VRの原理
奥行きのある映像を作り出すVRは視差を利用した立体映像技術です。原理としては左右の目に別々の映像を送る立体メガネと同じですが、VRでは二つの映像を二つのモニターで直接左右の目に投影します。
問題はこの映像をどうやって作るかです。答えは非常にシンプルで、2台のカメラを使い、右目で見る映像と左目で見る映像を別個に撮影するのです。
カメラ位置が少しずれると撮影された映像にも微妙なズレが生まれるもの。それを片目ずつで見ることで、現実の風景を見ているような奥行きが現れます。
360°動画の撮影も同じ理屈で行われます。
右目と左目に対応させたカメラ2個を1組として、それを環状あるいは球状に配置することで全方位を撮影します。映像を右目と左目で別々に見ることで、頭を動かせば映像内での向きも変わり、かつ視差効果で奥行きを感じられる映像ができるのです。
プロジェクションマッピングについて
プロジェクションマッピングは「浮かび上がる」ホログラムとも「奥行きのある」VRとも少し違いますが、立体物と映像を組み合わせた手法として活躍の場を広げています。
プロジェクションマッピングの要点は、出力する映像の加工です。
平面や曲面がさまざまに組み合わさった建築物に違和感なく投影するため、映像を適度に歪ませるのがその基本。技法自体は以前からあるものですが、活用の幅が広がったのは比較的最近のこと。
映像制作にコンピューターが普及し、加え巨大な面に投影できるプロジェクターが登場したことがその背景にあります。
さっぽろ雪まつりのプロジェクションマッピングは毎年話題になっています。
姫路城や奈良の川原寺でもこれを活用したイベントが開催されるなど、文化財の振興にも一役買っています。
まとめ
立体的な映像を作り出す技術には、本当に様々なものがあり「ホログラム」「VR」「プロジェクションマッピング」と言っても、時と場合によって別の技術を指すことが少なくありません。
映像というのは本質的には平面です。それを人間が立体的に感じてしまうのは突き詰めると「勘違い」なのですが、勘違いのさせ方にも色々あるということです。それを上手に使って動画を作ると、今までにない魅力的なコンテンツが生まれます。
動画という媒体は19世紀に誕生し、20世紀を通じて芸術や産業の中で確たる地位を得てきました。21世紀の映像は技術が進歩するにつれて銀幕の中だけにとどまらず、奥行きや空間といった次元にも進出してきているのです。
2020年代以降はイベントや広報だけでなく、産業分野への実用的な応用も進んできています。
2022年、医療用画像処理で組織や臓器の構造を立体的に表示できるTrue3DホログラムPreOPというデバイスが日本で医療機器認証を受けました。
これはMRIやエコー映像など従来の画像診断で得られた画像から臓器を3D映像で再現し、それをホログラム表示するというもの。手術のシミュレーションに活用することで、治療のリスク軽減につながることが期待されています。
他にもリモートワークの普及とともに注目を集めたテレプレゼンス技術に3Dホログラムを応用する企業も出てきています。
テレプレゼンスとは、ロボットや映像を使って、遠くにいる人の存在感をその場に再現するというもの。
カナダに拠点を置くARHT Mediaという企業は、リアルタイム映像を配信できるホログラムディスプレイを開発。販促やミーティング、リモート対談などのソリューションを提供しています。