昆虫食が広まっている?昆虫を食品に使う利点とビジネス展開

人類が文明化する以前には、採集が比較的容易な昆虫はタンパク源として広く活用されていました。現代の日本でも、ハチノコやイナゴの佃煮といった郷土料理にその名残が見られます。

現代社会では畜産や物流の発達に伴い、食肉や豆類など昆虫以外のタンパク源が日常的に手に入るようになりました。そのため、先進国に住んでいるなら昆虫を食べる必要性は高くはありません。それにも関わらず、近年になって昆虫食が注目を集めています。

調査研究や実験段階をすでに過ぎて、現在ではいくつものベンチャー企業が昆虫由来の食品を人間の食用に販売しています。この記事では昆虫食の利点や、活用が期待される分野、そして既存の昆虫食ベンチャーについて紹介していきます。

昆虫食が注目されている理由

昆虫食は単なる食肉の代替品ではありません。

さまざまな研究で従来の畜産と比較しての利点がいくつも確認されている、まさに新時代の牧畜として注目されているのです。

高い栄養価

昆虫は第一に、その栄養価の高さが大きな利点だとされています。

例えばバッタ類を例に取ると、100g当たりのタンパク質含有量は牛肉と同等以上。タンパク質以外に目を向けても、昆虫の飼料によって多少幅は出るものの、種類を問わず軒並み高いタンパク質含有量を誇ります。

そのほか亜鉛や鉄分、カリウムといったミネラル類、ビタミン類も豊富です。食肉は内蔵や骨など可食部以外を取り除くため、そうした部分に含まれる成分を摂取することはできません。対して昆虫食は生体をほぼ丸ごと食べるような形になるので、生体内に含まれる成分を余さず摂取できるため、等量の肉と比べて栄養価が高いのです。

高い生産効率

栄養価以上に、生産に必要なリソースの少なさも注目される要因です。

まず、飼育に必要な飼料の少なさは群を抜いています。食用に広く生産されているコオロギを例にとってみましょう。

家畜の体重を1kg増やすためには、牛肉では10kg豚肉では5kgの飼料が必要です。生産効率がよいとされる鶏肉でも2.5kg必要なところ、コオロギはそれを下回る1.7kgしか必要としないのです。

さらに先述の通り、家畜は最終的に骨や内臓を取り除いた食肉として出荷されます。廃棄されず食べられる部分だけを考えると、生産効率はさらに高くなるといえます。

まずはコオロギの場合を見てみましょう。コオロギは脚の部分と、キチン質でできた外骨格を廃棄して出荷されます。廃棄部分の割合は体重の20%程度なので、可食部分は80%となります。

家畜の場合、食用となるのは皮、四肢、頭、内蔵、血液を取り除いた枝肉と呼ばれる部分です。食用として出荷される枝肉の割合は平均すると、牛の場合は全体重量の57%、豚の場合は65%となります。

飼育に必要な飼料も、食品廃棄物などを有効活用できます。一例として、アメリカで家畜用飼料としてアメリカミズアブを飼育するEnviroflightでは、ビールの製造過程でできる副産物のビール粕を飼料に使っています。

このように飼料の消費が少ない点に加えて、生産に必要な土地が少なくて済む点、温室効果ガス排出量が家畜と比べてはるかに少ない点も評価されています。