セノリティクス薬の研究アプローチ
すでに人間を対象にした治験が行われている例があるほか、製品開発にまで着手している企業がすでに存在します。
メイヨー・クリニックの治験
メイヨー・クリニックは歴代大統領や国外のVIPも治療を受けたことで知られる、アメリカでもトップクラスの総合病院。
ウェイクフォレスト大学やテキサス大学と共同で、肺線維症の患者を対象に老化細胞除去の実現可能性と安全性についての研究が実施されています。研究では14人を対象に3ヶ月間処置を行い、その間健康状態および歩行速度などの身体能力を測定し続けました。
2019年には、身体機能に有意な改善が見られたという結果が発表されています。
安全性の確認が目的の治験であったため、参加者はごく少数で、まだ踏み込んだ試験ではありません。ただ、これによって安全性が確認されたおかげでさらなる調査への道が開かれたことは大きな意味を持つでしょう。
UNITY Biotechnology
加齢に関連した病気の進行を防ぎ、健康を回復するというビジョンを掲げ、セノリティック薬の開発を進める企業。
2020年時点で、加齢性の眼病と変形性関節症の治療薬の試験を行っています。眼病の薬については人間を対象にした治験を実施中で、どちらも2020年下半期に結果が出る予定。
Senolytic Therapeutic
2017年創業、本拠はスペインのバルセロナにある医療ベンチャー企業。
主に繊維膿疱症など、加齢に関連する疾患のための新薬開発にフォーカスしています。老化細胞を除去するアプローチについての研究論文を発表するなど、その方面の研究開発を積極的に推進中。
2020年中に腎繊維症の薬の研究を進め、2021年に最初の治験を行うことを目標に開発が進んでいます。2019年にはEITヘッドスタートファンディングプログラムから5万ユーロ、2020年にはスペイン財務省から25万ユーロの資金提供を受けるなど、その成果が期待されている企業です。
まとめ
セノリティクス薬はまだまだ新しい医薬品です。
そもそも、老化細胞と加齢による疾患との関連性についてもまだまだわかっていないことがある研究途上のトピック。医薬品としての研究開発が進んでいるとはいえ、確実に効果があるか、また副作用はあるのかどうか、まだ確信を持って言える段階ではないと言えます。
歳を重ねても元気でいられるというのは誰もが望むこと。過度な期待は禁物でも、それが実現する可能性が見えてきたというのは、とても素晴らしいことと言えるでしょう。