飛ぶために進化した鳥達(前編):飛び方・体・翼に至るまで、飛行を追い続けた生物

内臓は勿論のこと、翼や足の筋肉など全ての器官が胴体部分に集中しています。人間や他の生き物の様に、手足に大きな筋肉が付いていたり、頭部に大きな頭蓋骨や牙などがあるわけでもありません。鳥は食べ物を丸呑みすることで歯を不要にし、筋肉を全て足と翼の付け根部分だけに集約することで重心を整えています。

美しく軽い鳥の羽根

 鳥の羽根は非常に美しい。装飾品としては勿論、布団やダウンコートなどの防寒目的の詰め物としても使われます。

装飾品は単なる見た目を重視した用途に過ぎないですが、防寒用として使われる場合、その羽根の空気を蓄え易い構造と柔らかさが、防寒具に高い防寒性能と触り心地を与えます。

(左図:羽根の構造、 右図:装飾用の着色羽毛)

bird-feather-structure-big

羽根の構造図を見てもらえると分かるように、羽根は毛皮などのように生物の細胞でぎっしり埋まったような構造をしていません。蝙蝠の翼は皮膚の延長に過ぎないが、鳥の羽毛は全く別物です。

翼を形作る羽根は、素早く自由に動かすために軽くなければならず、さらに形の無い空気を確実に受け止め操るために柔軟で無くてはいけません。そのため、羽根は木の枝のような細い羽枝を交互に噛ませるようにして作られています。

枝と枝の間に隙間があるものの、確実に空気を受け止められるだけの抵抗を持ち、風を柔軟にいなせるだけの柔らかさを持っています。そして、一本の羽根が風に乗ると、どこまでも遠くへ飛んで行けるほどに軽いのです。

鳥によってその羽根の形や構造は微妙に異なっているものの、小さな羽枝の集合体であるという点では変わりません。

この羽根の構造は、軽くて柔軟で飛行に役立つと言うだけではなく、翼を閉じて体を覆うことで空気を蓄え体を温める防寒具としての性能も有しています。人が布団などに使っていることでも明らかですが、自然界に存在する防寒具の中でもその軽さと高い保温性は他の動物の体毛や毛皮などでは比べ物になりません。

鳥の羽根は空を飛ぶために軽く柔軟であるだけでなく、保温性の低い小さな体を温める効果もあったのです。

飛行を追求し続けた鳥の姿

w-locie-ptakow

 鳥という生き物は、飛行を極限まで追求した生き物です。

その翼は、世界のどの生き物や機械よりも、軽く柔軟で風を自在に操る事ができます。小さな体は翼を自在に動かせるだけの筋肉を備え、空気の抵抗を極限まで減らす滑らかな形状をしています。

鳥は空気を掻きながら前に進み、空気を切り裂く事で揚力を得ます。必要に応じて空気の抵抗を操り、自由に空を飛び回る姿に人は憧れてきました。そのおかげで、人は飛ぶための機械を生むことに成功し、飛行速度や垂直離着陸においては鳥に勝る力を手に入れたとも言えます。

しかし、鳥のように自在に飛べるとは言い切れず、まだまだ空の先達である鳥達に学ぶことは多いでしょう。

普段見慣れている鳥ですが、彼らの事をもっと知ることで、空が少し身近に感じられる様になるかもしれません。

 

【後編:陸の鳥、海の鳥、野原の鳥・・・環境に応じて進化した鳥達】

 【シリーズ一覧:飛ぶ鳥、飛べない鳥】