最近では糖質制限ダイエットや低糖質食が話題になっています。糖質というのは要するに「炭水化物」のことですが、低糖質食では三大栄養素の一つである炭水化物の摂取量を極端に減らして生活することになります。そして、糖質の一種であるブドウ糖(グルコース)は脳の大切な栄養源にもなっているため、炭水化物を摂らないと脳に栄養が供給されにくくなるのではないかと心配になるかもしれません。
摂らなければならない栄養を摂らないことで、体に悪い影響は無いのでしょうか?
また、もし体に何の影響も無いのだとしたら炭水化物を取る意味はあるのでしょうか?
本記事ではそんな疑問について、簡単にお答えしていきます。
炭水化物を摂らない低糖質食とは?
まず、低糖質食について簡単におさらいしましょう。
低糖質食とは、「炭水化物」「タンパク質」「脂質」の三大栄養素の内、「炭水化物」を減らした食生活の事を言います。「低糖質」という言葉そのものが「低炭水化物」と言い換えても問題はありません。
そして、炭水化物と言うのは主に「お米」「パン」「パスタ」「お菓子」などに多く含まれている栄養素で、いわゆる「主食」と呼ばれてきた物質です。つまり、主食やお菓子を減らした食事が低糖質食ということになりますね。ちなみに、砂糖は糖質の塊だと考えて貰って構いません。
なぜ炭水化物を敢えて減らすのかというと、炭水化物を摂り過ぎることで様々なデメリットが発生するからです。
糖質の摂り過ぎによるデメリットは、主に「糖尿病」「肥満」「糖質中毒」などが挙げられ、どれも重篤な疾患を引き起こすリスクがあります。これを防ぎ、体を健康な状態に保つことが低糖質食の目的です。
しかし、この説明だけでは納得出来ない人も多いでしょう。
湧いてくるであろう幾つかの疑問に答えていきます。
- 栄養はどのようにして供給されるのか?
- 炭水化物を摂取する本当の理由は?
- 脳や体に何か影響はないのか?
本記事では、この3つの質問に答えていきます。
炭水化物無しでどのようにして栄養が供給されるのか?
キーワードは、「糖新生」と「ケトン体」です。
人の体にとって最もエネルギー源としやすいのが糖質であり、体の中に糖質があれば優先的に糖質を消費します。しかし、糖質が無かった場合、人は「糖新生」によってタンパク質などから糖質を作る事ができます。
糖新生とは、タンパク質の中にあるアミノ酸を分解して糖質を作る現象のことで、糖質が足りなくなれば人はこの「糖新生」を使って糖質を作ることが出来ます。この糖新生にも実はエネルギーが必要で、その一つが脂肪の中にある脂肪酸です。
つまり、糖質は筋肉などに含まれるタンパク質と脂肪に含まれる脂肪酸を消費することで作れるのです。これが低糖質ダイエットをすると痩せられるという根拠になっています。
また、糖新生によって作られる糖質はあくまで「足りない分を補う」程度の量であり、これによって高血糖になることはありません。
さらに、糖新生で必要な糖質を得られることに加え、タンパク質や脂肪をベースに「ケトン体」というエネルギー源を作る事もできます。
「ケトン体」は脳を含め一部の臓器で消費可能なエネルギー源であり、糖質ほどではないにせよ良質なエネルギー源になるため、糖質が不足している時にはケトン体を代替エネルギーとして活用できるようになっているのです。
ケトン体はタンパク質に含まれるアミノ酸の一部や脂肪に含まれる脂肪酸を分解する事によって作られるため、糖新生と同じように低糖質ダイエットの利点と考えられています。
要するに、「タンパク質」や「脂肪」から糖質は作れるし、ケトン体という糖質以外のエネルギーも作れるため、「炭水化物」を摂取しなくても問題なく体に栄養供給が出来るということなのです。
では、なぜ炭水化物の摂取が当たり前のように言われているのでしょうか?
(次ページ:炭水化物を摂取する理由と体への影響)