スコルペヌ型、ゴトランド型、039A型、キロ型、コリンズ型を比較-世界の通常動力型潜水艦を徹底比較!(分析編)

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「039A(041)型」  - 中国

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(039A型 通称041型)

中国がロシアのキロ型を原型に発展させた通常動力型潜水艦です。スターリング・エンジンを搭載したAIP機関を搭載していると推測されており、カタログスペックだけで言えば十分に近代的な潜水艦に対抗出来る力を持った潜水艦です。

隠密性「6」

AIP機関はスターリングエンジン(実際には不明)ですが、中国の原子力潜水艦の隠密性は非常に低いことが知られており、本型もキロ型と同等かそれ以下の隠密性だろうと推測されます。とは言え、他国の技術を柔軟に取り入れてどんな進歩を遂げているか分かりません。想定以上の静粛性を持っている可能性もあるでしょう。

潜水能力「6」

最先端のスターリング・エンジンはスウェーデンが開発したもので、日本のそうりゅう型もスウェーデンのモデルをベースに開発しています。しかし、中国が独自に開発したスターリング・エンジンがどこまでの燃料効率性を実現しているかについては疑問が残り、潜航深度も300mを大幅に超えて来ることはないでしょう。

行動範囲「7」

潜水艦の中では比較的大型の艦であり、スターリング・エンジンを搭載していることから考えて行動範囲は比較的広いと推測されます。

戦闘能力「7」

魚雷や機雷のみではなく、対艦ミサイルや巡航ミサイルの運用能力もあり、戦闘力はかなり高いです。南シナ海や東シナ海など、広い範囲で様々な作戦行動を行う事が想定されており、ゴトランド型のような潜水艦に比べると幅広い作戦行動を行う事ができます。

拡張性(6)

中国の通常動力型は試行錯誤の最中であり、次から次へとマイナーチェンジを行いながら新しい艦を作っています。設計に改修余地があるかどうかはともかくとして、中国海軍としてはまだまだ本型を発展させたモデルと作っていく事が予想されます。

総評

実際に搭載されているAIP機関の性能や隠密性に関する情報が少なく、はっきりとした性能は推測する他ありません。中国の技術力からして、日本やドイツに比するような通常動力型潜水艦とまでは行かないでしょうが、中国の潜水艦が今後はどんどん性能を上げて来ることは間違いないでしょう。

「キロ型」 - ロシア(ソ連)

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(米国海軍が撮影したキロ型)

やや旧式化してはいるものの、キロ型は近代的な潜水艦の中では最も多く建造されたベストセラーとも言える潜水艦です。その隠密性は米海軍でも驚嘆したほどで、現代の進歩したソナーであっても電池駆動のキロ型を発見するのは困難でしょう。しかし、AIP機関と搭載していないため潜水能力が極めて低く、運用方法は限られてしまいます。

隠密性「7」

キロ型の隠密性は極めて高く、一世代前の潜水艦の中ではトップクラスの隠密性を誇っていると言って良いでしょう。ただ、これは現在までの研究や実績を踏まえての高い評価であり、電池駆動であれば最新技術を使っている(隠密性が同点の)スコルペヌ型の方が高い隠密性を発揮する事もあるでしょう。

潜水能力「4」

最大潜行深度が300mと言うのは良いのですが、AIP機関がないので電池が無くなったらシュノーケル(排気と吸気を行う装置)を海面に出して吸排気を行う必要があります。これは被発見確率を大幅に上昇させてしまいます。航空機の赤外線探知装置などで容易に発見されるでしょう。潜水能力はあまり高くないと言う他ありません。

行動範囲「8」

そうりゅう型ほどではないもののかなりの大型艦であり、広大な行動範囲を誇っています。純粋な行動範囲で言えばそうりゅう型よりやや狭い程度と推測されますが、AIP機関がないので度々潜望鏡深度まで浮上しなければならず、作戦行動を行うにはかなり大きな制限となるでしょう。

戦闘能力「8」

ロシアの潜水艦の例に漏れず戦闘能力は極めて高いです。対空・(一部では)対艦ミサイルの運用が可能であり、さらに速度200ノットを誇るシクヴァル魚雷を運用可能で、通常の魚雷が50ノット前後であることを踏まえれば圧倒的な攻撃力だといえるでしょう。

