こうした事件を防ぐためにはどうすれば良いのか?
家庭によって様々な事情があるので、こうすれば良いということではありません。しかし、こう言った事件は家族によって間違いなく防げます。
というのも、二つの事件で「事件の前兆となる行動があった」からです。
酒鬼薔薇聖斗事件では、少年Aがノイローゼ気味になったり、虫などを無意味に沢山殺してみたり、その他過度なイタズラを多数起こしていました。また、佐世保事件では給食への異物混入や父親への暴行事件があり、繰り返し精神科に連れて行ったことから顕著な前兆行動があったのは間違いありません。こういった前兆行動はある種のメッセージであり、早期に対処して根本原因を取り除いてやらなければなりません。
また、親しい人間が死んだ後の心のケアと言うのは非常に重要である事もわかります。
もちろん、家族にとっても亡くなった方は親しい人間でしょうから、辛い時期で娘や息子のケアどころでは無いかもしれません。しかし、それならそれで親戚や余裕のある人が「死」ついてしっかり教えて置く必要があったはずです。子供が持つ「死」への疑問に対して、きちんと大人が答えてやり、「死へ興味」が間違った方向へ進まないように指導してやる必要があるのではないでしょうか?
とは言え、防げるといっても、それは簡単ではなさそうです。
実際、双方のケースで両親は精神科への受診を行っており、児童相談所にも相談しているケースもありました。それでも事件を未然に伏せていません。前兆行動を察知できたとしても、専門家ですら対処出来ないのかもしれません。佐世保事件のケースでは精神科医が「人を殺しかねない」と強く警告していたにも関わらず事件が起こってしまった事で、関係者の対応が問題視されました。
こう言ったことから分かるのは、専門家に全てを任せるのではなく、子供の心理について親もしっかり勉強しておくべきだということです。
「子供の考える事が分からない」と言う親の悲鳴があちこちから聞こえてきますが、実は子供の心理や行動については研究が進んでおり、「その行動からかなりの部分が理解出来る」のです。専門家に相談したから責任は果たした、これで大丈夫、ではなく、親も子供の行動からその心理を読み取れるように努力する必要がありそうです。
賛否両論が巻き起こる「絶歌」ですが、犯罪が起こった理由を人々が理解するためには必要な本になったのではないでしょうか?
ただ、印税や利益の使い方は考えて欲しいところかもしれません。
「少年A」この子を生んで……―父と母悔恨の手記 (文春文庫)
子どもの臨床心理アセスメント―子ども・家族・学校支援のために