奥深いロウソクの世界、宇宙で丸い炎やケーキキャンドルが細い理由 -火のしくみ(4)

バースデーキャンドルが細い理由

 

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バースデーキャンドルなどは先端が細くなったりして、蝋を溜め込まないようになっているケースが多いです。

当然、蝋を溜め込めないとろうそくが消えるのはあっという間ですし、垂れ落ちた蝋は無駄になります。しかし、これには非常に重要な意味がありました。

ろうそくを吹き消す場面を想像してみてください。もし、ろうそくの炎を吹き消した際にろうそくの真ん中に溶けた蝋が溜まっていたらどうなるでしょう? また、ケーキを運んでいる時に、傾けたり歩いた振動で溶けた蝋が激しく動いてしまったらどうなるでしょう?

高温の蝋が飛び散ったり、ケーキに落ちてしまうと極めて危険です。

しかし、先端が細いろうそくであれば蝋はろうそくの側面を垂れ、冷えてすぐに固まります。吹き消した際に溶けた蝋が飛び散ることもなく、傾けてもケーキに蝋が落ちる事もありません。

非効率に見えるケーキキャンドルにも、実は意味があったのですね。

宇宙におけるろうそくの炎

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(地上の炎’(左)と宇宙の炎(右)‐ZME

ろうそくは縦に長いと思われがちですが、これは重力があるからです。

例えるなら、水の中の空気が泡となって登っていくのは空気が水より軽いからですが、熱されて膨張した空気は冷たい空気より軽いのです。厳密には密度の違いなので軽い・重いの話ではないのですが、体積あたりの質量には差が出ます。

つまり、炎を作っている空気は軽いので重力下では上昇していき、炎は縦に長くなります。しかし、重力が無かった場合、熱い空気が上昇することはないので炎の形が細長くなることはありません。無重力空間では、熱で膨張した空気は均等に膨張し、上の写真のように円形になります。

また、気流が生まれないので酸素供給に偏りが出ることも無く、色も酸素の濃度に合わせて均一になります。

私達が普段から見ているろうそくと言うのは、あくまで重力下だけの独特な炎だったのですね。

気化した蝋は炎が消えても存在する

ろうそくの炎が気化した蝋によって作られているのはわかりましたが、炎が消えたら気化も止まっているのでしょうか?

ろうそくに水を掛けて消したのなら別ですが、炎に蓋を被せて消した場合、実は蝋の気化は止まっていません

炎に蓋を被せると炎が消えるのは、ろうそくから熱を奪った(水で冷やした)のではなく、酸素を奪った(供給を止めた)からです。酸素を奪っただけでは、熱はまだろうそくの芯や周辺に残ったままです。すると、芯の熱が空気で冷やされるまではろうそくの蝋は気化し続けている事になります。

気化したけど燃えない蝋は、熱で生まれた気流にのって空高く登っています。では、この気化している蝋に火をつけたら再び燃えるでしょうか?

以下、炎が気化した蝋に乗って移動する実験の動画です。

凄いですね。気化した蝋は上昇し続けているので、ろうそくの遥か上に炎を持って行くと気化した蝋に引火して火が付きます。気化した蝋はろうそくの芯から伸びているので、気化した蝋を炎が伝って芯に再び着火するのですね。

手際よくやっているから良いですが、この気化した蝋が風で左右に広がっていると炎がどこに行くか分かりません。また、天井が低いと気化した蝋が天井に辿り着き、着火時に炎が天井に達することもあります。この実験をやる際には、風が無く、天井が高い燃えにくい場所でやりましょう。

まとめ

ろうそく一つとっても非常に奥深い世界があることが分かりました。しかし、この炎の世界はロウソクだけに言える事ではありません。

宇宙の炎はロウソク以外にも言える事であり、ガスコンロで料理をするのも無重力では大変です。炎が上に行かずに均等に拡散するので、コンロの上にフライパンを乗せてもなかなか温まりません。また、火を消しても気化した可燃物が空気中に存在するケースは多く、バックドラフトや火災の原因になります。

ろうそくを通して炎のしくみや性質を学び、炎の理解を深めることに繋げていきたいですね。