拡張性(3)

既に大幅に旧式化が進んでおり、将来性はあまりないといえます。とは言え、整備性も良く価格も安価であり、各種装備を近代化していけばある程度の長期使用には耐えられる優れた設計です。運用国によってはまだまだ活躍する機械があるでしょう。

総評

AIP機関のない旧式艦ではありますが、優れた設計と隠密性に加え、高い兵器運用能力も合わせればまだまだ使い道の多い潜水艦だということが出来ます。また、高い隠密性を上手く生かせば、原潜や空母攻撃なども十分に行うことが出来ることでしょう。

「コリンズ型」 - オーストラリア

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(米国海軍が撮影したコリンズ型)

次期潜水艦更新問題で揺れに揺れたコリンズ型です。失敗作と言われている潜水艦ではありますが、度重なる改修を行うことである程度のレベルには達しました。特に南シナ海とオーストラリアを往復して作戦行動を行うという運用目的上、広大な作戦範囲が必要であり、その一点に関して言えば非常に優秀な潜水艦だということが出来ます。

隠密性「6」

電池駆動でも騒音が凄いと言われていたコリンズ型ですが、改修を行ってかなりの隠密性を担保できるレベルにはなっているようです。ただし、根本的な問題は解決されておらず、メンテナンスにかかるコストは膨大です。

潜水能力「5」

技術的にも予算的にもAIP機関を搭載する余裕がなく、キロ型と同じく定期的にシュノーケルを出して航行する必要があります。ただ、それでも可能な限り艦内に排気を圧縮してシュノーケルの露出時間を短くしているので、基本設計の古いキロ型と比べると僅かにマシと言えるようです。

行動範囲「9」

キロ型やそうりゅう型に近い大型艦であり、南シナ海や太平洋で活動できるような広い行動範囲を第一に考えて設計されており、行動範囲は非常に広いです。キロ型よりは燃費が良いので広い範囲で活動でき、AIP機関が無い分そうりゅう型に比べると行動範囲が狭いです。

戦闘能力「8」

兵器搭載ではそうりゅう型より優れており、魚雷や対艦ミサイルに加え、巡航ミサイルの運用も可能です。豪州の運用目的上どうしても必要な装備とはいえませんが、幅広い目標に対して攻撃が可能になります。

拡張性(1)

艦内各所で不具合が発生しており、国内での建造も完全に取り止めになってしまいました。以降は他国の潜水艦をライセンス運用する形になるので豪州造船技術の発展などは期待できず、コリンズ型の拡張余地は無いと言って良いでしょう。

総評

豪州の特殊な事情に沿った特殊な潜水艦であり、高い作戦行動能力があります。しかし、潜水艦としての基本性能と言う面でみるとどうしても見劣りする艦であり、旧式とは言え同じような運用目的で運用可能なキロ型と同等の能力になってしまいました。かと言って、米国と同盟している豪州がキロ型やラーダ型を買うわけには行きません。日本のそうりゅう型に白羽の矢が立つのも当然といえますね。

総評

潜水艦と言うのは、何でも高性能であれば良いというわけではありません。いくら高性能でもバルト海の防衛にそうりゅう型はオーバースペックですし、逆に日本の防衛に212型では作戦範囲が狭すぎます。

こう言った事情から、ゴトランド型の様な局地防衛の潜水艦が生まれたり、扱いやすいスコルペヌ型などが誕生しています。また、西側諸国と敵対するロシアや中国の潜水艦は幅広い作戦行動能力が必要になっており、キロ型や039A型の戦闘能力は高い水準を保っています。

豪州も広い作戦範囲を持つ潜水艦を必要としていましたが、国内の技術力がそれに対応できず、コリンズ型は今ひとつ物足りない潜水艦となってしまいました。

一つだけ言えるのは、全ての潜水艦が一長一短であるということです。どれかが全てにおいて優れているということはなく、それぞれに得意分野があります。今回取り上げた5種の潜水艦は、それが特に顕著に現れていたと言えるかも知れません。