どんな船舶も見逃さない、恐るべき機雷の探知技術-自衛隊の機雷掃海(前編)

自衛隊の機雷掃海部隊を海外へ送るべきかどうか、近年激しい議論が繰り広げられています。しかし、機雷掃海がどんなものかという事についてはあまり触れられていません。

一般的な認識で言えば、機雷掃海というと海に隠されている機雷を除去する作業、程度の認識でしょう。では、それは一体どんな任務で、どれほどの危険が伴う作業なのでしょうか?さらに、機雷掃海には専用の艦艇が必要ですが、何故専用でなければならないのでしょう?

そんな疑問について答えていきたいと思います。

機雷にはどんなものがある?設置方式による分類

機雷とは、海中や海底、時には海面に浮かべられ、近づいてきた船舶に反応して爆発する海の地雷とも言える兵器です。

それを除去する機雷掃海については、実は自衛隊の機雷掃海隊群のウェブサイトで簡潔に説明しています。おそらく、分かる人はこれだけで機雷掃海というものがどんなものか十分理解できるでしょう。

しかし、大部分の一般人は良く分からないか、何となく分かったつもりになるのが精一杯かと思います。ですので、まずは簡潔に「機雷とは何か」から説明させて頂きたいと思います。

機雷には、大きく分けて「爆発(作動)方式」の違いと、「設置(敷設)方式」の違いで大まかに分けられます。まず、設置方式の違いについては一目瞭然なので、設置方式の違いからご説明しましょう。

下はWikipediaから引用(PD)した図になりますが、赤色の物体が機雷です。

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これだけで、なんだか色々あるのが分かります。

何となくわかると思いますが、青いAの領域が海で、茶色のBの領域が海底です。SSと言うのは潜水艦ですね。ここまでは良いのですが、何やら機雷らしき赤い物体が海面付近にあったり、海底付近から伸びていたり、そのまま地面にくっついていたりします。

さて、これらは設置方式による分類となりますが、以下のようになります。

①②:浮遊機雷
③:係維機雷
④⑥⑦:単係止機雷
⑤:沈底機雷

浮遊機雷と呼ばれる1と2は、そのまま海面に浮いている機雷ということになります。多くの場合は海面から見えますが、監視員がしっかり監視していないと見落とします。しかも、これは風や波に揺られてふらふら移動するため、放っておけば味方の領海に流れ着きかねません。一種の無差別攻撃機雷とも言えます。そのため、多くの場合は作戦中に一時的にばら撒いて(一時間程度で爆発しなくなる)使う機雷になります。

係維機雷と呼ばれる3は、海底におもりを落としてそこからワイヤーで海面付近まで浮かべる機雷です。最も一般的な機雷の種類です。海流の影響で場所が移動しないので、敵の港付近に大量に設置して動きを封じたりするのに使われます。海面付近に機雷があるので敵の船舶に確実にダメージを与えられる上に、様々な作動方式を利用できる便利な敷設方式です。

短係止機雷と呼ばれる467に関しては、海底におもりを落としてワイヤーで海底付近に留めておく機雷です。海面付近に置かれる係維機雷より見つけにくく、海の深くを航行する潜水艦をターゲットとすることもあります。ターゲットにも寄りますが、海面を通る船舶を狙うにはセンサーや爆薬が高性能でなければなりません。6と7は魚雷みたいなのが発射されてますが、艦艇を探知すると爆発物を射出して指定深度爆発したり追跡したりするような新型機雷も存在します。

沈底機雷と呼ばれる5は、海底にそのまま落とすだけの機雷です。設置が簡単で非常に見つけにくい機雷ですが、水深が深くない海でしか使えない上に、落ちる場所によって威力や敵船の探知能力が変わります。太平洋戦争後期に日本中にばらまかれた機雷がこのタイプであり、旧日本軍・海保・自衛隊の掃海部隊らが犠牲者を出しながらも今日まで掃海活動を続けています。

作動方式で機雷を分類、接触・磁気・音・水圧で船を探知

機雷や地雷といえば、触ったら爆発すると言うイメージですが、第二次世界大戦から近づいただけで爆発する方式の機雷が作られるようになりました。

一般に、ぶつかったら爆破するのが触発機雷、近づいただけで爆発するのが感応機雷、遠隔操作で爆発させる管制機雷というのもがあります。

触発機雷は作るのが簡単で安価で大量に設置できるのが強みですが、 「機雷に触れないと爆発しない」というのはかなり大きな制限で、今では殆ど見られません。管制機雷の場合、味方を通して敵だけを爆破すると言う使い方が出来るので便利ですが、管制室まで機雷を管制するためのワイヤーを引かなければいけないので、主に自身の港に敵が入り込まないように使う場合が多いです。

問題は感応機雷。 近づいたら爆発する方式と言っても、どうやって船舶が近づいたのを察知するかと言う部分で非常に多彩な方式が存在しています。