「石油はあと○○年取れる」は不正確? 言葉の裏にある計算式を解き明かす

アメリカのタイトオイル開発

意外に思う人もいるかもしれませんが、現在世界一の産油国はアメリカなのです。

アメリカの原油産出量はこの10年ほどで急伸。それを支えたのは、シェールと呼ばれる堆積岩の中から取れるタイトガスと呼ばれる原油の開発です。

アメリカのタイトガス産地のひとつは、バッケン頁岩層と呼ばれる地層です。

バッケン頁岩層が発掘されたのは1952年のこと。実はそこに石油があることは当時からわかっていました。しかし当時の技術では採掘コストがかかりすぎ、たとえ掘っても採算が取れなかったのです。

発見されても採算がとれないので、埋蔵量の定義に照らし合わせるとこの段階ではプラスマイナスゼロとなります。

そこから時を経た2000年代後半になると、採掘技術の進歩によってタイトガス採掘コストが抑えられるようになりました。この頃になると利益を出す見込みが出てきたので、2006~7年を境に、アメリカの各地にある頁岩層で油田が作られ始めます。

バッケン頁岩が蓄えていた石油は、ここでようやく埋蔵量としてカウントされます

2011年時点での計算によれば、そのその量はおよそ20億バレル当時のアメリカの年間原油生産量のおよそ1年分に相当する量です。

バッケン頁岩の開発が始まった頃は、アメリカの原油生産量の伸びがまだ穏やかでした。年間生産量がこれまでと変わらず、埋蔵量がそれと同じだけ増えたということは、バッケン頁岩の蓄えた石油が埋蔵量にカウントされただけで可採年数がまる1年伸びたことになります。

これ以降アメリカでは各地でタイトオイルの開発が進められ、10年ほどで国内の埋蔵量はほぼ倍増します。これは当時日本でもシェールオイル革命として話題になり、タイトオイルはこのアメリカのエネルギー戦略の要となったのです。

2006年時点でアメリカの原油埋蔵量はおよそ210億バレル、年間採掘量はおよそ20億バレル。2017年時点での採掘量はおよそ34億バレルで、埋蔵量はおよそ391億バレル。

これをもとにして可採年数を計算すると、どちらもおよそ10年という結果になります。10年の可採年数が10年経ってもそのままという不思議な状況ですが、埋蔵量と採掘量の計算を当てはめると間違いではないのです。

まとめ

原油はあと○○年取れるという言葉も、最近は以前ほど聞かれなくなりました。

石油の生産量が増えていること、また代替エネルギーの開発が進んでいることが関係しているのはもちろんでしょう。しかしそれだけではなく、この言葉の裏には少し複雑な技術的、経済的概念が関係しており、シンプルな言い方ではその実態を見誤るという状況もあるように思われます。