中国下請けはなぜ部材をすり替えるのか? 発火や発熱、大手メーカーのバッテリーやアダプタに不具合が出る本当の理由

近年、大手の電機メーカーに加え、ノートパソコンやスマホなどを製造している世界規模の有名なメーカーで、バッテリーやアダプタなどの発熱・発火の事故や不具合が報告されています。

リコールされて大規模な回収に至っているものもあれば、消費者が知らないだけで不具合があるまま市場に出回っている製品もあるでしょう。これらの不具合の原因を突き詰めていくと、全てではありませんがその多くが下請けによる「部材のすり替え」が原因となっています。

一体、なぜ中国の下請けはリスクを犯してまで部材をすり替えるのでしょうか?

度重なる電子機器の発熱・発火事故

「またか!」
と叫びたくなるほど、信頼できたはずの大手メーカー製品の予期せぬ発熱・発火の不具合による自主回収が行われています。

バッテリーが発火した、モーターが発火した、アダプタが発火した、ケーブルが発火した。
数え始めれば枚挙に暇がありません。

確かに、高い電圧がかかる部品であれば発熱して発火するリスクというのは常に付きまとっているもの。しかし、だからこそ何度何度も負荷検査をして、安全を確認した上で市場に送り出していなければならないはずです。

設計に手落ちがあったり、安全確認が不十分だったというのは、中小企業のメーカーならまだ理解できます。人員も資金も不足しているのであれば、あってはならないとはいえ消費者からすれば「やっぱりな」程度の感覚で済むでしょう。

ですが、大手メーカーが「安全確認が不十分」だの「設計上のミスがあった」などという理由で不具合が多発していると言うのは納得が行きません。

そもそも、こう言った部品は特に新開発の部品でもなく、今まで使ってきて「安全が担保されている」部品をつかえば良いはずです。

お金もある。人員も豊富。なのにどうして、こんな初歩的な安全確認がなされていない製品が出まわるのでしょうか?

そのポイントは、「特定のロット」や「特定の時期」に製造された製品だけが不具合の対象になるというところに隠されています。

実は、そこにはメーカーですら把握できていない下請けの下請けによる部材のすり替えが行われていたのです。

メーカーですら把握出来ない複雑な受注構造

大手ゼネコンによる、多重下請けによる中抜きが問題になることはありますが、メーカーによる孫請けが問題にされることはありません。しかし、電子機器の製造でも複数の孫請けによる複雑な受注構造の問題は隠れています。

近年、多くの電子機器が中国で製造されるようになっていますが、これは中国で製品を作った方が安いからです。また、製品を作るのが安いだけではなく、製品を構成する部品を作るのも、調達するのも安いです。そのため、海外に自社工場を持つメーカーであっても部品は別の中国メーカーから発注しているということが多々あります。

そして、その中国メーカーは別の中国の下請けから部材を調達しています。つまり、以下の様な構造になっているのです。

[大手メーカー] → [中国部品メーカー] → [中国下請けA] → [中国下請けB] 

この下請け構造は、場合によってはまだまだ沢山続いていきます。

「中国製は信用出来ない」
と言いますが、結局のところは日本製を謳っている製品も中国製の部品だらけで構成されています

もちろん、その部品をきちんと把握して管理していれば問題はありません。しかし、これだけ多数の下請けが絡んでしまっている部品を本当にきちんと管理して把握できるでしょうか?

答えはNOです。

日本のメーカーはもちろん、中国の部品メーカーですら下請けで作っている部品の事は把握できていません。

それはつまり、「下請けが部材を粗悪品とすり替えても分からない」ということを意味しています。

部材のすり替えは日常茶飯事

米にプラスチック片を混ぜたり、食用油に汚水を使う中国です。

電化製品の部品に全く別のものを使うなんて、当たり前のように行われています

しかも一つ一つの部品が極小で、部材をすり替えても簡単には判別出来ませんし、多くの場合は何の不具合も発生しません。不具合が発生しないというのが曲者で、極端な話、「バレなければ何やっても良い」精神の下請けであれば、次から次へとすり替えて行きます。

ところが、何度もすり替えている内に、「やってはいけないすり替え」を行う下請けが出てくると、発火・発熱事故へと繋がっていきます。

発火・発熱の事故が電子機器の事故では最も深刻な事故であるため目立ちませんが、部材のすり替えで起こりやすい不具合には、「強度が落ちる」、「消費電力が増える」、「ノイズが混ざる」、「接触が悪くなる」などがあり、様々な不具合の原因なることがわかります。

これらの不具合の多くが軽微なものであり、それらの不具合の報告が「中国部品メーカー」から「下請け」に辿り着くと、しれっと「たまたま悪かった」と言ってきちんとした部材を使った部品を提供してくるので、結果的には単なる「不良品」として処理されます

慣れた下請けだと、粗悪品の部材と良品の部材を混ぜながら作って様子を見て、問題が無さそうであれば一気に粗悪品に置き換えていきます

たまに不具合が起こるだけなら、「偶然」で済ませられるからです。偶然で済んだ時は細かく調べられないので、元に戻せば良いのです。

こう言った部材のすり替えで得られる利益は本当にごく僅かですが、下請けが得ている利益がそもそも微々たるものなので、こう言ったすり替えでもしないと暮らしていけないと言う事情もあるのでバカに出来ません。

中国下請けによるすり替えは決してなくならない

部材や素材のすり替え問題は今に始まったことではなく、昔からよくあることでした。

中国製の部品が使われる割合が増えてくると、徐々に無視できない問題になっていきます。というのも、ありとあらゆる部品ですり替えが起こるからです。ネジがすり替えられた程度なら良いですが、アダプタやバッテリーの部品をすり替えられてはたまりません。

では、このすり替えが無くなるかというと簡単ではないでしょう。

まず、「中国の経済構造」や「中国人の国民性」などの問題が関わってきますし、そもそもバレない限り止まりません。

そのため、今必要なのは「すり替えに気付くシステム」作りです。製品の抜き打ち耐久試験はもちろんのこと、部材の検査や下請けの立入検査など、あらゆる方法を駆使して、すり替えられている事実に気付くことです。

そうして、「すり替えても無駄だ」と言うイメージが下請けに根付かないことには、中国下請けによる部材のすり替えは決してなくならないでしょう。