暖房機器の原理と仕組み、メリットやデメリット(その2):輻射熱を活用する各種ヒーター類

電気ストーブ

(山善 電気ストーブ )

 前回の記事で、輻射熱を出しながら対流を作り出している暖房機器として石油ストーブを紹介しましたが、今回は電気ストーブを紹介します。

ふと気づいた方もいると思いますが、ストーブというのは非常に広い定義で使われるので色々な物が当てはまります。これからご紹介するカーボンヒーターなども電気ストーブに分類されることもありますし、似たような機器でハロゲンヒーターと言うのもあります。そのため、ここでは電気ストーブというと「ニクロム線(カンタル線)」に電気を流して発熱させる機器のことを電気ストーブと呼ばせて頂きます。

ニクロム線を使ったストーブは非常に古くから使われていますが、上の電気ストーブが非常に一般的な「石英管でニクロム線を覆った」製品になります。安価に作れて丈夫、すぐに発熱して暖まる事が出来るので使い勝手が非常に良いのが特徴です。発熱体がかなり熱くなるので、その熱が周囲の空気に伝わって上昇気流を生み、僅かに対流効果もあります。

欠点としては、発生する電磁波の幅が広く、発熱体自体が非常に高い熱を持つため、無駄使いされているエネルギーが多い事が挙げられます。つまり、熱に変わりにくい電磁波や発熱体周辺にも熱が伝わってしまことで、発生させているエネルギーが人に伝わりにくいのです。やたら明るいのは、「可視光線」と言う熱に変えにくい光を無駄に発生させていると言う証拠でもあるのです。

安価で使い勝手が良い、すぐに暖まる

暖房効率が悪く、電気代がかかり、効果範囲も狭い

しかし、最近ではニクロム線をメインに使いながら、そのエネルギーを効率良く遠赤外線だけに変える製品も登場しています。

(コロナ 遠赤外線電気ストーブ )

コロナの電気ストーブは、写真の通りやや最初に紹介した山善の電気ストーブより暗い印象があります。

しかし、実はこれは電気エネルギーを電磁波に変換する際に熱に変わりにくい「可視光線」の発生が少ないからなのです。そのため、暖房効率が上がり、電気代が比較的安く済む上に効果範囲が広く、体の芯まで暖まる暖房機器になっています。

カーボンヒーター

(山善 カーボンヒーター )

このように名前をつけると電気ストーブとは全く違う製品の様に聞こえますが、原理は基本的には変わりません。ただし、ニクロム線の代わりに「カーボン」、つまり炭素を主軸にした物質に電気を流して発熱させています

普通の電気ストーブとの違いは、カーボンを発熱させると普通のニクロム線よりも多くの遠赤外線が発生し、電気エネルギーを効率よく輻射熱に変えることが出来るのです。発熱体であるカーボンの発熱時に、エネルギーの大部分を電磁波に変えているため、カーボン自体の熱もニクロム線ほど上がりません。

試しに、暫く使った後に機器を止め、発熱体を保護している金網や空気の温度(発熱体自体は熱いの触らないで下さい)を測ってみてください。 電気ストーブは熱くて触れない、近づけないほど熱いのに、カーボンヒーターはそれほど熱くありません。場合によっては、金網に触れるほどの加熱で済んでいます。しかし、ヒーターの稼働中に体を近づけるとやたら熱く感じます。

これは、カーボンヒーターが人を暖める事に特化した電磁波を発生させているからで、人以外の物や空気を暖める事にそこまでエネルギーを使っていないと言うことを意味しています。つまり、相当出力を上げない限り対流効果も期待できません。

逆に言うと、カーボンヒーターを使えば、人は暖まるけど部屋はそれほど暖まらないということでもあります。

人に対する暖房効果が高く、すぐに暖まる

部屋などがあまり暖まらず、大人数を暖めるのに向かない

ちなみに、ハロゲンヒーターはカーボンやニクロムではなく、ハロゲンを入れた管を発熱させているだけです。人を暖める効果はカーボンの方が高いので、廃れつつあります。