ステルス技術とは何か?電波・熱・光・音から隠れる軍事技術 – ステルス(1)

ステルスと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
戦闘機や爆撃機、人によっては潜水艦や偽装船舶かもしれません。または、SF映画に出てくるような透明スーツを思いうかべる人もいるでしょう。実のところ、どれも正解です。

ステルス技術は兵器などの隠密性を高めるために使われますが、何に対する隠密性を高めるかでその特性が全くj変わってくるのです。例えば、ステルス戦闘機や爆撃機は主に電波を使ったレーダーから隠れることに特化した技術を使っていますが、潜水艦のステルス技術にはそれとは全く違ったアプローチが取られます。本記事では、それらのステルス技術について幅広い視点から見ていきましょう。

人がモノを認識する方法とステルス技術


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ステルス技術と言うとレーダーに対する隠密性に特化した、特殊な素材と形状をしたステルス爆撃機などを思い浮かべるかもしれません。確かに間違いではありませんが、それだけでステルス技術を語ることは出来ないのです。

人が何かの存在を認識するとき、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚の五感を使います。そのうち、味覚は口の中に入れたものしか認識できないので、これに対するステルス性については考える必要はないでしょう。

注目するべきは「視覚・聴覚・嗅覚・触覚」で認識できる「光・音・匂い・熱・圧力」。さらに、機械で認識できるようになった「電波・磁気」を加えて、人は7種類の方法でモノを認識していると言えます。そして、大きく分けてこれら7種類の認識方法から逃れるための技術がステルス技術です。

光に対抗するステルス性と言うと究極的には「全く見えない」透明マントでしょう。ですが、現代でも用いられているのは迷彩服や草木を模したギリースーツで「見えているのに気づかれない」目的に特化したステルス技術です。

さほど高度なものではありませんが、従来は活動する地域によって最適な迷彩柄に変えていたものを近年の迷彩服では砂漠・森林・雪原など、どんな地域でも一定の欺瞞性を獲得できる迷彩柄を使うように進化しています。シンプルなステルス技術も進歩しているのですね。

さらに、本当に透明になれるマントなどの開発も行われています。目では全く見えない兵器などが登場するかも知れませんね。

音は光と違ってモノに遮られる事がありません。そのため、光に比べると隠蔽が困難です。特に、足音・銃声・エンジン音などは隠しにくく、人や兵器の存在を確認する上で非常に有効です。

まず、静音性を高めて振動を低減するような技術が音に対抗するステルス技術の肝になります。銃であれば銃声を小さくする消音器。自動車であれば振動の少ないエンジン。潜水艦であればスクリュー音やエンジンの振動を船体に伝えない技術になるでしょう。これに関しては、かなり高度な技術が開発されています。

また、飛行機は爆音を立てて飛行しますが、音で見つかるよりレーダーで見つかる方が早いので音に対するステルス性はあまり考慮されていません。しかし、レーダーや光の届かない水中を進む潜水艦の場合、密度の高い水を通して振動が伝搬されるので遠くまで伝わるため、音に対するステルス技術がステルスの核となるでしょう。

匂い

匂いというのはステルス技術を考える上であまり意識されませんが、匂いを用いて敵を探知する軍用犬や警察犬は重要な索敵ツールです。これらを欺瞞する能力というのは決して無視できるものでもないでしょう。

通常の軍隊は大人数で行動するので匂いをわざわざ気にする必要はありませんが、敵地に潜入する特殊部隊や工作員であれば匂いに対する欺瞞も考える必要があります。これに対する特殊な技術について聞いたことはありませんが、人の場合は体に泥などを塗って別の匂いで誤魔化すようです。

しかし、匂いに対するステルス性が最も考えられるのが密輸です。麻薬密輸の摘発などに麻薬犬が導入されていますが、麻薬の梱包や収納が不十分だと麻薬の微粒子が犬に検知され、密輸は失敗します。逆にこれが完璧になされていると、麻薬犬で密輸を摘発することは出来ません。

兵器を検知するシステムとして匂いの研究は進んでいませんが、将来的に音や光のステルス技術が高度になってくれば、動力系の排気などを匂いとして検知する装置が発達するかも知れません。その時には匂いのステルスも考える必要が出てくるでしょうね。

人が熱を感じるためには肌で空気や光を感じなくてはなりませんが、熱を持っている物体はその温度に合わせて赤外線を発しています。この赤外線を検知することで熱を持った物体を認識することが出来ます。人間も遠赤外線などを受ければ熱を感じることは出来ますが、微量ではほとんど気づきません。しかし、機械を使えば赤外線の量を細かに確認することが出来ます。

そして、実際にそれを使って戦闘機・戦車・潜水艦などが発する熱(赤外線)を探知して攻撃する技術が存在しているのです。当然、これらの熱探知に対する隠密性を高めるためのステルス技術も必要とされます。

戦闘機であれば排熱が敵から見えにくくする工夫がなされたり、戦車や潜水艦であれば排熱そのものを減らす工夫がなされます。また、赤外線は薄い金属板程度なら透過するので熱源となるエンジン付近をきちんと遮蔽できているかどうかも重要なポイントになるでしょう。

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