イーロン・マスクとは何者なのか?(前編):PaypalとスペースXとテスラ・モーターズを作った天才起業家の凄さ

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イーロン・マスク氏という起業家をご存知でしょうか? 既にあらゆるメディアで露出している有名人なので、殆どの人が知っているかもしれません。米国で次々に巨大企業を起業した人物で、米国では知らない人はまずいません。しかし、彼の起業した企業は日本人にとって馴染みの薄いものが多く、日本人が良く見る機会のあるものは電子決済サービスの「PayPal」ぐらいで、打ち上げロケット開発の「スペースX」や電気自動車メーカーの「テスラ・モーターズ」は知らない人もいるでしょう。

もちろん、これらは頻繁にニュースを見る人や経済界に興味のある人なら必ず目にする企業であり、それに合わせてイーロン・マスク氏という名前も聞くはずです。今はまだ「Appleのスティーブ・ジョブズ」程の知名度はありませんが、知らないと恥ずかしいと思われる程の有名人になるのは時間の問題でしょう。そこで、イーロン・マスク氏という起業家が一体何をした人物なのか、そしてどれほど凄い人物なのかについて、彼が起こした企業についての説明も交えながら説明していきましょう。

イーロン・マスク氏の経歴

1601271(イーロン・マスク氏_Forbes)

イーロン・マスク氏が起業した会社について詳しく説明する前に、PayPal設立までのイーロン・マスク氏の経歴について見ていきましょう。

イーロン・マスク氏は1971年に南アフリカ共和国の生まれです。アメリカの起業家ですがアメリカ人ではありません。そして注目するべきは南アフリカ共和国というお国柄。

アフリカという名前を聞くと黒人の国というイメージがありますが、南アフリカ共和国というのは喜望峰のあるケープタウンがあるアフリカ南端の国です。そして、その立地上南アフリカ共和国は大航海時代からヨーロッパからの貿易船の拠点になりました。つまり、白人が大量に入り込んで植民地にした国なのです。

二度に渡る世界大戦でも大きな被害を受けず、周囲の植民地が独立する中でも南アフリカ共和国は白人が黒人を差別して従わせる白人社会が続きます。この人種差別政策は、なんとイーロン・マスク氏が大人になる1990年代まで続いていました。白人社会を守るための徴兵制なども残っており、ヨーロッパやアメリカと比べると文化的にも社会的にもやや遅れた国だったのです。

幼い頃からインターネットやコンピューターを扱い、12歳でプログラミングを覚えてBlaster(リンク先でプレイ可)というゲームソフトをコンピューター雑誌に500ドルで販売するほどの才能と先見性を持っていたイーロン・マスク氏は、この古い社会体制の南アフリカ共和国で生活していくことに疑問を覚えアメリカに移住します。

アメリカの大学に進学したイーロン・マスク氏は、ここでコンピューター関係の学位を取るのかと思いきや、なんと「物理学」と「経済学」の学位を取ります。その後、本人はネットスケープ社という当時かなり勢いのあったソフトウェア企業に就職しようと応募しますが、ソフトウェア関係の実績が乏しいために断られてしまいます。

その後、スタンフォード大学院に進んだ24歳のイーロン・マスク氏でしたが、起業するために二日で休学(結果的に退学)し、父親から2万8000ドルの支援を受けて弟と共にZip2というインターネットサービスの企業を設立します。

Zip2というのは新聞社などの情報コンテンツをインターネットで配信するためのサービスを行っていた会社で、ニューヨーク・タイムズやシカゴ・トリビューンと言った米国で有名な新聞社と契約して事業を拡大していきました。Zip2は当時のコンピューター販売業の大手だったCompaqに買収され、Zip2のトップにはCompaqから派遣されてきたベテラン経営者が就くことになります。

イーロン・マスク氏はZip2を離れることになりますが、会社を売った際に3億ドルを優に超える資産を手に入れており、それを元手にPayPalの前進となるX.comを起業することになるのです。この時、イーロン・マスク氏は若干28歳でした。

世界最大のオンライン決済サービスにまで成長する「PayPal」

オンライン決済サービスを使った事がある人は分かるかもしれませんが、オンライン決済サービスというのはネット上の銀行にクレジットカード機能を足したようなサービスと言えるでしょう。

買い物をする時には、クレジットカード番号を入れる代わりにPayPalにログインするだけで支払いが完了します。代金はPayPalにお金を預けてあればそのまま支払われますし、預けていなければ連携しているクレジットカードや銀行口座から引き落とされるため、お店側にクレジットカード番号などを教える必要はありません。

また、個人と企業の間で行われる買い物だけではなく、個人間や企業間でのお金のやり取りなどにも使われています。送金に必要なのはメールアドレスだけで済むため、簡単にお金のやり取りが出来るようになるのがメリットです。

カードや小切手での支払いが浸透しているヨーロッパや米国では、カードや小切手でのお金のやり取りに変わるものとして個人と企業問わず幅広く使われています。世界最大のオークションサイト「eBay」を始めとするオンラインでの買い物ではもちろん、公共料金の支払いや友人間でのちょっとしたお金の貸し借りなどでも使われており、「PayPalで払う」という文化が当たり前のようになっているのです。

PayPalの2014年の報告によれば、PayPalは日本円を含めた190カ国26の通貨でサービスを提供し、年に40億回の取引があり、2350億ドル分のお金を動かしているそうです。アクティブユーザーの数は1億7千万人を超え、開設されたアカウント数は更に多くなるでしょう。

数字が大きすぎてよく分かりませんが、世界中どこでも使える主要な通貨全てに対応しているオンライン決済サービスだと言っても過言ではありません。

イーロン・マスク氏はX.comでEメール決済サービスを開始し、ほぼ同時期に始まったオンライン送金サービスPayPalを運営していたConfinityと1999年に合併。当時、Confinity側はPayPalがこれほど大きなサービスなるとは予測していませんでしたが、イーロン・マスク氏はPayPalが未来の決済方法になると予見し、PayPal運営の中心に立ってサービスを拡張していきます。

そして、2002年にはネットオークションサイトeBayの取引の多くがPayPalを通じて行われるようになったため、eBayがPayPalを15億ドルで買収。この時、1億6000万相当のeBay株を手にすることになります。これがイーロン・マスク氏の32歳の時の出来事です。

ここまでで、24歳でZip2を設立、28歳でZip2を売却、すぐにX.comを設立してPayPalを開始、32歳でPayPalを売却。起業家のお手本とでも言うような経歴を辿りますが、ここからのイーロン・マスク氏は一流の起業家ですら驚くような企業を作っていきます。

 

後編へ続く