人食いバクテリア特集:溶血性レンサ球菌やグラム陰性桿菌が起こす壊死性筋膜炎の恐怖

グラム陰性桿菌

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(ビブリオ・バルフィニカス)

溶レン菌はグラム陽性球菌ですが、グラム陰性桿菌の中には人食いバクテリアと呼べるような細菌が存在します。知名度のあるところでは以下のバクテリアで、どれも壊死性筋膜炎を発症させる可能性をもった細菌です。

  • ビブリオ・バルニフィカス
  • アエロモナス・ハイドロフィラ
  • バクテロイデス・フラジリス

ビブリオ・バルニフィカス

主に海に生息するバクテリアで、普通に生活する人が簡単に感染するものではありません。しかし、海産物の中に大量に生息しているケースが多く、感染した海産物を生で食べたりすると発症する事があります。この場合、体の内側から人喰い(壊死性筋膜炎)が始まることになるため、治療が極めて困難です。

海産物を生で食べる以外にも、海で泳いでいる時に怪我をすると感染します。貝で手足を切ったり、魚やエイなどに刺された際に傷口から入り込む事が多く、海で怪我をした際には症状に注意して何かあったらすぐに病院に運べるようにしたいところです。

基本的には肝機能や免疫力が弱っていない限り免疫細胞が退治してくれる弱いバクテリアで、溶レン菌に比べると知名度も低く感染例も少ないです。しかし、子供や高齢者などは注意が必要でしょう。

アエロモナス・ハイドロフィラ

観賞魚の体に穴を開ける事で知られるアエロモナス菌の中でも特に凶悪な種です。人に感染する事は稀ですが、感染すると壊死性筋膜炎などを引き起こす事があり、人食いバクテリアの一種として扱われる事があります。

下痢の原因菌として知られている菌で、不衛生な水や便など通じて感染します。下痢で済めば良いのですが、手足の傷口から入り込んだりすると人喰い化して重篤化する事があります。

日本では殆ど見られませんが、水の中に生息するバクテリアなので、不衛生な水を引用したり傷のある手足で触れないようにしたいですね。

バクテロイデス・フラジリス

腸内細菌の一種です。所謂、悪玉菌というやつで大腸炎や下痢、大腸がんの要因とも言われている菌です。腸内細菌の中ではかなり凶悪な細菌ですが、他の人食いバクテリアに比べれば感染力や毒素生成能力は低いです。腸内の細菌バランスが崩れた時に悪さをすることがありますが、偏性嫌気性細菌なので空気に触れるとすぐに死んでしまいますし、壊死性筋膜炎を起こすことは稀です。

稀とは言っても、全ての人が保有している菌であるということもあり、これが原因の壊死性筋膜炎はそれなりに報告されています。ただ、進行速度が遅いので対処がしやすく、お腹が異常に痛いという時にすぐに病院に行けば重症化することは無いでしょう。

劇症型溶連菌感染症に注意

こうして様々な人食いバクテリアを比較してみると、溶レン菌が如何に凶悪かというのがわかります。

他の人食いバクテリアは水辺にしか生息しなかったり、感染力が低かったり、気をつけていればまず感染しません。しかし、溶レン菌は気をつけていても感染する時は感染してしまいますし、しかも劇症型に発展すると生死に関わります

さらに良くないのが、同じ感染の仕方をしても劇症型にならないことが多いため、劇症型溶レン菌と普通の溶レン菌の違いがまだよく分かっていないことです。

大部分の溶連菌感染症が劇症型ではなく、死に至ることは少ないです。しかし、中には劇症型のように恐ろしい人喰いを始める溶レン菌があり、遺伝子的には同一種でありながらどうしてこのような違いがあるのかと、多くの科学者達の頭を悩ませています。

かつて溶レン菌は大人しい細菌であり、劇症型のような発症例はありませんでした。それが急に暴れだしたというのも不思議な現象です。ウイルスに溶レン菌が感染して突然変異をしたという説もあるほどですが、突然変異の理由は解明されていません。

なんにせよ、健康な人も劇症型溶連菌感染症にかかることがあるので、くれぐれも注意して下さい。