世界大戦の頃であれば、戦艦が一番強くて、次に強いのが巡洋艦、一番弱いのが駆逐艦であり、フリゲートやコルベットは主力艦に数えられていませんでした。しかし、今では駆逐艦も巡洋艦もさほど能力に違いがなく、巡洋艦という名前が付いている船は「駆逐艦よりは沢山武装を積んでいる」だとか、「単に大きいから巡洋艦」だとか、「艦長のポスト的に駆逐艦はかっこ悪いから」と言う理由で巡洋艦と言う名称が残るだけとなっています。
巡洋艦や駆逐艦の定義に厳密な決まりはないので好きに呼べば良いのですが、少なくとも世界大戦の頃の感覚が全く当てはまらなくなっているのは間違いありません。
現に、昔は1万トン級の大型艦は巡洋艦に分類されていましたが、今では駆逐艦と言う分類にも関わらず1万トン級の大きさだったりします。ちなみに、昔の駆逐艦は3000トン未満の艦が殆どでした。
(巡洋艦_大淀)
(駆逐艦_あしがら [JMSDF])
排水量って?
船の仕様で出てくる排水量と言うのは基本的には重量と同義です。というのも、船が浮いているということは、「水から受ける浮力と重量が釣り合っている」ということであり、浮力は船が沈んだ際に掻き出された水の量と等しいので、「掻き出された水の量である排水量は重量である」こと言うことになります。
なんだかややこしいですが、「満杯のお風呂に入った際に溢れたお湯の分だけ自分に浮力が掛かっている」ので、もしそれで自分が浮いたら、「溢れたお湯の重さを量れば自分の体重がバレてしまう」ということです。同じ体積で比べた場合、人と水は殆ど似たような重さですので、肺に空気を入れたり出したりして少し体積を変えるだけで浮いたり沈んだりするのです。まあ、頭まで水に入れなければ正確な重量は量れないでしょうが、頭の体積は全体でみるとごく一部なので、大体はバレてしまうと思って良いでしょう。
ただし、潜水艦の場合は排水量の意味合いが少し異なります。潜水艦は海水を入れたり出したりして、浮いたり沈んだりするのですが、海水を入れるか入れないかで排水量(重さ)が変わってしまうのです。なので、水を入れた状態では潜水艦自体の正確な重さがわかりません。基準排水量を潜水艦自体の重さとし、水中排水量を潜水艦自体の大きさと考えるとすんなり理解できるでしょう。
しかし、船舶でわざわざ重量ではなく排水量としているのは、船舶にとっては「重量より浮力」の方が重要だからと言う事でもあります。というのも、船舶は基本的には荷物を運ぶための乗り物です。自身の重さよりも、「どれくらい運べるか」というのが、船の価値判断における重要な基準となります。
そして、重いものを運ぶには沢山の浮力が必要ということになり、沢山の浮力を得るためには(水を沢山掻き出すための)大きな船体が必要と言う事になるのです。そのため、排水量と言うのは重量でもある一方で、浮力と言う意味でもあり、そして体積に比例します。排水量が大きければ、「大きな船で沢山の荷物を運ぶ能力がある」と言ういうことが出来ますね。
海自の護衛艦と、護衛艦隊の存在意義とは?
海上自衛隊の主力を構成する水上戦闘艦は、総じて「護衛艦」と呼ばれています。この護衛艦には、上述の空母や駆逐艦などが当てはまります。「護衛艦」と言う名前のついていないものは、主戦闘から外れた哨戒艦であったり、非戦闘艦に分類されています。
海自の護衛艦には、「ヘリコプター護衛艦(ひゅうが等)」「ミサイル護衛艦(あたご等)」「汎用護衛艦(あきづき等)」「乙型護衛艦(あぶくま等)」が存在します。この内、海外ではヘリコプター護衛艦に関しては「空母」と言う扱いで、それを除けば全て駆逐艦と言う分類になっています。
昔ながらの定義に当てはめるのであれば、ヘリコプター護衛艦は空母でしょうし、ミサイル護衛艦は巡洋艦、汎用護衛艦が駆逐艦で、乙型護衛艦がフリゲート的なポジションになるかもしれません。しかし、自衛隊は旧海軍とは全く異なる性質を持った組織ですので、旧来通りの分類ができず、仕方なく護衛艦と言うような呼称になっています。
これらの護衛艦によって構成される護衛艦隊の主任務は、実のところ「敵潜水艦の無力化」にあるのです。
なんだか意外に思えますが、潜水艦が非常に脅威であると言うだけではありません。海自の存在意義を問われた時に、なんと答えるべきか。実は、自衛隊の複雑な事情がその裏に隠されています。