「歯と虫歯」:消化を助ける最初の器官、虫歯菌とどう戦う?-消化器官のしくみ(1)

どちらにせよ、歯が傷んだ場合には何らかの異常があると言えます。顎から伸びる末梢神経が反応すれば痛むので、「痛み」=「虫歯」と言うわけではないのですが、どこかの歯がピンポイントに痛いと言う場合には虫歯の可能性が高いでしょう。

この歯髄には顎から伸びる神経と血管が通っており、神経は脳に、血管は心臓へと続いています。つまり、歯髄(神経)に達した虫歯菌は、血管などを通して脳や全身に広がることが出来るということになります。

死のリスクすらある虫歯の恐怖

所詮は虫歯。なんて、虫歯を馬鹿にする人もいるかもしれません。

しかし、虫歯と言うのは風邪とは違い、放っておいて治るものではありません。風邪が勝手に治るのは、体内の免疫細胞が細菌と戦いながら抗体を作り、体の中から排除してくれるからです。虫歯と呼ばれる前段階で、細菌が歯垢に隠れて少し歯を溶かしている程度であれば、唾液による再石灰化によって溶かされた歯を修復することが出来ますが、虫歯になってしまった状態ではそうは行きません。

そうして虫歯菌は口内から歯へと侵攻してきますが、歯には免疫細胞などはありません。つまり、歯で住処を作った虫歯菌は、歯が抜け落ちない限り決していなくなることはないのです。逆に言えば、抜け落ちる仕組みになっている歯は非常に賢いといえます。最高硬度の繋がった歯を修復しながら使うより、一つ一つ捨てられるようにしたほうが効率が良いですよね。

一応、ボロボロになった歯は自然に抜け落ちる様になっているので、そこまでいけば「治る」のですが、果たしてそれを治ったというのか疑問です。

さて、虫歯が歯髄に達した程度であればまだ何とかなります。歯を抜くか削れば、虫歯菌がそれ以上深くに入り込むことはありません。しかし、虫歯菌が一度神経に達してしまうと非常に厄介です。歯の中にいる内は、虫歯菌が移動できるスペースは限られていましたが、顎の神経に入り込んでしまえば暴れ放題です。

虫歯菌の侵攻を検知した細胞たちが非常事態状態になり、炎症反応を起こして何とか追いだそうとします。運が良ければ追い出すことも出来ますが、歯に拠点を持つ虫歯菌は次から次へと増えていきます。炎症が広がっていくと顎が腫れ、漫画やアニメにあるような「頬が腫れた」あの虫歯顔になります。ここまで来るとかなりマズいです。

ここまで来ると、虫歯ではなく「感染症」との戦いです。

感染症が悪化すれば脳や心臓に達し、機能不全を起こせば死に至ります。

その前に、感染症の原因となった歯が抜けるか、抜ける前段階として歯の根が溶け、神経部分が塞がって虫歯菌の増援を防げる様になっていれば良いのですが、そうなっていないとなかなか治りません。

虫歯が痛み、腫れ始めたらもはや抜き差しなら無い状態です。
歯は抜くことになるでしょうが、すぐに病院に行きましょう。

唾液との関わり

本記事の中でも、あちこちに唾液が歯を助けているような説明がありましたが、唾液というのは歯と密接な関わり合いがあリます。

唾液と言えば、食べ物を飲み込みやすくするための物質のように思われがちですが、実は虫歯を防ぎつつ、歯を修復する機能も持っているのです。

虫歯を防ぐだけではなく口内細菌に対する殺菌能力も持っており、食事と言う面だけでなく、免疫機構としても非常に重要な働きを持っているのです。そんな唾液について、次回の記事でご説明していきたいと思います。

 

消化器官のしくみ(2):唾液

消化器官のしくみシリーズ