「食道と咽(喉)」:何故食べ物が詰まるのか?気管と繋がっている理由とは?-消化器官のしくみ(3)

口で噛み砕かれた食べ物は、唾液に混ぜられ食道に流し込まれます。ところで、食道と言うのはただ食べ物が通るだけの管と言うだけなのでしょうか?水道管の様に中空の管が口から胃まで伸びているだけでしょうか?

それは違います。食道には筋肉があり、食べ物を能動的に胃に送ることが出来ます。にも関わらず、食べ物は喉や食道の途中で詰まることがあります。さらに、食道を通るのは食べ物だけですが、口と食道と繋ぐ「のど」の部分では吸った空気が通れる様になっています。

ちなみに、「のど」には、「喉」と「咽」で二つの字が当てられていますが、それぞれ意味が少し違います。知っているようで知らない「のど」や食道、一体どうなっているのでしょう。

消化器官のしくみシリーズ
「歯」-食べ物を噛み砕き、消化を助ける最初の器官
「唾液(腺)」-炭水化物の消化や口内殺菌を行う

 「のど」には二種類ある

「のど」は医学用語では、「咽喉(いんこう)」と呼ばれていますが、「咽」も「喉」も訓読みは「のど」です。実はこの二つ、指し示す場所が異なります。

「咽」は食べ物を飲み込む食道側の「のど」のことで、「喉」は空気が通る気管側の「のど」を示しています。つまり、「咽」は食べ物を飲み込む方で、「喉」は空気が通る喉仏付近や首筋を指す「のど」と言う事になります。

一般に使うのは「喉」の方だと思うのですが、これは喉が体の表側に付いているため、喉を指し示そうとすると必然的に喉を指してしまうからです。「咽」の場合は、鼻の奥から食道付近までの広い範囲を指しますが、どちらも「のど」であることには変わりありません。

ちなみに、風邪を引いた時に腫れ上がるのは「咽」なのですが、ノドが痛いと言いながら首筋を触れる時に触れているのは実は「喉」なのです。まあ、実際には「喉」で、「咽」の意味も含む使い方が一般的ということですね。口に出すと意味不明ですが。

ただし、風邪が原因で声が変わったなどという場合には、「喉」が腫れているということになります。この場合、のど飴などはあまり効果がありません。一応、炎症の部位によって「のど」の炎症に関する名称も違います。「咽頭炎」であれば、食道側なのでのど飴などの効果があり、声質は腫れ程度がよほど酷くない限り変わりません。「喉頭炎」であれば、気管付近の炎症なので声が変わります。

咽頭炎が深刻化して食道が使えなくなっても点滴で完治を待てるので大事に足りませんが、喉頭炎は呼吸不全や肺炎に繋がる恐れもあるため、非常に怖い症状だと言えます。

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上図で言う「Larynx」が喉頭部、「喉」であり、「Pharynx」が咽頭部、「咽」にあたります。

さて、ここまで二種類の「のど」について説明してきましたが、ここで主に扱うのは食道に繋がる「咽」です。「喉」の方は、呼吸器扱いなので消化器ではありません。正式には「咽頭」や「喉頭」と呼ぶので、「のど」と言うことはあまりありません。本記事で「のど」と言う場合は、咽頭・喉頭全体をさした咽喉部の事を指すと思って下さい。

空気は肺へ、食物は食道へ

 飲食にも空気を取り込むのも、同じ口を使います。

そして、鼻や耳も「のど」に繋がっていて、様々な場所から様々な物が流れこむようになっています。しかし、入ってきたものを同じ場所に送られては困ります。

酸素を肺でなければ取り込めませんし、水や食料は胃を通って腸へ送られなければなりません。そのための食物と空気の仕分け機構が「のど」には備わっているのです。喉頭蓋と呼ばれる喉の蓋は、空気を取り入れる時は開き、食べ物を飲む時は閉じるようになっています。

ちなみに、食べ物を飲み込む際に気管が閉じていれば良く、空気を吸う際に食道が開いていても問題ないので、気管側に蓋がある一方で、食堂側に蓋はついていません。そのせいで、食べ物の匂いがダイレクトに呼気に反映されてしまいます。

時折、飲み物が肺に入り咳き込んだりするので、「最初から別にしてくれ」と言いたいところですが、飲食時に肺を使った吸引や異物の吐き出しに「空気」は非常に有効な道具です。蕎麦やお茶を啜るのも、口に入った素早くゴミを吐き出すのも、気管と食道が「のど」で合流しているからこそ為せる技です。