炎と言うのは光と熱が見せる現象と言うだけではなく、その光と熱を生み出す微粒子によって生まれているということは前回の記事でご説明しました。
しかし、その微粒子とは具体的に何を示しているのでしょうか?
また、光と熱と言うのは一体何を意味しているのでしょう?
私達が普段目にしている炎を、「微粒子」「熱」「光」「生成物」の観点から細かく考えてみます。
炎の成分は燃料によって大きく異なる
「炎の成分」と言う表現に違和感を覚える方もいるかもしれません。炎は気化した燃料が燃焼する事で目に見える現象であり、手に触れて分解できる物ではないからです。
しかし、炎と一言に言っても、それは燃える燃料によって全く異なった現象です。
ロウソクの炎、炭火の炎、木片の炎、ガソリンの炎、金属の炎・・・などなど、数えだしたらキリが無いでしょう。
見た目からして全く違った燃え方をする燃料もあれば、見た目は同じなのに全く違う燃え方をする燃料もあります。その逆も然りで、大元の材料は殆ど同じなのに見た目が違う燃え方をするものもあるのです。
知れば知るほど炎と言うのは不思議な現象ですが、これらは全て燃えている燃料の違いから生まれています。さらに細かく見ていくと、熱を得た燃料から生まれた微粒子の動き、燃焼反応の際に生まれる熱や光、そして生成物に違いがあります。
そこで、炎の成分をこの4つの側面から見ていくことにします。
また、燃料となる物質が無機物か有機物かでその形が大きく異なりますので、本記事ではまず有機物の炎からご説明しましょう。
※ここで言っている有機物の燃料と言うのは、「バイオ燃料」や「有機燃料」とは別物です。
有機物の燃料ではどんな微粒子が燃えているのか?
有機物とは炭素を含む物質のことで、炭素に水素や酸素が加わると石油の主成分である炭化水素(CnHn)、さらに酸素が加わると木材の主成分となる炭水化物(CnH2nOn)と呼ばれるようになります。
燃料に使われている素材は、ロウソクなら「パラフィン」、ガスなら「メタン」、木片なら「セルロース」、ガソリンなら「炭化水素」、金属なら「金属元素」と多岐に渡っています。
しかし実際に燃焼している元素は、金属元素を除くと大半が「炭素」と「水素」の化合物です。パラフィンもセルロースもメタンも炭化水素も、全て炭素と水素の化合物であり、全て植物や生き物などの起源が似たような有機物から由来する燃料なのです。
おさらいになりますが、燃料に火をつけると、見た目は燃料がいきなり燃えている様に見えますが、実はそう単純ではありません。燃焼反応(酸化反応)が起こる直前に燃料が気化したり、熱を得た燃料が熱で別の化合物に変化して微粒子状になって舞い上がったり、様々な現象が起こります。
その結果として、拡散した微粒子(気体含む)が、空中で酸化反応が起こるだけの熱エネルギーを得て燃焼するのです。すると不思議な事に、燃料というのは燃料があった一点でズブズブと燃えるのではなく、まるで湯気や風に揺れる草木のようにゆらゆらと揺れる炎を生み出します。
この際に燃焼する微粒子が燃料によって異なるわけですが、酸化反応は1つの化合物あたり1回などではなく、燃料の化合物によって何度も何度も反応を繰り返します。有機物が持つエネルギーは膨大で、野菜を一口大に切るためには何度も何度も半分に切らなければいけないように、これ以上燃えなくなるまで燃やすには何度も何度も繰り返し化学反応を起こす必要があるのです。
また、天然ガスの主成分である炭化水素のメタンなどは炭化と水素で作られる燃料で最も単純な物質ですが、ろうそくやガソリンなどにも含まれており、殆どあらゆる有機化合物の燃料の燃焼時に「一瞬だけ」生まれて燃えています。
こうして有機化合物の燃料で燃焼反応が進んでいくと、最終的には単体の炭素や水素が酸素と結びつく反応に行き着くのです。多くの有機物の燃焼反応で「二酸化炭素」と「水」が最終的に作られるのはそのためでしょう。
色々複雑な反応が起こっている用に思えますが、実はこれでも(専門家に怒られるほど)単純化しています。
燃料毎に燃焼サイクルは微妙に異なり、その全てが解明されているわけではありません。炎の成分を完全に理解すると言うのは科学者ですら困難です。
(次ページ:有機物の炎が持つ熱と光の正体)