使い方が少し変わりますが、「ヘッジホッグ」と言う兵器も有名です。対潜迫撃砲とも呼ばれていますが、小さな爆弾を海上からばら撒いてぶつかったら爆発させると言う方式になっています。
(ヘッジホッグ_Royal Navy)
先に音で敵を探すと言いましたが、設定した深度で爆発する爆雷は潜水艦が近くにいなくても勝手に爆発してしまします。すると、爆撃中は爆音のせいでソナーが使い物になりません。そのため、水上艦の攻撃中は潜水艦が逃げる絶好の機会でもあるのです。潜水艦側は水上艦が攻撃してきたら逃げて、攻撃を止めたら停止して・・・などと「だるまさんが転んだ」のような逃げ方をしていたようです。
そこで、沢山ばら撒いて当たったら爆発すると言うやり方が注目されたのですね。
昔はそんな苦労があった爆雷ですが、現代の爆雷は磁気センサーを搭載し、近くに潜水艦が来たら自動的に爆発するのでそんな心配はいりません。現代の爆雷もヘリや航空機であればそのまま上から落とすだけですが、艦船の場合はロケットなどを使って遠くに飛ばして使っているようです。時代が変われば、形も変わっていくのですね。
対潜攻撃その2-「誘導魚雷」
しかし、昔は最大の攻撃手段であった爆雷も今では下火になっています。
そう。誘導魚雷の登場です。
登場と言いましたが、昔は潜水艦を魚雷で攻撃すると言う発想自体がありませんでした。
というのも、潜水艦は海中を三次元的に行動するので誘導装置のない真っ直ぐにしか進めない魚雷では当たるわけがなかったのです。浮上航行中であったり、潜望鏡を使っていたりと海面スレスレを移動していた場合に魚雷攻撃を受けたことはあるようですが、数十メートルほど潜ってしまえば魚雷は頭の上を通りすぎてしまうのです。
しかし、誘導装置がついて魚雷が潜水艦を追いかけていくようになってしまえば、対潜攻撃は魚雷で事足りるようになりました。潜水艦の音がしたら、その付近に魚雷を投下して音源に向かって進ませるだけ。誘導魚雷にはアクティブソナーが付いているので、たとえ潜水艦が音を消したとしても、近づいてしまえば見つけられます。むしろ、潜水艦が魚雷攻撃を受けた場合、下手に音を消すよりは騒音を出して位置を誤魔化すのが有効です。
魚雷は足が遅いですが、潜水艦が遠くにいたとしても、魚雷をミサイルで飛ばせば済む(「アスロック」など)ことなので何の問題もありません。一方、対潜ヘリなどは、爆薬だけではなく誘導装置に推進装置までついた重い魚雷を多数抱えるのは無理なため、浅い深度なら爆雷、深ければ魚雷と使い分けているようです。そもそも、ヘリの場合は魚雷よりヘリの移動速度が速いので、自分で移動して爆弾を落とした方が手っ取り早いですから。
ちなみに、魚雷に限ったことではありませんが、誘導装置の索敵範囲から逃れない限り、誘導兵器は外れてもまたぐるっと回って再度追いかけてきます。特に、航行速度の遅い魚雷は外れたとしてもすぐに潜水艦を見失うとは限らず、一発の魚雷にいつまでも追い回されると言うことさえあり得ます。
見つかったら終わり、というのもよく分かることでしょう。
最も重要なのは、先に見つける事
爆雷に誘導魚雷。どちらも強力な兵器で、潜水艦を一撃で行動不能にすることが出来る兵器です。
ヘリや航空機からも使用でき、ミサイルやロケットに搭載して広範囲に渡って使用できるため、潜水艦の位置さえ分かれば勝ったも同然と言えます。
しかし、位置を特定する事が対潜水艦戦で一番難しいのです。攻撃を受ければ潜水艦の場所がわかりますが、潜水艦の装備も充実しており、水上艦が潜水艦の攻撃を躱しきることは困難です。もちろん、艦隊を組んでいれば一撃で全滅してしまう可能性は低いため、反撃は可能かもしれません。ただ、潜水艦が敵を見つけたからといって、リスクを犯してまですぐに攻撃してくるとは限らず、むしろずっと後ろからつけてきて位置情報を報告される可能性の方が高いのです。
潜水艦の任務は忍者と同じ。
暗殺任務も請け負いますが、情報収集が一番の仕事です。よくあるのが、港の近くにじっと潜んで艦船の出入りを静かに報告し続けるなど。そして、主力艦隊が出撃すれば、どこまでも付いて行き、いざという時には攻撃するのです。
フォークランド紛争では原潜コンカラーが巡洋艦を魚雷攻撃で沈めていますが、随伴していた駆逐艦は巡洋艦が撃沈されるまで存在に気付かなかったと言います。駆逐艦も反撃しようとしたようですが、位置を掴めませんでした。その時、原潜コンカラーは一隻しか撃沈命令が出ていなかったために駆逐艦を見逃していますが、おそらく駆逐艦を沈めようと思えば十分沈められたことでしょう。
世界大戦の際にも、枢軸・連合軍問わず数多くの艦船が沈められていますが、そのほとんどが至近距離からの突然の魚雷攻撃が理由です。護衛の駆逐艦が追いかけようにも、魚雷の爆発音で潜水艦の位置が分からなくなってしまったり、救助を優先させたりで、攻撃を受けながら反撃も出来ずに終わってしまったケースも多かったようです。
結局、潜水艦がいたのかいなかったのか、どこに逃げてどこに隠れたのかわからない。そうなったら、水上艦は毎日怯えて過ごすしかありません。
潜水艦がどこにいて、何をしているか分からない。
それこそが潜水艦が最も恐ろしいと言われる所以です。逆に言えば、潜水艦が何をしているか分かれば全く怖くはないのです。
潜水艦の場所が分かれば最高ですし、分からないとしてもあらゆる深度でくまなく対潜哨戒を行い、いるとすれば発射した魚雷が潰れてしまうほどの深海に隠れているというなら何の問題も無いのです。そのまま、潜水艦には深海魚と仲良くしてもらい、浮かんできたらすかさず発見すれば良いだけです。
潜水艦の攻撃可能な水深よりも対潜部隊の哨戒可能深度の方が深く、潜水艦が攻撃出来る状態だということは、哨戒部隊が見つけられるということと同義です。潜水艦の射程に入ってしまっても、攻撃されるよりも早く潜水艦を見つけられさえすれば、哨戒部隊の勝ちなのです。