木炭の活用
燃料
木炭の活用法と聞いて、すぐに思いつく用途は暖房や調理のための燃料でしょう。
日本では江戸時代まで木炭は高級品で、一般家庭はおもに薪を使っていました
それが広く普及したのは明治時代に入ってから。木炭の需要拡大、そして生産地の増加にともなって一般家庭に広まり、それから20世紀半ばまで暖房に調理にと活躍していました。
製鉄
木炭は燃えるとき、空気中の酸素だけでなく、周辺の物質からも酸素を奪って取り込みます。このように物質から酸素を奪う性質をもつものは還元剤と呼ばれ、アルミの精錬や髪のパーマ剤などに応用されています。
還元剤は鉄を作るにも欠かせない材料です。古代から製鉄には、木炭が還元剤として使われてきました。
鉄を作ることの根本は、大ざっぱに言えば鉄原子と酸素原子を切り離すことです。自然に存在する鉄鉱石は酸素と結びついた状態で、いわばサビた鉄のかたまり。丈夫で輝く鉄を作るには、鉄原子と結びついた酸素を取り除く必要があるのです。
古代の製鉄では、そのために木炭が使われました。鉄鉱石の塊を木炭で加熱することで還元反応を起こし、鉄原子と結びついた酸素を木炭に移動させることで、サビのない輝く鉄が作られていたのです。
現代の製鉄では木炭に代わって、石炭から作られるコークスが還元剤として使われています。
活性炭
臭いや汚れを吸着するという木炭の性質は、古代から知られていました。紀元前1500年のエジプトの記録からは、膿んだ傷の消臭に木炭が使われていたことがわかっています。
さらに紀元前400年の記録によれば、木炭で水をろ過できることが当時すでに知られており、船旅の時に水の容器に木炭を入れてきれいに保っていたといいます。
活性炭は、木炭のこの性質を強化したもの。
木炭には表面に細かい穴がたくさん空いており、細かい有機物を吸着して取り除きます。
炭焼きの段階で薬品を加えるなどの特殊な工程を踏むと、普通の炭よりもさらに細かい微細孔をたくさん備えた活性炭ができあがります。
活性炭の微細孔は木炭よりもさらに深く、さらに内部で枝分かれして網の目のようになっています。これによって、ちょうど人間の脳のしわのように、コンパクトなまま広い表面積を確保できます。
表面積が広ければそれだけ多くの分子を吸着できるので、小さな炭でも強力な効果を発揮するというわけなのです。今の日本の家庭ではもっぱらこの形で木炭が活用されていますね。
まとめ
国際エネルギー機関が発表した世界エネルギー展望2020年版では、新型コロナウイルスの影響で石油需要が下がる一方、電力需要に発電量が左右されない再生可能エネルギーのシェアが上がっていると報告されています。
こうした事実から、石油を当たり前に使ってきた時代が変化しつつあると見るむきもあります。
かつて薪が木炭に、そして木炭が石油に移り変わっていったように、ゆくゆくは石油にも変化の時が来るのかもしれません。