有機物の炎の成分:炭素と水素が生み出す強い熱と鮮やかな光 -火のしくみ(2)

有機物の炎が持つ熱と光の働き

燃焼と言うのは酸化反応ですが、酸化反応では熱や光の形で大量のエネルギーを作ります。

熱は分子の運動量であり、分子が直接別の分子にぶつからなければ(熱伝導)伝わりませんが、熱で一度に伝わるエネルギーは膨大です。一方、光は電磁波として伝搬するので一瞬にして周囲に伝わりますが、光で一度に伝わるエネルギーは少量です。

とは言え、光はモノにぶつかると熱に変わりますし、モノに熱が貯まると光を発するのでそこまで大きな違いではないかもしれません。しかし、この二つの違いが炎の性質を大きく左右することになります。

燃焼反応が一気に「熱」に変わった場合、熱が素早く隣の物質に伝わっていくので燃焼反応も急激で周囲の気体も一気に膨張し、温度も高く、一種の爆発に変わっていきます。逆に「光」に変わった場合、広く穏やかに熱が伝わっていき、燃焼もゆっくりで目に見えるような炎となります。

有機物の燃焼反応は主に、「炭素系」の燃焼と「水素系」の燃焼に分けられますが、水素系は熱が多くて光が少ない炭素系は熱が少なくて光が多いと言う特徴があります。これがバラバラに起こることは稀ですが、木炭のように水素系化合物を意図的に減らした燃料を使うと穏やかに周囲を過熱する燃料が出来上がります。

木炭は暖房器具の燃料にも調理器具の燃料にも使われますが、熱は急激に伝わると意図しない形で失われてしまう事が多く、光を中心に穏やかに熱を伝える木炭の様な燃料は非常に効率的に熱を別のモノに伝えます。熱よりも光を発する燃料の方が、熱を効率よく別のモノに伝えると言うのは皮肉な話ですね。

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そして、水素の燃焼では光が殆ど出ない(無色)の炎を作るのに対して、炭素系の燃焼で発する光は低温では所謂「オレンジ」系の色であり、炎の色と言うのは炭素の燃焼で生まれている光だといえるのです。

ちなみに、木炭があまり光らないのは燃焼自体が極めてゆっくりと進んでいるからで、空気を送って燃焼を進めればそれに合わせてオレンジの光を発します。また、ガスのような水素を多く含む高エネルギーの燃料では、水素の燃焼による熱を貰った炭素がオレンジではなくエネルギー量の多い青い光を出すようになるので温度によって色が変わるのですね。

有機物の炎が炭素の光であり、水素や炭素の配分次第でその熱や光の性質が大きく異なってくると言うのは注目に値します。

有機物の炎が生み出す物質

前述の通りではありますが、炭素と水素を中心に燃焼が行われる有機物の燃料は、主に「二酸化炭素」や「水」を燃焼の際に生成します。しかし、考えるべきはそれ以外に作られる物質です。

二酸化炭素(CO2)は炭素に酸素が二つ結びついた物質ですが、火の熱量変化や他の混合物などによっては、完全な燃料が行われず(不完全燃焼)、一酸化炭素(CO)などが作られる事があります。

また、ガソリンのような不純物が多い混合燃料などではその傾向が強く、生成物ではありませんが炎で燃えきらなかった炭化水素がそのまま出てきてしまったり、燃焼環境によっては窒素まで混ざって燃えるので窒素酸化物などが生み出される事があります。場合によっては、燃料の中に硫黄が混じっており、硫黄酸化物などが炎から生成されることになります。

硫黄や窒素の酸化物は有機物の燃焼によって生み出されるものではありませんが、有機物の燃料にはそれ以外にも多くの物質が混ざっている事が多く、石油系燃料の燃焼に注意が必要です。

まとめ

有機物の炎と言うのは炭素が作り出す炎の色であり、低温ではオレンジ、高温では青い光です。水素の含有量によって生み出す熱量が変わり、素早く熱したい時と穏やかに効率よく温めたい時で別々の性質をもった燃料を使います。

ロウソク、ガス、石油、木炭。これらの燃料は全て有機物の燃料であり、人が扱う炎の中では最も扱いやすく身近な炎と言えますね。

 

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