リニアとハイパーループ 実用化までの道のりはどう違う?

ハイパーループ実用化の動き

以前の記事でも少し触れましたが、ハイパーループはオープンソースの初期設計をもとに複数の企業が同時に研究開発と実用化を進めています。初期の設計をまとめたイーロン・マスク自身は直接開発を行わず、開発者向けにテストコースの提供やデザインコンペ開催を行うなど、間接的な開発支援に徹している点が特徴です。

本記事では、ハイパーループ開発に携わる大手企業3社の動きを見ていきます。

Virgin Hyperloop One

Virgin Hyperloop Oneの創業は2014年で、創業当初はHyperloop Oneという名称でした。2017年10月にイギリスのヴァージン・グループが大規模投資を行ったのと時を同じくしてVirgin Hyperloop Oneという名称になりました。

同社は2016年11月の段階で、ドバイ道路交通庁とハイパーループ建設の契約を締結しています。計画ではドバイとアラブ首長国連邦を結ぶルートに建設され、現在車で2時間の距離をわずか12分にまで短縮することができると期待されています。同年10月には、世界各地からハイパーループ路線建設候補地を選定するためのグローバルチャレンジを開催。米国、カナダ、メキシコ、イギリス、インドの5か国から10か所の候補地が最終的に選ばれ、これらの地域と連携して建設への動きを進めていく予定です。

2017年5月12日には世界で初めてフルスケールでの走行実験に成功。8月2日には車体を取り付けたポッドの走行試験を行い、300メートルほどの距離を最高時速309km/hで走行しました。

HTT(Hyperloop Transportation Technologies)

2013年創業のHTTは、一部の人材をクラウドソーシングで集めるというクラウドコラボレーションアプローチでハイパーループの開発を行っている会社です。全員フルタイムで働いているわけではなく、給与を受け取って働いているけれど、本業が別にあるという社員もいるのだとか。

HTTはすでにスロバキア、アブダビ、韓国、インドでのハイパーループ建設を受注しており、Virgin Hyperloop One同様に早くから世界的に展開している企業です。

HTTのハイパーループは初期設計案で採用されていたエアクッションではなく、磁気浮上で車体を浮上させる方式を採用しています。

Transpod

最後はカナダで2015年に創業されたTranspod。ここでもハイパーループの浮上方式は磁気浮上が採用されています。

現在はトロント―ウィンザー間を結ぶ路線を設計中で、2017年3月からアルバータ州でのテストトラック建設が進んでいます。Transpodは路線の敷設・維持コストの低さを強みとして掲げ、現在カナダ国内に焦点を絞って建設計画を推進中。2017年6月にはカナダ政府とオンタリオ州から11億8500万ドルの資金提供を受けるなど、着実に土台を築いています。

浮き上がって路面との摩擦を減らし、高速で人を運ぶ鉄道――という出発点から、それぞれ異なるかたちで実用化されようとしている超伝導リニアとハイパーループ。これらが現実のものとなったとき、世界の交通事情はどう変わるのか? わからないことや困難はまだまだあるのでしょうが、変わる世界を見るのが楽しみになってきますね。