どんな船舶も見逃さない、恐るべき機雷の探知技術-自衛隊の機雷掃海(前編)

水の中では電波が使えませんので、レーダーで敵の居場所を探知する事はできません。しかし、音・水圧・磁気・電位の変化で探知することはできます。

音響機雷

音響機雷に関しては、潜水艦の特集でも触れたように、スクリューやエンジンの音が水を通って聞こえてくるので、機雷でそれを探知して、自分の真上から聞こえてきた爆発するように設置できます。これに対抗するためには、静かに航行する他ありません。

最近では、その音が何の音かまで把握して爆発するタイプの機雷も出現しています。音響追跡装置との相性も良く、音を検知したらその音を追うように機雷が発射され、遠くまで音を追っていって目標を破壊します。

水圧機雷

次に水圧機雷ですが、船が海面を通ったり、スクシューを回せばそれによって水が押し出され、水圧が僅かながら変化します。この変化を検知して爆発するような設定も可能です。大きなクジラを探知して爆発するようでも困るので、そこまで感度は高くありません。小さな船舶は素通り出来ますし、大きな船舶もゆっくりと移動すれば何とかやり過ごせます。

船が動く時、前方の水は船に押し出されるように掻き分けられ、後方の水は船を追うように集まってきます。これによって水の流れが生まれ、水圧を変化させてしまいます。小型艇は小さいので変化が小さく、潜水艦はその魚のような形状から水を不用意にかき乱さない様になっています。とは言え、これも音と同様に消しにくい船の痕跡の一つでしょう。

磁気機雷

磁気の僅かな乱れを検知して爆発するのですが、船に積んでいる磁石に反応するわけではありません。船そのものが帯びる磁力に反応します。船舶の大半が金属製です。そして、金属というのは磁石を当てると多かれ少なかれ磁気を帯びます。そして、方位磁石で方位が分かるように、地球全体には磁界が発生している(地磁気)ので一種の巨大な磁石と言えます。つまり、地球上を航行する金属製の船は全て地磁気の影響で僅かな磁気を帯びてしまっているのです。

この磁気方式は強力で、小型船舶であれば木造で作れば良いのですが、大型船舶は全て金属製です。すると、一見回避不能な機雷の様に思えます。それでも、消磁と言って「舷外電路」や「消磁装置」などをつかって、地磁気とは違う磁気を浴びせて磁性を弱めたり、目立たくすることが出来ます。完全に消えるわけではないのですが、磁気の乱れを抑制することで発見されにくくなりました。

UEP機雷

また、電位の変化を利用したUEP機雷というのも最近作られるようになっています。
これは、船体の錆止め素材が航行時に少しずつ剥がれ落ち、スクリューに集まって電位が発生してしまう現象[UEP:Underwater-Electric-Potential]を利用しています。

何やらわかりにくいですが、船舶の大半は錆止め素材に「亜鉛」が使われており、亜鉛というのは電池にも使われるほど電流を生みやすい(自由電子を持っている)金属です。その亜鉛は水によって削られていくので、水が勢い良く当たる船体前方からどんどん剥がれ落ちていきます。すると、船体前方の電子が減り、船体後方のスクリュー付近に集まるということになります。スクリューの軸は、船体の中心に向かってまっすぐ伸びており、それも金属製です。

つまり、電気を持った亜鉛が前から後ろに移動することで船体前方と後方で電位差が生じ、シャフト通して微弱な電流が流れてしまうのです。電流が流れると電磁波が生じるので、それを探知して機雷は爆発します。電磁波は遠くまで伝わらないものの、最新型潜水艦は静かで、水圧変化もわずかで、消磁も徹底しています。そんな潜水艦を発見して破壊するには、こう言った方式も必要になってくるのですね。

これだけ種類のある方式ですが、普通は複数の方式を組み合わせて船舶を探知して破壊する様になっています。様々な方式を組み合わせることで、確実に見つけるというのもありますが、機雷掃海の方法にはダミーを使うと言うやり方もあり、わざと音をだす機械や磁気を乱す機械などが存在しています。

そう言ったダミーにだまされないようにするために、総合的に判断するために複数の探知方式を使っていると言う面もあるようです。

機雷の種類に応じた掃海

機雷がこれだけ多彩で、しかも様々な種類があるのに対し、機雷掃海は機雷が沢山あるエリアに入っていき、機雷に破壊されないように気をつけながら掃海を行う事になります。

その任務は常に危険と隣り合わせで、高い練度が必要とされています。

後編では、本格的に機雷掃海の方法についてご説明していきます。

 

【後編へ続く】

 

◯参考URL 
自衛隊 機雷掃海隊群 ( http://www.mod.go.jp/msdf/mf/index.html )
DAVIS ( http://www.davis-eng.com/asg.html )