除湿と乾燥と水蒸気:除湿機はどのようにして空気中の水分を集めているのか?

乾燥剤を利用したデシカント方式

乾燥剤を利用したデシカント方式と言うのは、コンプレッサー方式より理屈はシンプルです。

乾燥剤に使われている物質は、多くの場合多孔性構造・細孔性結晶を持ちます。要は、乾燥剤というのは水分子を蓄える事が出来る孔(穴)が沢山空いている物質です。一度水分子がこの孔の中に入ってしまったら、そう簡単には出られません。

大量に吸収できるような代物ではないですが、空気中の水分を容赦なく吸っていくので乾燥剤としては優秀です。しかし、沢山水分を吸っていくとすぐに吸湿の限界が訪れます。除湿は30分までとかだと困るので、なんとかして乾燥剤が吸い込んだ水分を取り除いて乾燥剤を再利用する必要があります

乾燥剤が吸った水分を取り出すのは難しそうに思われますが、結構簡単です。温めれば水分は勝手に出ていきます。なので、吸い込んだ空気を乾燥剤で吸湿したら、乾燥剤を温めて中の水分を貯水タンクに移せば良いのです。

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デシカント法式の除湿機では、乾燥剤をくるくる回して片側で水分を吸収し、もう片側を温めて水分を抜いています。

水分を抜く際に結露させていますが、温めた空気に含まれている水分にとっては室温でも十分冷たくて結露するのです。

二つの方式のポイント

コンプレッサー方式もデシカント方式も、最終的に「結露させて水を出す」という点では共通しています。しかし、室温の空気を冷やして結露させるか、空気中の水分を乾燥剤で集めてから温めて結露させるかという点でこの二つは大きく異なっています。

どちらも取り込んでいる空気は部屋の空気であり、取り込む空気に含まれる水分量も温度も同じはずです。

この方式の違いを理解するためのポイントは、部屋の水分を冷やして結露させたか集めて結露させたかという点にあります。

コンプレッサー方式では室温をいきなり冷やしていますので、水分量はそのままで温度を下げることで結露させています。一方、デシカント方式では乾燥剤を温めた温風を室温まで冷やした際に結露させていますが、結露時の温度は最初と変わっていません。ただ、含まれている水分の量は違います。デシカント方式は空気中に含まれる水分量を乾燥剤を経由することで増やし、室温に戻した時に余った分を結露させることで除湿しています。

さて、コンプレッサー方式が温度変化を利用し、デシカント方式が水分量を変化させているという点はこれで理解できたかと思います。

除湿というのは、結局のところ「温度」か「水分量」の変化に集約されていて、それさえコントロールできれば除湿機として機能します。

大掛かりな除湿機を使わなくても、お菓子に付いている乾燥剤を大量に集めて扇風機に取り付け、一定時間おきに換気扇を掛けながらフライパンで乾燥剤を温めるというのを繰り返せば除湿は可能(蒸発した水分は換気扇から外へ行く)です。

また、冷凍庫の保冷剤を部屋に置くと結露が起こるのを利用して、結露したらタオルで拭いて、絞った水は捨てるを繰り返すことでも除湿は出来ます。

まあ、普通の除湿機を使った方が遥かに早い事は言うまでもありませんが、理屈がわかれば除湿というのも意外に単純な原理で行われていることが分かるのではないでしょうか。

近年では猛暑対策の一環として、冷房のエネルギー効率を上げるために乾燥剤を活用する試みが行われています。

従来のエアコンは空気の冷却と除湿を行うことで屋内を涼しく快適に保ってくれます。しかしエアコンの構造的に、除湿を行うには水蒸気が水になるまで冷やさないといけません。設定温度以上に冷やさないと除湿ができないので、実は効率が悪いのです。

そこで乾燥剤の出番。

フロリダに拠点を置くブルー・フロンティアという企業は、強力な乾燥剤を組み込んだ効率的な冷却テクノロジーを作り上げました。効率の悪かった除湿作業を乾燥剤に受け持たせることで、従来のエアコンと比べて最大80%の省エネにつながるといわれています。

年々増していく夏の暑さ。快適に過ごすためには、乾燥剤の重要性が一層増していくのかもしれませんね。