面接で人を採用するかしないか、少額融資希望者に融資するかしないか、犯罪者の量刑をどの程度に定めるか――。
こうした判断を人間ではなくAIに判断させようという動きが広まっています。
決定いかんで人生を左右しかねないこれらの判断。そこにAIを持ち込もうという試みの背景にあるのは、AIであれば人種や性別による偏見(バイアス)なく、公平な判断を下せるだろうという期待があります。
しかし、万一AIにもバイアスが発生するならば、どうやって公平性を保てばよいのでしょう?
バイアス、偏見と聞けばよいイメージは湧いてきません。
人種的偏見や差別から来る紛争やトラブルは世界中に数多く、学術研究の世界でも、実験データの分析や結論の立て方の中にバイアスが入り込めば、それはものごとを正しく理解する妨げになってしまいます。
一般的な認識では、バイアスはできるだけ排除すべきものです。
しかしバイアスは悪いだけのものでしょうか?
幼児期の言語習得に関する研究の中で、人間が言語を学習する過程ではさまざまなバイアスが働いていることが知られています。
それは言語の習得を妨げるものなのでしょうか? どうやら必ずしもそうではないようです。
幼児の言語習得に関連するいくつかのバイアスはどのように作用するのでしょうか。そして、それは言語習得という過程の中でどんな役割を果たしているのかを見ていきます。