。

匂いが最大と敵みたいに説明してしまいましたが、狭い艦内で限られた資源を使った共同生活と言うのは、想像するだけでも辛そうです。

今回の記事では戦闘などの軍事的な側面について全く触れていませんが、潜水艦乗りの大変さは日々の生活だけではありません。軍事的な側面でも、潜水艦乗りの苦労は昔から殆ど変わっていないのです。

第2回に続く

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