未成年の猟奇殺人、佐世保事件と過去の未成年殺人を比較する(後編)

京田辺警察官殺害事件

この事件は、本事件と同年代の16歳の女子高生による犯行だ。自分の父親である警察官の父親の首を、就寝中に手斧で斬り付け殺害した。
「女子高生が手斧で寝ている父親を斬りつけた」と言う点が、どこかのドラマやアニメのワンシーンを連想させるが、紛れも無い実話である。

この父親は長い間、女生徒の母親以外の女性と関係を持っており、その事実は母親も承知していた。そして、母親が父親の女性関係について娘である女生徒に相談したり、女生徒自身も父親のパソコンなどからその事実を確認できるような家庭環境であった。

殺害の動機として、「父親の女性関係に疑問があった」としていることから、父親の問題が原因となっている事は明らかだ。しかし、これは単なる怨恨による殺人とは言い切れない。

この女生徒は、「凶器はギロチンが良かった」と言う供述もしており、そこから猟奇的な嗜好を元から持っていたことが分かる。さらに、父親は警察官であり、女生徒に対して厳しいしつけを行っていた。にも関わらず、父親自身が倫理に反するような行動を取っており、それらの矛盾が女生徒の精神を蝕んでいったようだ。
父親の教育と行動により生まれた異様な家庭環境と、女生徒の猟奇的な嗜好が合わさって起きた事件と言える。

<共通点>

前述の様に、3つの事件全てにおいて、父親がキーパーソンとなっている。

佐世保事件の女生徒場合も、母親の死後すぐに父親が再婚していると言う点が、何らかの遠因になっている可能性を指摘されている。

女生徒自身は、「母親の死や父親の再婚自体は何も関係が無い」としているが、直接の原因にはなっていなくとも、他の例を見れば、「父親の行動が女生徒の精神のバランスを崩してしまう原因」となっている事は十分明らかであるように思える。

他の事件は全て少年による犯行であり、父親がキーパーソンとなっていた事件は少ない。むしろ、母親が原因になっているケースが殆どだ。子供達は、「同性の親を手本」とし、「異性の親を支え」としながら、成長していく傾向が強いと言われていて、これらの事件でもその傾向が見て取れる。

総括

バラバラ殺人に関しては、人体に対する興味・性癖、自己顕示欲。快楽殺人に関しては、殺人や暴力そのものに対する興味。加害者の性別に関しては、親の影響が重要なファクターとなっていることが推測できそうだ。

何がきっかけで異常とも言える精神状態・性癖を抱いてしまうのかははっきりしていないが、そのきっかけ自体は誰にでも経験のあるものと言える。小動物の死や解剖実験、友人達の喧嘩や小さないじめ、対人関係におけるちょっとした齟齬。始まりはどれも小さなもので、おそらく少年少女の精神状態に問題が無く、バランスがとれていれば、印象に残った経験として克服出来ていた筈のものだ。

小さなきっかけと、不安定な指導環境が重なった時、徐々に子供たちの精神は蝕まれていく。
教育環境と言えば学校を想像するかもしれないが、紛れも無く「教師より親」の方が子供に与える影響は大きい。一緒にいる時間も、その関わりの深さも段違いなのだ。

無論、親といえど万能ではなく、全ての未成年犯罪に関して責任があるとは言えない。
しかし、何らかの形で親の存在が子供の精神に関わっていることは疑い様が無く、凶悪事件であればこそ強い影響を受けていることが多いと言える。

異常行動は子供が助けを呼ぶ悲鳴であると表現されることがある。
まさしく、これはその最たるもので、日本全国に響き渡る非常に声の大きな悲鳴だといえるのではないだろうか。