進化する世論操作、SNSで広がるボット利用

ニューヨーク大学の報告書

2019年には、ニューヨーク大学からもアメリカ国内のSNS世論操作に関して報告書が発表されています。

これはアメリカの事例や傾向だけにフォーカスしたものですが、今後の情勢の動きを予想する上では重要な資料になることでしょう。

この報告書内では、SNS操作について、今後重要になるであろうトピックを取り上げています。

Instagramの活用

これまでSNS世論操作の主戦場はツイッターやフェイスブックでしたが、今後はインスタグラムでも拡大していくと予想されています。

その理由は、画像の影響力の強さ

これについては、SNS世論操作への関与で知られるロシアのインターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)から興味深い調査結果が出ています。

同社が2015年から2018年にかけてユーザーエンゲージメント数を分析したところ、フェイスブック7700万ツイッター7300万インスタグラム1億8700万という結果が出ています。

ユーザーエンゲージメントとは、投稿に含まれるリンクのクリックや「いいね」、シェアなどを総称した言葉。この結果からは、インスタグラムの投稿は何らかの反応をもらいやすいということがわかります。

インスタグラムは今現在、SNS世論操作のメインターゲットにはなっていません。しかし画像や映像の影響力の強さを考えると、いつ狙いをつけられてもおかしくないと言えるでしょう。

2007年アメリカ大統領選挙で、ジョン・マケイン候補はイランへの対応について聞かれたとき、「イランを爆撃しろ」という替え歌で答えた。これがミームとして広がった結果、対立候補だったオバマ氏への追い風になった。

暗号化メッセージアプリの活用

SNSのようなオープンな場でなく、近しい人や身内でつながってメッセージをやりとりするクローズなプラットフォームについても警戒するべきだと報告書では語られています。

日本ではLINEが最大手に含まれるメッセージアプリ、海外の代表格はWeChatWhatsAppなどが当てはまります。こうしたアプリはプライバシー保護のため、ユーザー間のやりとりが暗号化されており、第三者にはメッセージの内容がわからないようになっているのです。

ところが、これが転じて不安要素になっています。この方式では運営している企業にもメッセージの内容がわからないため、アプリが何に使われているかを掴みづらいのです。

こうしたメッセージアプリでは、身近な人同士でつながるのがSNSとの違い。ある程度見知った人から情報が渡されることから、受け手が情報を信じやすいという特徴があります。

これは世論操作にうってつけの特徴でしょう。実際にブラジルインドでは、選挙の際にWhatsAppを通じて大規模な偽情報が拡散された例があります。

まとめ

インターネットが普及し始めた当初は、誰もがオープンに意見を発信できる場ができたことで、偏向したマスメディアがやがてなくなっていくだろうと期待されていました。

そこからすでに四半世紀以上が過ぎた現在、インターネット上でも偽情報や工作が横行するようになり、かつての理想は失われたように思われます。

インターネットに代わる新しいメディアの登場を待ってみても、おそらくまた同じことが起こるでしょう。

であれば求められるのは、工作や偏向について知ること、そしてその対策ではないでしょうか