そうりゅう型潜水艦は、ドイツの216型やフランスのシュフラン(バラクーダ)級に勝てるのか?

国別比較:フランス―シュフラン級

これも建造中の潜水艦です。とはいえ、計画中でないだけマシと言いたいところですが、実はこれは原子力潜水艦です。

このままでは豪州は運用できませんので、通常動力型に改修して使うことになります。簡単に言いますが、AIP推進とか電池とか考えなければいけない点は山積みです。

おそらく、基本設計はシュフランをベースにした豪州の独自艦となる可能性が高いでしょう。言ってみれば、今まで使っていたコリンズ級までのノウハウにフランス潜水艦のノウハウを組み合わせた新型艦ということです。この前提で性能を考慮してみましょう。

まず、シュフラン級はそうりゅう型より更に大きい5000トン級の潜水艦ですので、燃料や電池は大量に積めるでしょう。AIP無しではかなり行動範囲が狭まりますが、コリンズ級では普通にディーゼル機関で充電し、艦内に排気を貯めこんで時折シュノーケルで海上に排出する手法を取っていたので、潜水艦の運用的に問題ありですが十分なんとかなるはずです。

米国製兵器の運用に関しても、フランスは兵器輸出の経験が豊富ですし、豪州自身も改修を加える事になるので問題なく使えるはずです。

問題は信頼性です。基本設計はフランス製でも、機関部などの主要な装備は豪州の独自開発になります。コリンズ級でトラブル続きだった造船技術を見る限り、信頼性は十分とは言えないでしょう。

性能面でも不安が残ります。AIP無しでは定期的に海上付近に浮上する事になるので、潜水艦としては致命的です。さすがに何とかしてAIP推進を積みこむはずですが、どれほどの性能を達成できるか疑問です。

国内雇用に関しては、十分に雇用創出が出来るはずです。国防という面ではあちこちに不安が残る選択かもしれませんが、造船所で働く技術者達にとっては朗報ですね。

まとめると、
行動半径◯、米国製◯、信頼性△性能△雇用◎

総合評価

「日本―そうりゅう」
 行動半径◯、米国製△、信頼性◎、性能◯、雇用✕

「ドイツ―216型」
 行動半径◯、米国製◯、信頼性✕性能◎、雇用◯

「フランス―シュフラン級改装」
 行動半径◯、米国製◯、信頼性△性能△雇用◎

というような感じになりました。

△とか✕が付いているからと言って、必ずしもそうなるわけではありません。

米国製兵器の運用も注意深く行えば◯になるでしょうし、ドイツの開発計画がはっきりしてくれば信頼性は◯になるでしょう。また、豪州技術者の技術力もフランスの助力を得られば◯になるかもしれません。

見ての通り、性能と信頼性の面では日本のそうりゅうが好成績を残しています。

特に、豪州に輸出するそうりゅうはAIPの代わりにリチウムイオン電池を大量に搭載した型になる可能性が高いと見られているからです。これが現実になれば電気推進による水中速度や航続距離が飛躍的に向上することになり、性能面での不安を払拭して◎にするできることになるでしょう。

ドイツやフランスが「輸出? 欲しいならダウングレードで良ければ作ってあげるよ?」程度の軽いノリなのに対して、日本は「ぜひ作らせて下さい!ダウングレード?とんでもない、性能向上版を輸出します!」と本気で売りにかかっています。

少し大げさですが、普通武器輸出の場合には技術を盗まれないように性能をいくつか落として輸出するものなのです。それをわざわざ日本でもまだ使っていない性能向上型を提供するなんて太っ腹ですよね。

専門家の中には非常識という人もいますが、性能向上型の試験にもなるしいいんじゃないという話もあります。日本の軍備は対中、対露、対朝を軸に構成されているので大丈夫だろうという判断なのでしょうか。とはいえ、これが上手くいけば日本の兵器輸出に弾みがつきますし、日豪間の軍事的な連携も緊密なものになります。

日米豪はどれも強大な海軍を有しているため、米国としても日本と豪州の連携が強まることに期待しているようです。

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