抜け道となっていた銃部品の規制
銃のパーツをどれだけ規制の枠組みに含めるか、という点も今後重要なポイントになると考えられます。
パーツの規制と言えば、銃をフルオート化できるバンプストックが有名でしょう。引き金を引きっぱなしにすると高速連射できるフルオート銃はアメリカでは軍や警察だけに許可されていて、一般市民が持つことは違法とされています。
バンプストックはその規制をかいくぐってフルオート銃を作れるパーツでした。射撃の反動で銃全体が前後に動く構造になっていて、後ろにずれた引き金が戻ると再び指に当たります。すると指を離さない限り、フルオート銃と同じように高速連射ができるのです。
2017年のラスベガスの乱射事件で使われたことで禁止されましたが、それ以前は「作りが甘くてずれる部品」として合法的に販売されていました。
この例からもわかるように、アメリカでは銃のパーツの規制がかなり甘いのです。一応、銃の主なパーツを収めるレシーバーと呼ばれるパーツについては販売が規制されていますが、それにも抜け穴があります。
それが80%レシーバーと呼ばれるもの。
これは必要なネジ穴が開いていないなど、一部が未完成のまま売りに出されるレシーバーです。完成度が80%で最後の20%を自分で加工すればできあがり、ということで80%レシーバーと呼ばれます。
こうするだけで法的には銃の部品ではなく置物や文鎮として販売できてしまいます。加工も市販のツールでできてしまうので、レシーバーの流通も事実上フリーパスといえるでしょう。
追跡不能なゴーストガン
銃のパーツ販売への規制が徹底されていないことは、「ゴーストガン」と呼ばれるハンドメイド銃の問題にもつながっていきます。
ハンドメイド銃の問題点は、シリアルナンバーがなく流通経路が特定できないこと、そして誰でも入手できてしまうことです。
アメリカでは、正規の販売店で買える銃にはすべてシリアルナンバーがついています。そのため、万一犯罪に使われた場合、どこで誰が買ったものかが追跡しやすくなっています。
対してゴーストガンにはシリアルナンバーがなく、警察が追跡することができません。警察の目には見えないというのが、ゴーストガンの名前の由来です。
加えて、正規の販売店では購入者の前歴調査が必須で、犯罪歴があるなどの理由で不適格とされた人には販売されません。
ゴーストガンは違います。パーツを買うのに前歴調査は不要で、前歴などに関係なく誰でも隠し持てるのです。
簡単に手に入るというのも重要なポイントです。
インターネット上では必要なパーツが全てそろった「組み立てキット」まで売られているほど。レシーバーは先述の80%レシーバーですが、加工用の工具まで入っている場合もあるとか。購入のハードルは低い一方で、その機能は市販の銃にも引けをとりません。
ゴーストガンの存在が発覚するのは、犯罪に使われるか、警察の捜査が入った時ぐらい。そのため正確な数は知りようがありません。
それでも、2019年にロサンゼルスで発見されたゴーストガンの数は前年より50%増えたという報道があります。
加えて、ゴーストガン作成キット販売業者について調査した報告書では、新型コロナウイルスのパンデミックに伴って販売が急増したという結果が出ました。
これらを踏まえると相当数が流通していると考えられ、現在アメリカ国内でも対策が叫ばれ始めています。
まとめ
より厳しい銃規制を求める意見はアメリカ国内でも高まっています。
一方で、ゴーストガンの事例からもわかるように、法規制の盲点を突いた形で銃が流通しているのもまた事実。今後は銃そのものの規制だけでなく、パーツなどを含めた周辺の規制までも含めて考える必要がありそうです。