パッシブコントロール
アクティブコントロールは必ずしも根本的解決にはなりません。長期的な効果を上げるためには、そもそも近くに鳥が寄りつかないようにする必要があります。
そのため同時に駆使されるのがパッシブコントロールと呼ばれる一連の方法。これは主に、周辺の環境を整備することで、鳥や動物が集まらないようにすることを目的にしています。
パッシブコントロールをする上で重要になるのは、植物の管理、そして水場の管理です。
植物の管理
空港の滑走路周辺には着陸帯と呼ばれるスペースが設けられており、そこには一面に草が植えられています。
着陸の時に万一滑走路から外れたときのクッションの役割を果たすほか、土を覆うことで砂埃がエンジンに入り込むことを防ぐほか、有害な気流を抑える効果もあるのです。
ただし、草が伸びすぎると鳥の隠れ家になってしまって困りもの。そのためどこの空港でも定期的な草刈りが行われています。
BASHマニュアルにもその旨が記載されていますが、具体的な頻度や草の高さまでは書いていません。なぜなら場所によって生えている植物も住んでいる動物も違うので、空港ごとに周辺地域の分析をした上でそれぞれの管理計画を作るよう記載されています。
日本の例をみてみましょう。例えば大阪国際空港では、年3回草刈りが行われています。
年間で刈られる草の量はなんと年間900トン。これだけの量の草がどこに行くかといえば、奈良公園の鹿の飼料として有効活用されているとか。
水場の管理
水は生き物に欠かせないもの。周辺に水場があれば野生の鳥や動物が集まってくるので、付近にあれば取り除くことも重要になってきます。
最も有効なのは池などの水場を取り除くこと。長雨の後には池ができていたりするため、周辺状況を定期的にチェックすることも大切です。
この他、嵐や洪水の後は新しい池ができたりもするのでその見回りや、排水溝周辺の清掃もするように勧められています。
農業・畜産管理
空港の周辺に畑や放牧地がある場合も注意が必要です。
畑を耕せば土の中の虫が出てきて鳥の餌になり、作物を収穫して置いておけばやはり生き物が集まってリスク要素になります。
農作業のタイミングを調整してもらう、作物の取りこぼしのないように対策してもらうなど、周辺の農家との協力体制構築が欠かせません。オランダのスキポール国際空港はひとつのモデルケースでしょう。
ここはカナダガンとの衝突が多い空港でした。カナダガンは体重4~5kgにもなる大型の鳥。吸い込んでも耐えられる飛行機のエンジンはないほどのサイズです。
スキポール空港の周辺には小麦や大麦の農地がありました。カナダガンが集まっていた理由は、収穫の時に取りこぼしが落ちていたのが原因だったのです。
そこで空港は周辺の農家に対し、処理費用は空港が負担することを条件に、穀物の取りこぼしを48時間以内に処理してもらうよう協力を取り付けました。これが功を奏し、カナダガンは激減。バードストライクによる事故のリスクを大幅に下げたのです。
まとめ
バードストライクの対策は、ただ鳥を追い払うだけではありません。
長期的に有効な対策を取るには、周辺環境と動物との関わりという、複雑な要素の分析と働きかけが必要になります。
飛行機の運航はそれ自体が込み入ったシステムを要するものですが、安全を保つための環境整備もまた、相応に巧妙な方法を取る必要があります。