多彩な驚きの種類
驚きは予想外の出来事が起こった場合に発生しますが、驚きを生む要因に合わせ、驚きにもいくつかの種類があります。心理学的な分類ではありませんし、一つの驚きで複数に分類される場合もありますが、大きく分けると以下の4つです。
- 感覚的な驚き
- 本能的な驚き
- 知性的な驚き
- 情動的な驚き
五感に訴える感覚刺激による感覚的な驚き
これは五感に対する突然の刺激による驚きです。
この驚きの場合、以前何度も経験し、その刺激の強度やタイミングを正確に予測していない限り高確率で発生します。
シュークリームにわさびが入っていたり、お風呂が熱湯だったり、大きな音がしたり、突然画面に恐怖映像が現れたり、これらの刺激に対する驚きは多少予想していた程度では防げません。
車が沢山通っていればクラクションぐらい鳴りそうですが、真横で鳴ったら間違いなく驚きます。また、辛いと思っていた物が辛いならまだしも、甘いと思っていた物がものすごく辛いと驚くでしょう。シャワーやお風呂の熱湯の場合、触感による刺激が他に比べてかなり強いこともあり、熱いと分かっていても驚くでしょう。
こうした感覚的な驚きは人間だけではなく殆どの生き物に備わっています。場合によっては、後述する生死に関わる本能的な驚きに繋がることもあり、生きていくためには必須の驚きだと言っても良いでしょう。
恐怖や不安につながる本能的な驚き
これは生死に関わるような重大な出来事に対する驚きです。
ボールが飛んできたり、車が猛スピードで目の前を通り過ぎたり、ナイフを突きつけられた場合の驚きがこれに当たります。五感に関わる感覚的な驚きに近い物がありますが、人間生活の中で植え付けられた「危険」を表すシグナル対して過敏に驚くというのが特徴です。
ナイフや拳銃を向けられた時に驚いて強い恐怖を覚えるのが良い例ですが、他にもゴキブリや蜂などを見て驚くのも本能的な驚きだといえるでしょう。視覚的・聴覚的な刺激としてはそれほど大きいものではないにも関わらず、こういった出来事に対する人の驚きは計り知れません。
また、銃声や叫び声などは、本能的な驚きでもありながら感覚的な驚きでもあり、驚きの強さとしてはかなり強いものになります。
好奇心や困惑を生む知性的な驚き
物事を理解して初めて発生し、知性のある人間だけに生まれる驚きです。
人は化学反応を起こして急に色が変わった事で驚いたり、本を読んで全く知らない知識に出会って驚いたり、時には突拍子もない閃きに対して驚くこともあります。これらは全て、その現象が「知らなかった新しい情報」として取り入られる事で驚きになります。
時にはその驚きを経て、困惑したり、好奇心に繋がったりする驚きでもあり、ある意味では人が成長していく上で必要不可欠な驚きとも言えるでしょう。
また、こう言った驚きは時には退屈を紛らわせ、生活に刺激を与える意味でも有意義な驚きです。
喜びや悲しみで心を動かす情動的な驚き
感情があるからこそ生まれる心の驚きです。
サプライズプレゼント貰って驚いたり、人が亡くなって驚いたり、告白されて驚く事があるのが人間です。
これらはある意味では知性的な驚きということも出来ますが、予測していたとしても、理解していたとしても、これらの出来事は精神的な影響力が強く、強い驚きを生むことが多いのです。
誕生日で誰かがプレゼントをくれるかもと思っていても、急に高価なアクセサリーを貰ったらどうしたって驚くでしょう。また、末期がんの人がすぐに亡くなるのが分かっていても人が死ぬという衝撃は大きく、驚きを持って受け止められるでしょう。
いわば、熱いと分かっているヤカンを触ってその予想外の熱さに驚く様に、出来事自体を予測出来ても、その場面に遭遇した自身の心の動きは予想できないということなのです。
驚きで印象が増幅される感情
もう一つ語って起きたいのが、驚きによって増幅される感情です。
プレゼントを用意しておくと言われてプレゼント貰うより、急に貰ったプレゼントの方がより嬉しく感じます。また、お化け屋敷で出てくる幽霊よりも、廊下に突然現れた白い人影の方がその恐怖は大きくなります。
人の感情は、「驚き」を経た方がより強く印象を残します。
これはある意味当然で、出来事による感情の落差が大きければ大きいほど残る印象も強いのです。
厳密には驚いたから印象が強くなったわけではないのですが、少なくともその人にとって驚くほどの出来事になったからこそ印象が強くなったと言えます。ある意味、驚きというのは出来事に対する印象の強さのバロメーターになるのですね。
心理学者の研究でも検証されていて、出来事自体は同じでも、驚きがあった場合の方が後々まで強い印象を残すことが分かっています。
恋人や大切な人に対するプレゼントにサプライズが好まれるのは、その出来事を記憶に残したいという思いの現れでもあるのかも知れませんね。
驚きが異質な理由
ここまで説明してきた「驚き」という心理状態ですが、他の心理状態に比べて何故異質なのか理解できたでしょうか?
それは、驚きと言うのが感情変化のプロセスの一過程に過ぎず、一瞬で消え去ってしまう心理状態であり、化学反応の触媒の様なものだからです。
触媒的な存在でありながらその影響力や重要性は計り知れず、尚且つ研究が進んでいない心理状態だというのです。
また、人の心理状態の中で「必ず一瞬で消えてしまう心理状態と言うのは驚きだけ」であり、他の心理状態に一瞬で消えるケースがあったとしても「必ずそうなる」というわけではありません。
「驚き」だけが瞬間的に生まれて消える事が前提の心の動きなのです。
また、人の心理状態の中には他の生物には無い物が多く、愛情や悲しみなどを持たない生き物も多いです。しかし、人と全く同じではないにしろ、この「驚き」だけは殆ど全ての生物が持っています。
ある意味では、「驚き」という反応は生物が生きる上で必須の反応なのです。
「驚き」という現象に関してはまだまだ研究が行われていないため、細かな学術的分類や厳密な定義が存在しないのですが、この記事を通して理解を深める事ができれば幸いです。