実は、その大半が水分だったりします。
「おい。小腸で吸収して大腸でも吸収してそんだけ残ってるのかよ」
と突っ込みたくなりますが、実際の所、水分を全て吸収するのはどだい無理なことなのです。
栄養素は腸内の壁面で吸収されますが、便と腸が触れている部分の水をいくら吸収しても、便の中心部分の水はいつまでも残ったままです。そもそも、水分の足りない便は腸内を動かしにくいため、ある程度は水分を残しておかないと便秘になります。当然といえば当然ですが、便秘の場合は水分の割合が減りますし、下痢の場合は著しく多くなります。
また、吸収できなかった食べ物は、実は便の1割に満たない量だったりします。あんなに食べたのに便にはほとんど食べ物が入っていないと言うのは少々意外かもしれませんが、人の消化器官というのはそれだけ優れたものなのですね。
そして、死んでいるものも含めて腸内細菌類が1割弱。1.5キロも腸内細菌が生息していて、食べた食物繊維を使ってどんどん増えています。それを考えれば、食べ物の残骸並みの数がいるのも納得です。
面白いのが、実に1割弱ほど便に腸の細胞そのものが混ざっていることです。いくら食べ物を消化して滑らかにしたとしても、腸の壁をぐにゃぐにゃと動かしながら食べ物を動かそうとすれば、当然腸壁の細胞はズタズタになります。特に、絨毛の様なトゲトゲの小さな細胞が大量に腸内に生えていて、それが食べ物と擦れて破壊されないわけがありません。次々に生えてくるので大した問題ではありませんが、数メートルに渡って食べ物によって削り取られた腸内細胞は、最後は便に混ざって排出されてしまうのですね。
重量ベースなので割合で考えて良いのかどうかの問題はありますが、意外に便というのは水っぽいものなんですね。
ひと繋がりの消化器官
歯、口、のど、胃、十二指腸、小腸、大腸、と来て、食べ物の通り道としての消化器官の説明はおしまいです。
歯で固形物を小さく砕き、口の中で流動的な形にして、胃で殺菌と分解を行い、十二指腸で最終的な消化を進める消化液を混ぜあわせる。そして、小腸で栄養分を分解しつつ吸収し、大腸で消化しきれなかった食べ物を腸内細菌で分解させ、排出する。
一つ一つをつぶさに見ていくと、消化器官と言うのは非常に計画的に作られていることが分かります。口から入って肛門から出ると言うプロセスがこれだけ複雑な過程を経ていると言うのは、一種の生命の神秘と言えるものかもしれません。