ニッケル水素充電池とは?自己放電とメモリー効果の欠点を克服したエネループ-電池のしくみ(3)

ニッケル水素電池の革新、エネループの誕生

エネループを2015年現在販売しているのはPanasonicですが、実はPanasonicに買収された三洋電機がエネループ開発しました。

エネループが開発されるまで、ニッケル水素充電池もニカド充電池も、一週間かそこら放って置くと容量が半分以下になり、「充電池は本当に使いたい時に使えないもの」であると言う認識が当たり前でした。

また、メモリー効果によって放電し切る前に充電すると電圧が下がるということも知られており、「充放電を繰り返す電子機器にはとてもじゃないが使えない」と言う、充電池としては致命的な欠点も持っていました。

この現象が起こる最大の原因が水素吸蔵合金の構造にあり、これを改善することがニッケル水素充電池を実用的な充電池にするために必要なことでした。

まず、自然放電は放っておくと水素吸蔵合金から水素が漏れだしてしまい、徐々に放電できる水素が減ってしまうことで発生していることがわかりました。メモリー効果については原因が明確にはわかっておらず、解決困難な要因として残されていました。

メモリー効果は使い方次第で解決できるものの、自然放電は充電池としては致命的です。そこで、三洋電機は超格子合金と呼ばれる新しい水素吸蔵合金を開発しました。

これにより、自然放電を大きく減らすことに成功し、一週間どころか数ヶ月単位で放置しておいても普通に使える実用的な充電池が誕生したのです。

超格子合金の副産物として、電圧が上昇したことでメモリー効果の影響が減り、堅牢な超格子合金により充電可能回数も従来の数倍に膨れ上がりました。

エネループでは、
・自然放電が極めて小さく、長時間の放置後も使える
・メモリー効果による電圧降下の影響が少ない
・充電可能回数が二千回以上

エネループによって、従来のニッケル水素充電池のイメージは一新されました。

ニッケル水素充電池の利用拡大

エネループの登場により、今までの充電池のイメージが変わり、多くの電子機器でニッケル水素充電池が使われるようになりました。

依然としてリチウムイオン電池に比べると定電圧であり、少なからず自然放電やメモリー効果があるというのはデメリットです。しかし、リチウムイオン電池は高エネルギーであるが故に危険な電池であり、爆発する可能性とそれを抑えるための制御装置が内蔵されるのが一般的です。

結果として、リチウムイオン電池は高価で危険な電池というイメージがつきまとい、対照的に安価で安全な電池としてニッケル水素電池が注目されるようになりました。

特に環境変化の激しい野外での利用は、ニッケル水素充電池の方が優勢であり、太陽電池で作られた電気を蓄える二次電池として使われたり、ハイブリッドカーで大量の電気を蓄える電池として使われるケースが増えています。

放っておくと電気が無くなるニッケル水素充電池と言うのは過去のもので、現在ではあまり意識せずに使うことが出来ます。今後もニッケル水素充電池は、充電池市場の一翼を担っていくことでしょう。